異世界無宿

ゆきねる

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第六章 ダンジョン発見

第七十九話 長い夜(その2)

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イズミは慣れないガンスピンを止めてリボルバーをホルスターに仕舞い、カレン達へ声をかけた。

「調子はどうだ?」

「流石に疲れました。あんなに魔力を消費したのは久し振りです」

カレンがイズミを見て答えた。

「儂らの魔力も底を尽きる所じゃったな。今襲撃を受けたら防御魔法は期待せんでくれ」

サイクロプスの生首を処理しつつヴィルハイムが答えた。

「生首の処理はどうだ?」

「これは貴族や冒険者ギルドに高く売れるかもしれんぞ。どうも骨が魔力を帯びていて焼き切れんのじゃ」

ヴィルハイムは皮膚や眼球の処理が済んだ所で止めて、頭蓋骨を布袋に仕舞った。

「何にせよ、持ち帰って調べる必要がある」

どうも特殊個体だった可能性があるとの事だ。
ダンジョンだろうと魔物の骨に魔力が帯びていると言った事象は、過去の記録にも記載が無いレアケースらしい。

「それに関しては任せる」

イズミは焚火に近付いて鍋に入った湯を少し貰った。
先程の戦闘で身体が火照っていたが、少し冷えてきたからだ。

「あの!」

イズミが木製のカップにお湯を注いでいると、焚火の向こう側から声をかけられた。

「何でしょう」

見ると調査隊の回復役を担う女性だった。
名前は聞いてなかったか、忘れた。

「これセレス、先ずは自己紹介じゃろ」

ヴィルハイムがセレスと呼んだ女性が、焚火越しに挨拶をする。

「私『暁と盃』にて回復担当をしております、セレスティアと申します。セレスと呼んで下さい」

「イズミだ、よろしく」

互いに挨拶をした所で、セレスの目が鋭くなったように感じた。

「突然このような事をお伺いするのは恐縮なのですが…あのベリーのジャムってまだあったりしますでしょうか?」

優しい口調だが、その眼は獲物を狙う猛禽類のようだった。
イズミはカレンが空になったガラス瓶を持って来た時の事を思い出す。

[入手経路とか色々聞かれまして…]

かなりの眼力で聞かれたのだろうと少しカレンへ同情の念を抱いたが、今は自分が聞かれているのだ。

更にジャムの出所も、相手からしたら自分なのがまた厄介なのである。

「えぇ、まあ」

「出来れば1つ、いえ2つ程あれば購入させて頂く事は出来ますか?」

焚火越しでもズズいと近付かれているような感覚を持った。
イズミはマスタングへと向かいつつ、ジャムの実体化を頼んだ。

「マスター。レシピを口伝すれば、あの方なら自作するかもしれません」

マスタングはセレスの口調から、ジャムの美味しさの虜になっていると判断していた。

「レシピと言ってもな…俺はそんなに詳しく無いぞ」

マスタングはモニターにジャムの作り方を映し出した。

『覚えろ』と言う事か。

かなり大まかに記憶したイズミは、ジャムの瓶を2個持って焚火へと戻る。

「丁度2個あった。瓶1つにつき銀貨2枚でどうだ?」

「買います!」

セレスは即答で銀貨4枚を取り出した。
それを受け取ったイズミは、焚火の前に座りつつジャムのレシピについて必要かどうか聞いてみた。

「作り方なんだが…」

「教えて頂けるのですか!?是非!!」

セレスはこの世界に来てから出会った誰よりも速く、イズミの隣に移動して来た。

「まず材料なんだが…」

その後セレスは羊皮紙と筆を何処からか取り出したので、マスタングからこっそり作り方を聞きつつ、レクチャーする事になった。
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