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第八章 王都での日々
第百七話 治療完了
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ボロボロなイズミではあったが、想定外の出来事で思った以上に王都に長居してしまったので、そろそろカレンの故郷へと戻ろうかと相談をしていた。
「明日には帰るか?もう少し王都を散策するか?旅なんだから、その辺りは自由だしな」
「イズミさんもかなり疲れているようですし、明日は王都の美味しい料理を食べて、明後日帰るのはどうでしょうか?」
カレンの提案に乗る事にした。
「そうしよう。後でランドールさんにも話をしないとな」
カレンはヘンリエッタに懐かれた結果、この1週間で何種類か生活に使える魔法を教えたそうだ。
適性に関係無く使える、簡単で便利な魔法らしいが、ヘンリエッタは直ぐに使えるようになったと言う。
イズミは疲労困憊の身体を休めるべく、水浴びが出来ると説明をされた小屋へと移動した。
「エレナ様、足の調子は如何ですか?」
「今でも信じられません。まだ夢の中にいるみたいです」
両親が大金を支払っても著名な魔術師に頼み込んでも、何一つ改善しなかった両足が動く。
地面の感触を確かめるように、裸足でペタペタと地面に触れては離すを繰り返していた。
「イズミ様とマスタング様は、体調はよろしいのですか?」
「マスタングは…大丈夫そうだな。私は駄目です」
丸1週間寝込んでいた様なものである。
身体が鈍っているのを実感出来るほどだ。
とりあえず無精髭を剃る。
サッパリしたい気持ちが強かったので、カミソリを取り出して力の入らない手でゆっくりと剃っていった。
温かい湯船に浸かりたいが、王都にあると言う大衆浴場までは距離があるので、今日は身体を拭くだけで済ませる。
明日は是非とも風呂に入りたいものだ。
そんな事を考えつつ新しい服に着替えていると、外からメイドが駆け足でやってきた。
「エレナ様!ご両親が戻られました!」
エレナはリハビリを中断すると、車椅子に乗って両親の元へと向かった。
その後ろ姿を見たイズミは、静かにマスタングへと移動した。
カレンは今日もヘンリエッタに呼ばれたようで、既にマスタングの所にはいなかった。
イズミは運転席側のドアを開けると、シートに身体を預けて目を閉じた。
「マスタング…どうしようもない位、身体が怠いのだが」
「マスター。明日には魔力も回復しますので、直ぐに元気になりますよ」
マスタングにラムネを実体化して貰うと、1本取り出してグイッと飲んだ。
炭酸と甘さが身体に染み渡るようで、ようやく達成感のようなものが湧き上がって来た。
「…なんとかなったな」
「『出来る』と『出来た』では意味が大きく変わります。今回の事例は我々にとって実りのあるものだと思います」
そんな話をまったりとしていると、小屋の外から叫び声が聞こえたかと思ったら、どんどん騒がしくなっていた。
「少しは休みたいが、どうやら無理そうだな」
騒がしさの元凶と思われる声の主が、マスタングを停めている小屋に近付いてくるのが分かった。
面倒くさい事にならなければ良いのだがと考えるイズミだったが、この異世界を楽しむならば多少の面倒も一興かもしれないとも思い始めていた。
「娘のエレナに何をした!?」
そんな声が小屋の扉が開くと同時に聞こえてきたので、イズミはやはり面倒くさい事は避けた方が良いと、即座に考えを切り替えた。
「明日には帰るか?もう少し王都を散策するか?旅なんだから、その辺りは自由だしな」
「イズミさんもかなり疲れているようですし、明日は王都の美味しい料理を食べて、明後日帰るのはどうでしょうか?」
カレンの提案に乗る事にした。
「そうしよう。後でランドールさんにも話をしないとな」
カレンはヘンリエッタに懐かれた結果、この1週間で何種類か生活に使える魔法を教えたそうだ。
適性に関係無く使える、簡単で便利な魔法らしいが、ヘンリエッタは直ぐに使えるようになったと言う。
イズミは疲労困憊の身体を休めるべく、水浴びが出来ると説明をされた小屋へと移動した。
「エレナ様、足の調子は如何ですか?」
「今でも信じられません。まだ夢の中にいるみたいです」
両親が大金を支払っても著名な魔術師に頼み込んでも、何一つ改善しなかった両足が動く。
地面の感触を確かめるように、裸足でペタペタと地面に触れては離すを繰り返していた。
「イズミ様とマスタング様は、体調はよろしいのですか?」
「マスタングは…大丈夫そうだな。私は駄目です」
丸1週間寝込んでいた様なものである。
身体が鈍っているのを実感出来るほどだ。
とりあえず無精髭を剃る。
サッパリしたい気持ちが強かったので、カミソリを取り出して力の入らない手でゆっくりと剃っていった。
温かい湯船に浸かりたいが、王都にあると言う大衆浴場までは距離があるので、今日は身体を拭くだけで済ませる。
明日は是非とも風呂に入りたいものだ。
そんな事を考えつつ新しい服に着替えていると、外からメイドが駆け足でやってきた。
「エレナ様!ご両親が戻られました!」
エレナはリハビリを中断すると、車椅子に乗って両親の元へと向かった。
その後ろ姿を見たイズミは、静かにマスタングへと移動した。
カレンは今日もヘンリエッタに呼ばれたようで、既にマスタングの所にはいなかった。
イズミは運転席側のドアを開けると、シートに身体を預けて目を閉じた。
「マスタング…どうしようもない位、身体が怠いのだが」
「マスター。明日には魔力も回復しますので、直ぐに元気になりますよ」
マスタングにラムネを実体化して貰うと、1本取り出してグイッと飲んだ。
炭酸と甘さが身体に染み渡るようで、ようやく達成感のようなものが湧き上がって来た。
「…なんとかなったな」
「『出来る』と『出来た』では意味が大きく変わります。今回の事例は我々にとって実りのあるものだと思います」
そんな話をまったりとしていると、小屋の外から叫び声が聞こえたかと思ったら、どんどん騒がしくなっていた。
「少しは休みたいが、どうやら無理そうだな」
騒がしさの元凶と思われる声の主が、マスタングを停めている小屋に近付いてくるのが分かった。
面倒くさい事にならなければ良いのだがと考えるイズミだったが、この異世界を楽しむならば多少の面倒も一興かもしれないとも思い始めていた。
「娘のエレナに何をした!?」
そんな声が小屋の扉が開くと同時に聞こえてきたので、イズミはやはり面倒くさい事は避けた方が良いと、即座に考えを切り替えた。
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