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第七章 貴族と冒険者ギルド
第九十五話 運び屋開業?
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「ランドール様、息子様より魔法通信が入っております」
ランドールが従者の報告を受けて馬車へと戻る。
ヘンリエッタがきょとんとした顔をして馬車を見ていたが、直ぐにランドールが戻って来た。
「ヘンリエッタ。今直ぐに王都へ戻らねばならない」
「どうして?」
ランドールは理由を口にしないが、その表情から深刻な事だと思われる。
イズミは小声でマスタングに尋ねた。
「…マスタング。ここから王都までの距離は?」
「直線距離でおよそ300kmです」
馬車の1日での移動距離は分からないが、何日間の移動になる。
「緊急か?」
「うむ。詳しくは言えぬが火急の要件だ」
馬車へ荷物を積み始めるランドールの背中越しに、何も考えずに声をかけた。
「軽い荷物と…2人までなら、馬車の半分以下の時間で王都へお連れ出来るが」
ランドールと従者がイズミへと顔を向ける。
懐疑的な表情ではあったが、ランドールは意を決するかのように声を出した。
「イズミよ。儂とヘンリエッタを王都まで急ぎ運んではくれないか?」
イズミは映画みたいな展開だなと思った瞬間、脳内に浮かんで来たセリフが口から出ていた。
「報酬は…初回だから金貨10枚、私からの値上げ要求はしない、支払いは王都に到着後に一段落してから。それで良ければ」
「それで構わん!」
ランドールは必要な荷物を馬車から取り出して来たので、イズミはマスタングのトランクを開けてそれを詰め込んだ。
「カレンはどうする?王都への弾丸ツアーなんだが」
「ツアー?また村まで戻って来て頂けるのでしたら、御一緒したいです」
「分かった、一緒に来てくれ」
イズミはランドールとヘンリエッタには後部座席へ乗ってもらい、出発の準備を整えた。
左手に巻いていた腕時計を外し、マスタングに頼んで愛用の腕時計を取り出す。
角形の自動巻クロノグラフ。
イズミの憧れであり、宝物でもある腕時計だ。
マスタングのモニターで時刻調整を済ませると、定位置である右手に巻いた。
やはりマスタングで走るならば、この腕時計の方がしっくり来る。
イズミが運転席へ乗り込むと、助手席に座るカレンの膝の上にヘンリエッタがいた。
「マスタング様、これから走るの?」
「ヘンリエッタ様。これから走りますので、カレン様の言うシートベルトを着用してください」
元いた世界だったらその状態で走行はしないが、ここは異世界なので大目に見るとしよう。
シートベルトをランドールにも装着してもらい、マスタングのエンジンをかけた。
久し振りに聴くV8エンジンの音や振動が、イズミの身体を目覚めさせるかのように感じる。
「では皆様、出発しますので…覚悟して下さい。色々と」
イズミはアクセルを軽く吹かすと、その轟音で騎士隊や冒険者達の動きを止めてしまった。
この世界では通常聞くことのない轟音である。
「マスタング、王都までのナビを頼む」
「了解しました」
寺院跡地を徐行運転で抜けて平原に出た所で、イズミはマスタングのナビを見て方向転換をした。
腕時計を見ると9時を回った所である。
日も昇ってから、そこまで時間も経過はしていない。
「さて。今日で何処まで行ける事やら」
イズミは腕時計を見て口角が上がるのを抑えて、すぐに運転に集中する為に深呼吸をした。
ランドールが従者の報告を受けて馬車へと戻る。
ヘンリエッタがきょとんとした顔をして馬車を見ていたが、直ぐにランドールが戻って来た。
「ヘンリエッタ。今直ぐに王都へ戻らねばならない」
「どうして?」
ランドールは理由を口にしないが、その表情から深刻な事だと思われる。
イズミは小声でマスタングに尋ねた。
「…マスタング。ここから王都までの距離は?」
「直線距離でおよそ300kmです」
馬車の1日での移動距離は分からないが、何日間の移動になる。
「緊急か?」
「うむ。詳しくは言えぬが火急の要件だ」
馬車へ荷物を積み始めるランドールの背中越しに、何も考えずに声をかけた。
「軽い荷物と…2人までなら、馬車の半分以下の時間で王都へお連れ出来るが」
ランドールと従者がイズミへと顔を向ける。
懐疑的な表情ではあったが、ランドールは意を決するかのように声を出した。
「イズミよ。儂とヘンリエッタを王都まで急ぎ運んではくれないか?」
イズミは映画みたいな展開だなと思った瞬間、脳内に浮かんで来たセリフが口から出ていた。
「報酬は…初回だから金貨10枚、私からの値上げ要求はしない、支払いは王都に到着後に一段落してから。それで良ければ」
「それで構わん!」
ランドールは必要な荷物を馬車から取り出して来たので、イズミはマスタングのトランクを開けてそれを詰め込んだ。
「カレンはどうする?王都への弾丸ツアーなんだが」
「ツアー?また村まで戻って来て頂けるのでしたら、御一緒したいです」
「分かった、一緒に来てくれ」
イズミはランドールとヘンリエッタには後部座席へ乗ってもらい、出発の準備を整えた。
左手に巻いていた腕時計を外し、マスタングに頼んで愛用の腕時計を取り出す。
角形の自動巻クロノグラフ。
イズミの憧れであり、宝物でもある腕時計だ。
マスタングのモニターで時刻調整を済ませると、定位置である右手に巻いた。
やはりマスタングで走るならば、この腕時計の方がしっくり来る。
イズミが運転席へ乗り込むと、助手席に座るカレンの膝の上にヘンリエッタがいた。
「マスタング様、これから走るの?」
「ヘンリエッタ様。これから走りますので、カレン様の言うシートベルトを着用してください」
元いた世界だったらその状態で走行はしないが、ここは異世界なので大目に見るとしよう。
シートベルトをランドールにも装着してもらい、マスタングのエンジンをかけた。
久し振りに聴くV8エンジンの音や振動が、イズミの身体を目覚めさせるかのように感じる。
「では皆様、出発しますので…覚悟して下さい。色々と」
イズミはアクセルを軽く吹かすと、その轟音で騎士隊や冒険者達の動きを止めてしまった。
この世界では通常聞くことのない轟音である。
「マスタング、王都までのナビを頼む」
「了解しました」
寺院跡地を徐行運転で抜けて平原に出た所で、イズミはマスタングのナビを見て方向転換をした。
腕時計を見ると9時を回った所である。
日も昇ってから、そこまで時間も経過はしていない。
「さて。今日で何処まで行ける事やら」
イズミは腕時計を見て口角が上がるのを抑えて、すぐに運転に集中する為に深呼吸をした。
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