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第八章 王都での日々
第百九話 マスタングも吹っ切れた
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従者の案内で広い部屋へ入ったイズミだったが、そこにカレンとヘンリエッタとその従者が居たので、とりあえず挨拶をしておいた。
「おはよう皆んな。俺は良く寝てたようだな」
「そうですよ、私達が起こしても頬を叩いても起きなかったんですよ」
仕方なくブロズムナード邸の客室へと運んで、そこで寝させたと言う話を聞いた。
「それは迷惑をかけた。あのまま地面でも寝れたと思うぞ、俺の事だから」
そんな冗談を言っていたら、背後から男の声がした。
「流石にそれでは、我々側に問題がある」
イズミが振り向くと、そこには体格の良い男が立っていた。
その隣にはエレナが居たので、エレナの両親と予想を立てた。
「失礼、私はアレクセイ・ブロズムナードと申します。エレナの父です」
「ご丁寧にありがとうございます。私はイズミと申します、只の旅人でございます」
イズミは慣れない営業スマイルを作りつつ、一通りの挨拶を済ませた。
「王城が主催する社交界から戻った所でして、これと言ったおもてなしが出来ず申し訳ない」
「旅人にそんなお気遣いは無用です。エレナ様の足の治療も、私の旅路の気まぐれですから」
アレクセイは質の良い椅子に座ると、語気を強めて言った。
「そう言う訳にもいかん!誰に頼んでも動かす事すら叶わなかったエレナの足だ。それを自由に動かせるようにしてくれた方に、礼の1つも出来ないなどと言ったら、それこそ愚か者だ」
彫りの深い顔が、更に凄味を増している気がしたので、イズミは表情を強張らせた。
「何か礼をしたいと思案したが、初対面の旅の方に何を渡すのが良いのか分からなくなってな…」
普通なら金銭だろうが、その他にもと考えたのだろうか?
イズミはアレクセイの従者が椅子を用意してくれたので、感謝の言葉を伝えてから素直に座った。
「ならば…金貨7枚と、王都の美味しい料理を提供してくれるお店を紹介して頂ければと存じます」
アレクセイや周囲の人間の動きが止まった。
なにか信じられないものでも見たかのような視線が、イズミの全身に突き刺さっているのを感じた。
7日かけたので1日で金貨1枚の計算は多過ぎただろうか?
この場で普段と変わらないのはヘンリエッタくらいで、カレンですら驚いた顔をしていた。
「私は商人では無いので、高価な物は不要ですし、旅の荷物は軽い方が良いです。金は魔物やら賊を討伐すれば稼げますので、特に困っている訳でもありません。なので…」
イズミは少し間をおいてから、はっきりと言った。
言い切った。
「旅の醍醐味である、美味しい料理や特産品などの情報の方が、金貨や金銀財宝よりも有益なのです」
静まり返った室内だったが、やがて笑い声が響き渡った。
「ランドールやヘンリエッタ様からも聞いてはいたが、ここまで面白い男だったとは!」
アレクセイは目に涙を浮かべて笑っていた。
貴族の価値観は分からないと、イズミは苦笑するしかなかった。
話を終えたイズミは、マスタングへと戻って魔力残量を確かめた。
「マスタングも燃料が無いな…補給しておくか」
イズミは眠った分、魔力が回復していたので一先ず50%まで補給をした。
残りは明日補給すると伝えると、マスタングがエレナで試したい事があると伝えて来た。
「マスター。エレナ様の魔法適性を追加出来るのか、実験をしたいです」
「どう説明すれば良いんだ?普通に生きていたら出来ない芸当だろ」
イズミは頭を抱えた。
「おはよう皆んな。俺は良く寝てたようだな」
「そうですよ、私達が起こしても頬を叩いても起きなかったんですよ」
仕方なくブロズムナード邸の客室へと運んで、そこで寝させたと言う話を聞いた。
「それは迷惑をかけた。あのまま地面でも寝れたと思うぞ、俺の事だから」
そんな冗談を言っていたら、背後から男の声がした。
「流石にそれでは、我々側に問題がある」
イズミが振り向くと、そこには体格の良い男が立っていた。
その隣にはエレナが居たので、エレナの両親と予想を立てた。
「失礼、私はアレクセイ・ブロズムナードと申します。エレナの父です」
「ご丁寧にありがとうございます。私はイズミと申します、只の旅人でございます」
イズミは慣れない営業スマイルを作りつつ、一通りの挨拶を済ませた。
「王城が主催する社交界から戻った所でして、これと言ったおもてなしが出来ず申し訳ない」
「旅人にそんなお気遣いは無用です。エレナ様の足の治療も、私の旅路の気まぐれですから」
アレクセイは質の良い椅子に座ると、語気を強めて言った。
「そう言う訳にもいかん!誰に頼んでも動かす事すら叶わなかったエレナの足だ。それを自由に動かせるようにしてくれた方に、礼の1つも出来ないなどと言ったら、それこそ愚か者だ」
彫りの深い顔が、更に凄味を増している気がしたので、イズミは表情を強張らせた。
「何か礼をしたいと思案したが、初対面の旅の方に何を渡すのが良いのか分からなくなってな…」
普通なら金銭だろうが、その他にもと考えたのだろうか?
イズミはアレクセイの従者が椅子を用意してくれたので、感謝の言葉を伝えてから素直に座った。
「ならば…金貨7枚と、王都の美味しい料理を提供してくれるお店を紹介して頂ければと存じます」
アレクセイや周囲の人間の動きが止まった。
なにか信じられないものでも見たかのような視線が、イズミの全身に突き刺さっているのを感じた。
7日かけたので1日で金貨1枚の計算は多過ぎただろうか?
この場で普段と変わらないのはヘンリエッタくらいで、カレンですら驚いた顔をしていた。
「私は商人では無いので、高価な物は不要ですし、旅の荷物は軽い方が良いです。金は魔物やら賊を討伐すれば稼げますので、特に困っている訳でもありません。なので…」
イズミは少し間をおいてから、はっきりと言った。
言い切った。
「旅の醍醐味である、美味しい料理や特産品などの情報の方が、金貨や金銀財宝よりも有益なのです」
静まり返った室内だったが、やがて笑い声が響き渡った。
「ランドールやヘンリエッタ様からも聞いてはいたが、ここまで面白い男だったとは!」
アレクセイは目に涙を浮かべて笑っていた。
貴族の価値観は分からないと、イズミは苦笑するしかなかった。
話を終えたイズミは、マスタングへと戻って魔力残量を確かめた。
「マスタングも燃料が無いな…補給しておくか」
イズミは眠った分、魔力が回復していたので一先ず50%まで補給をした。
残りは明日補給すると伝えると、マスタングがエレナで試したい事があると伝えて来た。
「マスター。エレナ様の魔法適性を追加出来るのか、実験をしたいです」
「どう説明すれば良いんだ?普通に生きていたら出来ない芸当だろ」
イズミは頭を抱えた。
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