異世界無宿

ゆきねる

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第八章 王都での日々

第百話 王都での朝食

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王都の店を朝から歩き回るだけでも、街並みから売物まで見ていてかなり面白い。

中世ヨーロッパ系の建物かと思ったが、王都の正門付近の通りは東欧の建築物に近い。

肉に野菜に酒に果物、衣類や家具や絨毯、食器に武器に魔法具を取り扱う店まであるから、見ていて全く飽きが来ない。

「王都は1日にして生らず…って感じだな」

そう呟くイズミは、マスタングから受け取った伊達メガネを着けて王都を歩いていた。


遡ること約30分前…

「マスター。魔力補給をお願いします」

マスタングの頼みを聞いて残量を確認すると、もう1割も無かった。
ほとんど燃料切れである。
昨日マスタングから降りた時には、まだ余裕があったような気がしたのだが、見間違いだったのかもしれない。

そこで魔力を満タンにしたのだが、その結果かなり腹が減ってしまったのだ。
マスタングに待機を頼むと、便利な道具としてマスタングから魔力探知や索敵結果等を表示出来る伊達メガネを渡されたのだ。

陽射しも強いから、目の保護と言う事にしておけば問題はないと思っている。


そんな訳ではイズミは1人まったりと散策をしていた。
カレンは…ヘンリエッタに気に入られたのか、今頃屋敷にてエルフ族がよく使う魔法についてあれこれと質問攻めにあっている頃だろう。

「先ずは朝食、次に武器屋と道具屋、その次は…」

イズミはなるべく屋敷に滞在する時間を少なくする目的も兼ねて、王都をぶらついていた。

「…あった」

大通りに数ある食事処から、屋敷で聞いた目印の旗を掲げている店までを見つけた。

「白の背景に、鳥の羽と月が描かれた旗が目印のお店なのですが、そこの料理は美味しいです」

月の羽亭(つきのはてい)と言う店は王都が築かれる前から店を開いているという、歴史のある店でありながら良心的な価格と美味しいさで人気らしい。

「いらっしゃいませ!お一人様でしょうか?」

ハツラツとした声で店員が聞いて来たので、1人だと答えると2階のカウンター席に案内された。

メニューを見ると朝食セットでも数種類あるので、目に入った料理を頼む事にした。

「黒パンとベーコンと卵の朝食セット、それと水をお願いします」

「かしこまりました!」

冒険者の保存食に近いメニューだが、モーニングとして考えると有りだと思ったのだ。

少しして、木製のプレートに載せられた朝食セットが届けられた。
小皿だが野菜も付いてきたのが嬉しい誤算だった。

これで銅貨5枚ならば、お得なのだろう。

黒パンの上に焼きたてのベーコンと目玉焼きが載っている。
一口噛じると、黄身が破けて中身が溢れ出す。
これは新鮮な卵ではないだろうか?

野菜も食べるが、こちらもシャキシャキと音を立てる。
しんなりはしていない。
この瑞々しさが良いのだ。

「…黒胡椒があればな」

王都では高級品なのだろうか?
後で調べてみる事に決めると、サクッと食べきってしまった。
大過ぎず、少なすぎでもない丁度良い朝食セットだった。

「ごちそうさまでした」

会計を済ませて店を後にする。
ここからは楽しみでもあった武器屋を探すべく、大通りへと向かって行った。
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