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第八章 王都での日々
第百二話 突然の招待
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良い買い物をしたイズミは、その後もダラダラと冒険者通りを散策していたが、貴族向けの通りに差し掛かったので一度立ち止まった。
引き返して先にナイフを買ってしまおうか、それとも貴族向けの通りを急ぎ足で通り抜けるか…
貴族様が着るような服の店を、外側からでも見てみたい気持ちがあるが、身分不相応だと諦めて引き返そうとした。
その時である。
「…」
宝飾店のように見える店から出てきた、車椅子みたいな乗り物に乗った女性と目があってしまった。
反射的に会釈をしたイズミだったが、女性は微笑みで返してくれた。
対応が正解だったかはさておき、冒険者通りに戻ろうとした時にメガネに文章が浮かび上がってきて変な声が出てしまった。
「マスター。スキャンを完了しました」
マスタングがメガネ越しに何かをスキャンしたようだ。
このメガネは自動スキャン機能でも付いているのだろうか?
ナイフや魔道具を見た時には何の反応も無かったのに。
音声認識なのか意識認識なのか、後でマスタングに聞くとしよう。
「マスタング、何をスキャンしたんだ?」
「病状です」
病状って…いや誰のだ?
そんな疑問を答えさせる前に、武器屋に到着してしまった。
店に入ると店主の男がカウンターに立っていた。
「おういらっしゃい、購入かい?」
「それで頼む」
イズミはゆっくりとナイフを取り出してから、店主へと渡した。
「はいよ…こちらが商品のナイフだ」
青みがかっているナイフを受け取ったイズミは、愛用のホルスターへ仕舞い込んだ。
何度か抜き差しを試してから、微調整を頼んだ。
「持ち手の革が少し厚いな、もう1巻き分くらい薄く出来るか?」
「直ぐに出来るよ」
ナイフを渡すと、店主は店の裏に行ってしまった。
直ぐに戻って来た店主がナイフの説明をしてくれていると、途中で職人がナイフを持って来てくれた。
受け取って再度確認をする。
これで問題無く扱えるだろう。
イズミは銀貨を渡すと、店主が数えた。
「丁度だな、まいどあり!…あんた、メイドでも雇ってるのか?」
「いや、俺は旅の無宿人だが?」
そう言いつつ振り返ると、店の外にメイド服を来た何者かが立っていた。
「まさか…貴族様だったとか!?」
「だから俺は貴族じゃない」
そんなやり取りをしつつも、用事は済んだので店から出なければならない。
イズミは平常心を装いながら、メイドの要件が自分では無い事を祈りつつ店を出た。
武器屋の扉が閉まるとほぼ同時に、周囲を見渡すイズミだったが、心なしか冒険者通りなのに冒険者が先程までより少なく感じた。
イズミはメイドが居る方向とは逆方向に移動しようとすると、それとほぼ同時にメイドに動きがあった。
「旅のお方、お待ちいただけないでしょうか」
イズミは最後まで別人を探していると信じて、再度周囲を見るが近くには冒険者が1人も居ない。
更には、距離を取って冒険者達がイズミとメイドを見ている状態だった。
「…私、ですか」
イズミは諦めてメイドへと向き直った。
「御主人様が、貴方と話をしてみたいと申しておりまして…是非一緒に来て頂きたく存じます」
「口調やテーブルマナーに、期待をしないでくれるなら」
イズミは気が重いながらも、メイドの後を付いて行った。
引き返して先にナイフを買ってしまおうか、それとも貴族向けの通りを急ぎ足で通り抜けるか…
貴族様が着るような服の店を、外側からでも見てみたい気持ちがあるが、身分不相応だと諦めて引き返そうとした。
その時である。
「…」
宝飾店のように見える店から出てきた、車椅子みたいな乗り物に乗った女性と目があってしまった。
反射的に会釈をしたイズミだったが、女性は微笑みで返してくれた。
対応が正解だったかはさておき、冒険者通りに戻ろうとした時にメガネに文章が浮かび上がってきて変な声が出てしまった。
「マスター。スキャンを完了しました」
マスタングがメガネ越しに何かをスキャンしたようだ。
このメガネは自動スキャン機能でも付いているのだろうか?
ナイフや魔道具を見た時には何の反応も無かったのに。
音声認識なのか意識認識なのか、後でマスタングに聞くとしよう。
「マスタング、何をスキャンしたんだ?」
「病状です」
病状って…いや誰のだ?
そんな疑問を答えさせる前に、武器屋に到着してしまった。
店に入ると店主の男がカウンターに立っていた。
「おういらっしゃい、購入かい?」
「それで頼む」
イズミはゆっくりとナイフを取り出してから、店主へと渡した。
「はいよ…こちらが商品のナイフだ」
青みがかっているナイフを受け取ったイズミは、愛用のホルスターへ仕舞い込んだ。
何度か抜き差しを試してから、微調整を頼んだ。
「持ち手の革が少し厚いな、もう1巻き分くらい薄く出来るか?」
「直ぐに出来るよ」
ナイフを渡すと、店主は店の裏に行ってしまった。
直ぐに戻って来た店主がナイフの説明をしてくれていると、途中で職人がナイフを持って来てくれた。
受け取って再度確認をする。
これで問題無く扱えるだろう。
イズミは銀貨を渡すと、店主が数えた。
「丁度だな、まいどあり!…あんた、メイドでも雇ってるのか?」
「いや、俺は旅の無宿人だが?」
そう言いつつ振り返ると、店の外にメイド服を来た何者かが立っていた。
「まさか…貴族様だったとか!?」
「だから俺は貴族じゃない」
そんなやり取りをしつつも、用事は済んだので店から出なければならない。
イズミは平常心を装いながら、メイドの要件が自分では無い事を祈りつつ店を出た。
武器屋の扉が閉まるとほぼ同時に、周囲を見渡すイズミだったが、心なしか冒険者通りなのに冒険者が先程までより少なく感じた。
イズミはメイドが居る方向とは逆方向に移動しようとすると、それとほぼ同時にメイドに動きがあった。
「旅のお方、お待ちいただけないでしょうか」
イズミは最後まで別人を探していると信じて、再度周囲を見るが近くには冒険者が1人も居ない。
更には、距離を取って冒険者達がイズミとメイドを見ている状態だった。
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「御主人様が、貴方と話をしてみたいと申しておりまして…是非一緒に来て頂きたく存じます」
「口調やテーブルマナーに、期待をしないでくれるなら」
イズミは気が重いながらも、メイドの後を付いて行った。
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