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第七章 貴族と冒険者ギルド
第九十話 ヘンリエッタ
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老騎士ヴァーランデルは元気ハツラツと言った感じで、イズミの肩を叩いて来た。
「ゴブリンの巣を掃除した次はダンジョン発見とはな、お前さんは見ていて飽きないな!」
「いえいえ、ダンジョンは相棒のカレンが見つけたものでして」
そう説明しても老騎士は気にも止めない。
「どっちでも大して変わらんだろう。行動を共にしているのならば、どちらも第一発見者みたいなものだ」
ご機嫌なヴァーランデルが副官らしき男からの報告を受け、新たな指示を出すと腰に下げた剣を外した。
「ダンジョン発見は久しぶりでな。若い者に騎士隊として、どうダンジョンを警備するのかを教える為に同行したのだ」
座学と実践は違う。
それを身を以て学ばせられる良い機会として、今回教官の1人として赴いたと言う。
「ヴァーランデルだ!」
ランドールの隣にいた少女が、ヴァーランデルを見つけるとパタパタと近付いて来た。
まだ背は低くい少女がヴァーランデルの足に抱きついた。
金髪で色白…イズミには青白く見える…な肌、白を基調とした服を身に纏う細身な少女だった。
「おやおやヘンリエッタ様。そんなに走ったら転んでしまいますぞ」
ヴァーランデルの声が子供をあやすような声質になっていた。
「大丈夫!今日は少し調子が良いの」
「そうですか、それは良かった」
その様子を見たイズミが、マスタングに確認を頼んだ。
「マスタング、あの子の体調を調べられるか?」
「少々お待ち下さい」
マスタングが調べている間に、イズミは苦いコーヒーをコップに注いだ。
少し間を空けて粉を沈殿させ、上澄みを口に含んだ。
「…冷えても苦いな」
イズミが少しづつコーヒーを飲んでいると、マスタングから回答が来た。
「軽度の喘息と貧血です。毒等を盛られた形跡は1度もありませんでした」
「…貴族の食事ってのは、栄養バランスとか良さそうなイメージがあるのだが」
当人の好き嫌いやら、色々あるだろうし深く考えるのは止めておこう。
それに毒関係まで調べられるとは、流石はマスタングだ。
「あちらのお方は?」
ヘンリエッタの問いに、少し困りつつヴァーランデルが答える。
「彼は旅を生業にしている方でして、私も以前お会いした事があります」
イズミがマスタングに寄り掛かり、この濃すぎるコーヒーをどう飲み切ろうか思案していると、マスタングから提案があった。
「マスター。あのネックレスを渡すのはどうでしょうか」
アーリアからして女神の加護と言わしめた、病祓いの付与がされているルビーのネックレスだ。
小振り故に自分には似合わないと、マスタングの荷物リストに入れている。
「恐らくですが、身に着ければ喘息も貧血も解決します」
「もう何でもありだな、あのネックレス」
生活環境や食事を改善しないと良くならない病気すらも、ネックレス一つで治るならチートが過ぎる。
とは言っても、無宿人の旅人が突然贈り物をするってのは、正直怪しさが勝る気がした。
アーリアなら黙っていてくれるだろうが、そんな代物を持っている事を隠しているのも、何だか怠い。
「イズミよ、少し良いか?」
ヴァーランデルから声をかけられたイズミは、コップを鍋の隣に置いてから返事をした。
「ヘンリエッタがその乗り物に興味を持ってしまってな」
「始めまして。私はヘンリエッタと申します」
ヴァーランデルに促され、ヘンリエッタが丁寧な挨拶をする。
「私はイズミと申します。何卒よろしくお願い致します」
イズミは思わず返事を返した。
「ゴブリンの巣を掃除した次はダンジョン発見とはな、お前さんは見ていて飽きないな!」
「いえいえ、ダンジョンは相棒のカレンが見つけたものでして」
そう説明しても老騎士は気にも止めない。
「どっちでも大して変わらんだろう。行動を共にしているのならば、どちらも第一発見者みたいなものだ」
ご機嫌なヴァーランデルが副官らしき男からの報告を受け、新たな指示を出すと腰に下げた剣を外した。
「ダンジョン発見は久しぶりでな。若い者に騎士隊として、どうダンジョンを警備するのかを教える為に同行したのだ」
座学と実践は違う。
それを身を以て学ばせられる良い機会として、今回教官の1人として赴いたと言う。
「ヴァーランデルだ!」
ランドールの隣にいた少女が、ヴァーランデルを見つけるとパタパタと近付いて来た。
まだ背は低くい少女がヴァーランデルの足に抱きついた。
金髪で色白…イズミには青白く見える…な肌、白を基調とした服を身に纏う細身な少女だった。
「おやおやヘンリエッタ様。そんなに走ったら転んでしまいますぞ」
ヴァーランデルの声が子供をあやすような声質になっていた。
「大丈夫!今日は少し調子が良いの」
「そうですか、それは良かった」
その様子を見たイズミが、マスタングに確認を頼んだ。
「マスタング、あの子の体調を調べられるか?」
「少々お待ち下さい」
マスタングが調べている間に、イズミは苦いコーヒーをコップに注いだ。
少し間を空けて粉を沈殿させ、上澄みを口に含んだ。
「…冷えても苦いな」
イズミが少しづつコーヒーを飲んでいると、マスタングから回答が来た。
「軽度の喘息と貧血です。毒等を盛られた形跡は1度もありませんでした」
「…貴族の食事ってのは、栄養バランスとか良さそうなイメージがあるのだが」
当人の好き嫌いやら、色々あるだろうし深く考えるのは止めておこう。
それに毒関係まで調べられるとは、流石はマスタングだ。
「あちらのお方は?」
ヘンリエッタの問いに、少し困りつつヴァーランデルが答える。
「彼は旅を生業にしている方でして、私も以前お会いした事があります」
イズミがマスタングに寄り掛かり、この濃すぎるコーヒーをどう飲み切ろうか思案していると、マスタングから提案があった。
「マスター。あのネックレスを渡すのはどうでしょうか」
アーリアからして女神の加護と言わしめた、病祓いの付与がされているルビーのネックレスだ。
小振り故に自分には似合わないと、マスタングの荷物リストに入れている。
「恐らくですが、身に着ければ喘息も貧血も解決します」
「もう何でもありだな、あのネックレス」
生活環境や食事を改善しないと良くならない病気すらも、ネックレス一つで治るならチートが過ぎる。
とは言っても、無宿人の旅人が突然贈り物をするってのは、正直怪しさが勝る気がした。
アーリアなら黙っていてくれるだろうが、そんな代物を持っている事を隠しているのも、何だか怠い。
「イズミよ、少し良いか?」
ヴァーランデルから声をかけられたイズミは、コップを鍋の隣に置いてから返事をした。
「ヘンリエッタがその乗り物に興味を持ってしまってな」
「始めまして。私はヘンリエッタと申します」
ヴァーランデルに促され、ヘンリエッタが丁寧な挨拶をする。
「私はイズミと申します。何卒よろしくお願い致します」
イズミは思わず返事を返した。
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