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第七章 貴族と冒険者ギルド
第八十六話 貴族とギルドがやって来た
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トーマス達『暁と盃』が冒険者ギルド本部へ戻ると別れてから数日。
イズミは平穏過ぎて退屈な警備を続けていた。
アーリアを呼んでラムネを渡したり、情報共有をしたりネックレスの鑑定を依頼したりと、冒険者パーティーが近くに居た時にはやりたくない事を済ませる。
「…コレがサイクロプスを倒した時にドロップしたの?」
アーリアがラムネを飲みつつ、ネックレスをジッと見つめる。
「俺が拾った訳では無いが、そうらしい」
「詳しくは戻ってからになるけど、付加が付いてるかも」
イズミは水筒に入った水を飲みつつ、アーリアの方を見た。
「付加ってのがあるのか」
「なんと言うか、加護みたいなものよ。クロスボウの矢に爆裂魔法を付与した…みたいな感じね」
そう言われてすんなりと理解した。
どうやって付加するのかは、検討もつかないが。
「じゃ、戻って調べてみるわね」
そう言い残し転移魔法で去っていったアーリアを見送ると、イズミはルーチンと化したダンジョンの扉近辺の巡視を始めた。
カレンは地上で故郷の友人達と一緒に行動をしているので、今は完全にフリーである。
ライトのヘッド部を捻って明かりを付けると、足元を照らしながら階段を降りる。
広場の蝋燭は既に燃え尽きており、左手に握ったライト以外の明かりは無い。
真っ暗で冷たい空気の中、静かに空間や壁そして天井を照らして、目で見て分かる異常が無いかを調べた。
「異常は無さそうだ」
1人納得したイズミは、ゆっくりまったりと地上へ戻った。
割と階段を登るのもエネルギーを使う。
ライトを消してマスタングへ戻り一休みしていると、カレンから魔法通信が来た。
「イズミさん、今は大丈夫ですか?」
カレンの声に焦りのような、困惑のようなものを感じる。
「大丈夫だ」
「つい先程、村に冒険者ギルドの方が到着しまして…」
まだそんなに日数は経過していないはずだが、冒険者達がダンジョン目当てで動き出す前に先んじてギルドの拠点を作るべく、豊富な人材と資材を持って来たらしい。
「ダンジョンの最寄りの村が此処なので、そこまでは良かったのですが…」
魔法通信であるにもかかわらず、声を潜めて話を続ける。
「領主である侯爵家の方もいらっしゃってます」
「…今すぐ魔法通信を切ってマスタングで国外まで走り出しても良いか?」
イズミは想定よりも早い貴族とのエンカウントに、冗談交じりに現実逃避をしようとするも、カレンに止められてしまった。
「普通は使者でも寄越して、屋敷まで来いとか言うものじゃないのか?」
「その辺りは何とも言えません…私も初めての経験ですので」
カレン曰く、故郷はかなりの田舎と言って良い所であり、侯爵家の領地でありながら侯爵家が来た事は1度も無かったらしい。
使いの者が年に何度かやって来る程度で、戦争の後ですら使いが馬車で1度見に来た程度との事だった。
「ダンジョンが見つかったから、一度は見ておこうとでも思ったのかね?」
イズミは自分が目を付けられている事を気にしないようにしつつ、素朴な疑問を口にした。
「ダンジョンもそうですが、イズミさんが目的だと思います」
すぐにカレンからツッコミが来てしまったが。
「今日は村の現状調査をして、此処に泊まるそうです。ダンジョンは明日現地を確認するとの事なので、イズミさんは明日が正念場ですね」
「魔獣の森に住む知り合いにお呼ばれしたので、イズミはしばらく不在になります…とかで誤魔化せないか?」
「私には無理です」
イズミは大きなため息をつき、マスタングのトランクに寝そべるようにして途方に暮れた。
イズミは平穏過ぎて退屈な警備を続けていた。
アーリアを呼んでラムネを渡したり、情報共有をしたりネックレスの鑑定を依頼したりと、冒険者パーティーが近くに居た時にはやりたくない事を済ませる。
「…コレがサイクロプスを倒した時にドロップしたの?」
アーリアがラムネを飲みつつ、ネックレスをジッと見つめる。
「俺が拾った訳では無いが、そうらしい」
「詳しくは戻ってからになるけど、付加が付いてるかも」
イズミは水筒に入った水を飲みつつ、アーリアの方を見た。
「付加ってのがあるのか」
「なんと言うか、加護みたいなものよ。クロスボウの矢に爆裂魔法を付与した…みたいな感じね」
そう言われてすんなりと理解した。
どうやって付加するのかは、検討もつかないが。
「じゃ、戻って調べてみるわね」
そう言い残し転移魔法で去っていったアーリアを見送ると、イズミはルーチンと化したダンジョンの扉近辺の巡視を始めた。
カレンは地上で故郷の友人達と一緒に行動をしているので、今は完全にフリーである。
ライトのヘッド部を捻って明かりを付けると、足元を照らしながら階段を降りる。
広場の蝋燭は既に燃え尽きており、左手に握ったライト以外の明かりは無い。
真っ暗で冷たい空気の中、静かに空間や壁そして天井を照らして、目で見て分かる異常が無いかを調べた。
「異常は無さそうだ」
1人納得したイズミは、ゆっくりまったりと地上へ戻った。
割と階段を登るのもエネルギーを使う。
ライトを消してマスタングへ戻り一休みしていると、カレンから魔法通信が来た。
「イズミさん、今は大丈夫ですか?」
カレンの声に焦りのような、困惑のようなものを感じる。
「大丈夫だ」
「つい先程、村に冒険者ギルドの方が到着しまして…」
まだそんなに日数は経過していないはずだが、冒険者達がダンジョン目当てで動き出す前に先んじてギルドの拠点を作るべく、豊富な人材と資材を持って来たらしい。
「ダンジョンの最寄りの村が此処なので、そこまでは良かったのですが…」
魔法通信であるにもかかわらず、声を潜めて話を続ける。
「領主である侯爵家の方もいらっしゃってます」
「…今すぐ魔法通信を切ってマスタングで国外まで走り出しても良いか?」
イズミは想定よりも早い貴族とのエンカウントに、冗談交じりに現実逃避をしようとするも、カレンに止められてしまった。
「普通は使者でも寄越して、屋敷まで来いとか言うものじゃないのか?」
「その辺りは何とも言えません…私も初めての経験ですので」
カレン曰く、故郷はかなりの田舎と言って良い所であり、侯爵家の領地でありながら侯爵家が来た事は1度も無かったらしい。
使いの者が年に何度かやって来る程度で、戦争の後ですら使いが馬車で1度見に来た程度との事だった。
「ダンジョンが見つかったから、一度は見ておこうとでも思ったのかね?」
イズミは自分が目を付けられている事を気にしないようにしつつ、素朴な疑問を口にした。
「ダンジョンもそうですが、イズミさんが目的だと思います」
すぐにカレンからツッコミが来てしまったが。
「今日は村の現状調査をして、此処に泊まるそうです。ダンジョンは明日現地を確認するとの事なので、イズミさんは明日が正念場ですね」
「魔獣の森に住む知り合いにお呼ばれしたので、イズミはしばらく不在になります…とかで誤魔化せないか?」
「私には無理です」
イズミは大きなため息をつき、マスタングのトランクに寝そべるようにして途方に暮れた。
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