異世界無宿

ゆきねる

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第五章 カレンの故郷

第五十九話 地下

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イズミはショットガンの銃口を地下への階段に向けつつ、後ろにいる2人へ声をかけた。

「地下への階段があった。他と比べても随分と綺麗なもんだ」

カレンはおっかなびっくりと言った感じで近くに来て、地下への入口を確認している。
若者も付いてきてはいるが、警戒しているのかまだ距離を取っている。

「昨日の奇襲でここに当たってなかったのかね?無傷にも見えるが」

「可能性はありますが、奥に嫌な気配があります」

イズミとカレンが入口から少し距離を取り、近くにあった小石を投げ込んだ。

カンカンと音を立てて落ちていく。

「カレン、この穴の先が何だったら嫌かな?」

イズミの元いた世界での経験則がある。
『自分が言葉に出した、嫌だと思う事は大体現実になる』だ。
なのでカレンに聞いてみる。

カレンは悩んだ末に答えた。

「魔物の巣窟だったり、ダンジョンだったら嫌ですね。スタンピードが発生したら、真っ先に村が襲われますので」

イズミはため息をついた。
魔物の巣窟は一番最初に頭に浮かんで来た『嫌な事』だったからだ。
これは村に報告をした方が良いと判断し、同行して来た若者に村への連絡を頼んだ。

「急ぎ村への連絡をして欲しい。名前は?」

「ガルシアだ。村に戻って、詳しい人を連れて来る!」

ガルシアによろしく頼むと、イズミはマスタングに周囲の索敵を頼むと、今の所は敵らしき反応は無いと返ってきた。



「暗くて狭いってのは好きになれないな」

イズミは近場にあった木片を集めて地下への階段を簡易的に塞ぐと、マスタングの元まで戻って身体を伸ばしていた。

もしあの地下を調査するとなったら、間違いなく自分も入らないと駄目だろう。

「村から冒険者ギルドに依頼するのも有りですが、そんな余裕も無いですし」

「あの地下がもしもダンジョンだったら、どうなる?」

イズミは興味本位で聞いた。

「ダンジョンでしたら、ここに大きな都市が作られますね。ダンジョン都市は国にとって重要な拠点となります」

リスクとリターンを考えてみる。
リスクは魔物の大量発生が挙げられる。
リターンは魔物からの素材だろうか。

「ダンジョンでは不思議な事が起こり得ます。金銀財宝とまでは言いませんが、出所の分からない武器や防具が出て来たり、常識外れな大きさの宝石や魔石が発見されたり」

カレンが冒険者ギルドへの仮登録の際に聞いたダンジョンの説明を、そのままイズミに伝えた。

「マスタング。あの地下への階段だが、その先がダンジョンである可能性はどのくらいだ?」

マスタングからの返事は、直ぐには返って来なかった。
何度かモニターが点滅しては消えてを繰り返しているので、返事が来るまでに水分補給でもとカレンと一緒に休憩にはいった。

待つこと数分。

「マスター、スキャンが完了しました。既にダンジョンに成ってます」

イズミは口に含んでいた水を吹き出した。
カレンは器官に入ったのか噎せた。

「可能性とかじゃなくて、ダンジョンなのか?成るってのはどう言う意味だ?」

イズミが確認を取る。

「地下への階段は、我々の奇襲後に形成されています。元々は寺院の地下施設だった可能性が高いですが、現在はダンジョンとなっています」

マスタングの説明からすると、此処にいた帝国軍らしき者達が寺院跡地の地下で何かをしていた。

そこへ俺達がやって来て、グレネードランチャーを撃ちまくってトンズラした。

その後に何かがあって、現在はダンジョンになっている。


余りにも理解しきれない内容に、イズミとカレン2人して頭を抱える事になった。
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