異世界無宿

ゆきねる

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第七章 貴族と冒険者ギルド

第九十四話 少女の好奇心

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冒険者達がダンジョン開拓を開始して数日。

イズミはカレンとの旅路が終わると決まってから、ふと海が見たくなったのでマスタングに相談していた。

「短期間でも塩害対策をした方が良いか?」

「短期間であれば特に問題ないかと」

出来れば洗車はして欲しいとマスタングが言うので、海に行った後は洗車をすると約束をした。

これで次の目的地は海辺の町と決まった。
それ以外はほぼ未定だ。

「イズミさん、これから何処に行くとか決めたんですか?」

ガルシア達と話していたカレンが、イズミの元へ来て尋ねた。
カレンの声には寂しさは感じない。
戻って来る拠点を作ると言う事で、今生の別れでは無いという安心感があるからだろうか。

「とりあえず、1回海を見てこようと思う。潮風を感じたいと思ってな」

「海…ですか?」

カレンやガルシア達は海を見たことは無いそうで、戻って来たら土産話とか土産物を期待してると言われてしまった。

カレンは調子の良い事を言うガルシアを注意はしたが、海には興味があると話した。

旅の準備でも始めようと思いつつ、未だに美味く作れないコーヒーに挑戦していた所、遠くからヘンリエッタが声を掛けてきた。

「イズミ!それは何ですか?」

「これはコーヒーと言いまして、とても苦い飲み物です」

蒼い目をキラキラと輝かせ、コーヒーの入った鍋をしゃがんで見つめていた。

あまりにも苦く出来ているだろうコーヒーを飲ませるのも悪いと思い、ヘンリエッタの後を追いかけて来た先代侯爵のランドールを助け舟を待った。

「こらこらヘンリエッタ!そんなに火に近付くと火傷してしまうぞ」

「お祖父様、コーヒーって苦いの?」

興味津々のヘンリエッタの目が、ランドールに突き刺さる。

「イズミの作るコーヒーは苦いからの、ヘンリエッタは飲まない方が良いぞ」

「飲んでみたい!」

好奇心は猫を殺すと言うか何と言うべきか、ヘンリエッタはどうしてもコーヒーを飲んでみたいと言う。

イズミはコーヒーの粉が入らないように、丁寧に木製のコップへ一口分くらい注いで冷めるのを待った。

「ヘンリエッタ様、本当に苦いですよ?」

ゆっくりとコップを口元へ近づけ、一口飲んだヘンリエッタの表情が一気に変わった。

「苦い!!」

思った以上のリアクションに、イズミもランドールと思わず笑ってしまった。

「だから言ったろうに」

ランドールがヘンリエッタの持っていたコップを持つと、従者が持っていた水筒を渡すように指示を出した。

イズミはマスタングに移動すると、ヘンリエッタでも飲めそうな飲み物の実体化を頼んだ。

マスタングのグローブボックスが開き、中にはガラス瓶が2本入っていた。
ワインのようにコルクで蓋がされている。

「オレンジジュースです。果汁100%です」

子供が好きなジュースなのかは分からないが、マスタングが実体化させたのだから大丈夫だろう。

「ヘンリエッタ様、よろしければコチラをお飲みになりますか?」

イズミはオレンジジュースをまずランドールの従者に渡す。
その後で飲み物の説明をした。

「柑橘系の果物の果汁のみで作った飲み物となります」

従者が何か呟いてから、ランドールへ報告をする。
イズミからは何と言っているかは分からなかったが、問題無いと思いたい。

1本空けて従者が毒見をする。
問題は無いと判断したのか、従者が用意したコップに注いでヘンリエッタとランドールへ渡した。

オレンジジュースを飲んだヘンリエッタは、笑顔を輝かせてランドールを呼んだ。

「美味しい!ランドール、これ美味しい!」

ヘンリエッタに促されるようにランドールも飲んだが、その後マジマジとオレンジジュースを見つめていた。

イズミはコーヒーを飲んでみる。
以前よりはマシになって来ているが、それでも苦味が強い。
今度は焙煎を調整して試そうと考えつつ、コーヒーを飲み干した。
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