異世界無宿

ゆきねる

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第八章 王都での日々

第九十九話 一件落着らしい

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水を汲み終わったイズミは、急ぎ足で割り当てられた部屋に戻ると、手始めに部屋内の確認をした。

自分の荷物や家具の類いが、変に移動されていないかと調べる為だ。

一通り確認したら、マグナムを取り出して弾込めをしておく。
やはり残弾数が1発と言うのは心許無いのだ。

弾込めと荷物をまとめるのを済ませてから、カレンへ魔法通信を繋げた。

「カレン、今は大丈夫か?」

「はい。大丈夫ですよ」

カレンも熟睡出来たらしく、既に朝食も摂り終えたそうだ。
そこでイズミは朝食を摂っていない事を思い出し、王都の食事処で食べてみようと思案した。


その後、ランドールの従者が部屋にやって来て、屋敷へと案内された。
勿論、ナイフは回収された。

「イズミ殿、本当にありがとう」

ランドールがイズミに感謝の言葉を述べると同時に、側にいた従者達と一緒に頭を下げた。

「いえいえ、お気になさらず」

イズミは従者から金貨10枚を受け取ると、更に隣の従者が袋を渡して来た。

「私は金貨10枚と言った記憶があるのですが」

「どうか受け取ってくれないだろうか。これはヘンリエッタへ贈ったネックレスへの謝礼と思ってくれれば」

火急の要とはヘンリエッタの母親が病で倒れた事だと、その場で聞かされた。
そして、ランドールを呼び戻しつつ腕の良い薬師や魔術師に処置を頼んだが、一向に回復せず途方に暮れていた所での到着だったみたいである。

「ヘンリエッタが母親と2人きりにして欲しいと言うから、そうさせたのだ」

実母が病で死んでしまうかもしれない状態だと説明すると、ヘンリエッタは2人きりにして欲しいと頼んで来たので、ランドールは苦渋の決断で2人きりにさせたそうだ。

翌朝、日が昇り始めた辺りでヘンリエッタが部屋から出て来てこう言ったそうだ。

「母様は3日くらい身体を休めれば元気になると思うの!」

そうヘンリエッタがにこやかに話すので、ランドール達が部屋に入ると、前日までの熱に魘され青白くなった顔の時とは打って変わって、非常に落ち着いた様子になっていたと言う。

イズミはマスタングがヘンリエッタに言った言葉が関係している、そう考えながらも表情には出さずに相槌を打った。

「それと、ヘンリエッタが着けていたネックレスを鑑定させて貰ったよ…」

病祓いの付与を知ってしまったのか。
自分がどの領域まで祓ってくれるのか分からない代物なので、敢えて言わなかったのだが。

「そうですか…取扱注意な代物ですが、ヘンリエッタ様なら大丈夫でしょう」

「知っていたのか?」

ランドールの質問に答える。

「何か付与されているらしいって事だけです。私の相棒であるマスタングがヘンリエッタ様に贈ったのですから、私はそれ以上何も言えませんね」

イズミは冗談交じりにこう付け加えた。

「それに、あのネックレスは私に似合わないでしょう?小振り過ぎて」


イズミが屋敷から出ようとする前に、ランドールに美味しい食事処は無いか聞いてみた。
初めての王都なので、色々と食べてみたいのである。

「それならば、数日は此処に泊まっては行くのはどうだろうか?」

王都の宿はそれなりの値段がするし、お勧めの店も多いので是非と言われてしまった。

カレンにも相談すると、カレンも王都の料理が気になるのか、すぐに頷いてくれた。

引き留められているのは分かるが、食への興味を捨てる訳にはいかない。
旅の醍醐味は食にあると言っても過言ではないのだ。

「イズミだ!マスタング様はおりますか?」

少し離れた所からヘンリエッタの声がした。
どうやらマスタングに話をしたいらしい。
近付いて来たヘンリエッタの首元にはネックレスは無かった。


イズミがランドールを見ると、問題無いとの事なのでマスタングへと案内した。


「マスタング様!昨日はありがとうございました!」

ヘンリエッタがマスタングのボンネットを撫でながらお礼の言葉を述べた。

「ヘンリエッタ様の頼みですから、当然の事をしたまでです」

「…おいマスタング、何時からそんなに仲良くなったんだ?」

イズミはダンジョン前での生活の時からの疑問を口にした。

「マスター。それにつきましては、後で説明させて頂きたく存じます」

「分かった。よろしく頼む」

マスタングが後で説明すると言うならば、それに従おうとすんなり決めたイズミであった。
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