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第四章 旅と戦闘
第五十二話 メンテナンス
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今日も騎士隊の宿舎に泊まって良いとの事なので、素直にその好意に甘える事にしたイズミは、カレンが宿舎に向かうのを見てから再びマスタングに乗り込んだ。
「マスタング、今のうちに魔力補給をしておこう…勿論、満タンでな」
言った途端に全身の力が抜けるのを感じる。
未だに慣れない感覚だ。
「マスター、魔力補給が完了しました」
ガコンと音を立ててグローブボックスが開く。
覗き込むと、マグナムのメンテナンス道具一式と水筒が入っていた。
それを手に取って、中身を確認してから降車する。
「マスタング、索敵と警戒は怠るなよ…何かあったら暴れてくれて良いからな」
ステアリングをそっと撫でて、ゆっくりとドアを閉めた。
幸いにもイズミとカレン双方に1部屋を与えられていたので、案内された部屋に入って一息ついた。
部屋には明かりが1つ灯っていた。
臭いを確かめるが、獣臭などはしなかった。
炎に見えなくもないが、息を吹きかけても消えなかった。
明かりが簡単には消えなさそうな事を確認したイズミは、上着を脱いでショルダーホルスターを外した。
身体を伸ばして緊張と凝りを解す。
流石にマグナムをぶら下げて生活するのは肉体的に厳しいものがある。
そう痛感しつつも、マグナムが無ければ碌に自分の身も守れないのだから、自分の身体の方で適応しなければ後々に苦労するだろう。
イズミは部屋の隅にあった小さな机と椅子を引っ張り出すと、マグナムとメンテナンス工具を机の上に並べた。
腕時計を机に置こうと右手を見て、今は外している事を思い出す。
イズミは頬を軽く叩いてから、マグナムへと向き直した。
まず最初に実包を抜き取り、机の上に1発づつ並べた。
日常的に分解清掃をしていればスムーズに出来るのだが、まだ経験が乏しいイズミはモデルガンの分解清掃に関する記憶と、手元にある工具を見つつ脳ミソの引き出しを漁ること数分。
何とか簡易分解が出来ていた。
シリンダーを取り外して、ブラシで汚れを落とす。
発射原理が火薬から魔力に置き換わっているが、やはり動作部分は汚れるようだ。
バレルを銃口側から覗いて、以前実体化させたライトでシリンダー側から照らす。
しっかりとライフリングが刻まれているのが確認出来た。
細い棒…クリーニングロッドでバレル内の汚れを落とす。
ある程度汚れが落ちたと判断したら、今度は布を押し込んで拭き取りをした。
汚れ落としが終わったら、油を薄く塗ってマグナムを組み直す。
最後に全体を綺麗な布で一通り拭いた。
グリップ部分が汚れていたり油が残っていたりすると、いざと言う時に手からマグナムが滑る可能性が高くなるからだ。
シリンダーを手で勢い良く回してみると、スムースに動いている気がした。
念の為に実包も布で乾拭きしてからシリンダーへ詰め込み、机の奥側に置いた。
装備類は今日の内に軽く掃除をしておこうと、スピードローダーを取り出した。
全部で4個、計24発だ。
実包を外してから、スピードローダーの動作に鈍さが無いかを何度か動かして確認する。
問題は無いと判断して、布で一度乾拭きをした。
少し汚れがあったので、水筒の水を布に染み込ませてからもう一度拭く。
全てのスピードローダーを拭き終えたので、再度乾拭きをして実包を込めてポーチへと収納した。
これで簡単なメンテナンスは終了だ。
イズミは一旦ベッドに寝転がり、溜め息をつきながら明かりを見つめた。
翌朝、騎士隊宿舎の朝食を分けて貰えたので、まったりと食べていたら外が賑やかだ。
立ち上がって外を覗いてみると、騎士達が人型の的に向かって何かを投げている。
「ナイフ投げだよ、イズミ殿。先月冒険者ギルドの面々とナイフ投げで勝負をして惨敗だったらしい。それで練習しているそうだ」
声を掛けてきた男がイズミの隣に立つ。
あの老騎士だった。
「ナイフ投げか。やった事無いな」
映画で見たことはあるが、流石にやった事は無い。
子供の頃に手裏剣のオモチャで遊んだか、洒落た飲み屋にあったダーツくらいだろう。
「出来て損は無いぞ。ナイフの扱いは出来て何一つ損が無い【活きた技術】だ。儂が教えようか?」
老騎士の提案は有り難いが、真意が掴みきれないので今回は断る事にした。
「飛び道具は間に合ってるので」
イズミは朝食を食べ終えると食器を片付けて、騎士隊のナイフ投げを遠目で眺めていた。
「マスタング、今のうちに魔力補給をしておこう…勿論、満タンでな」
言った途端に全身の力が抜けるのを感じる。
未だに慣れない感覚だ。
「マスター、魔力補給が完了しました」
ガコンと音を立ててグローブボックスが開く。
覗き込むと、マグナムのメンテナンス道具一式と水筒が入っていた。
それを手に取って、中身を確認してから降車する。
「マスタング、索敵と警戒は怠るなよ…何かあったら暴れてくれて良いからな」
ステアリングをそっと撫でて、ゆっくりとドアを閉めた。
幸いにもイズミとカレン双方に1部屋を与えられていたので、案内された部屋に入って一息ついた。
部屋には明かりが1つ灯っていた。
臭いを確かめるが、獣臭などはしなかった。
炎に見えなくもないが、息を吹きかけても消えなかった。
明かりが簡単には消えなさそうな事を確認したイズミは、上着を脱いでショルダーホルスターを外した。
身体を伸ばして緊張と凝りを解す。
流石にマグナムをぶら下げて生活するのは肉体的に厳しいものがある。
そう痛感しつつも、マグナムが無ければ碌に自分の身も守れないのだから、自分の身体の方で適応しなければ後々に苦労するだろう。
イズミは部屋の隅にあった小さな机と椅子を引っ張り出すと、マグナムとメンテナンス工具を机の上に並べた。
腕時計を机に置こうと右手を見て、今は外している事を思い出す。
イズミは頬を軽く叩いてから、マグナムへと向き直した。
まず最初に実包を抜き取り、机の上に1発づつ並べた。
日常的に分解清掃をしていればスムーズに出来るのだが、まだ経験が乏しいイズミはモデルガンの分解清掃に関する記憶と、手元にある工具を見つつ脳ミソの引き出しを漁ること数分。
何とか簡易分解が出来ていた。
シリンダーを取り外して、ブラシで汚れを落とす。
発射原理が火薬から魔力に置き換わっているが、やはり動作部分は汚れるようだ。
バレルを銃口側から覗いて、以前実体化させたライトでシリンダー側から照らす。
しっかりとライフリングが刻まれているのが確認出来た。
細い棒…クリーニングロッドでバレル内の汚れを落とす。
ある程度汚れが落ちたと判断したら、今度は布を押し込んで拭き取りをした。
汚れ落としが終わったら、油を薄く塗ってマグナムを組み直す。
最後に全体を綺麗な布で一通り拭いた。
グリップ部分が汚れていたり油が残っていたりすると、いざと言う時に手からマグナムが滑る可能性が高くなるからだ。
シリンダーを手で勢い良く回してみると、スムースに動いている気がした。
念の為に実包も布で乾拭きしてからシリンダーへ詰め込み、机の奥側に置いた。
装備類は今日の内に軽く掃除をしておこうと、スピードローダーを取り出した。
全部で4個、計24発だ。
実包を外してから、スピードローダーの動作に鈍さが無いかを何度か動かして確認する。
問題は無いと判断して、布で一度乾拭きをした。
少し汚れがあったので、水筒の水を布に染み込ませてからもう一度拭く。
全てのスピードローダーを拭き終えたので、再度乾拭きをして実包を込めてポーチへと収納した。
これで簡単なメンテナンスは終了だ。
イズミは一旦ベッドに寝転がり、溜め息をつきながら明かりを見つめた。
翌朝、騎士隊宿舎の朝食を分けて貰えたので、まったりと食べていたら外が賑やかだ。
立ち上がって外を覗いてみると、騎士達が人型の的に向かって何かを投げている。
「ナイフ投げだよ、イズミ殿。先月冒険者ギルドの面々とナイフ投げで勝負をして惨敗だったらしい。それで練習しているそうだ」
声を掛けてきた男がイズミの隣に立つ。
あの老騎士だった。
「ナイフ投げか。やった事無いな」
映画で見たことはあるが、流石にやった事は無い。
子供の頃に手裏剣のオモチャで遊んだか、洒落た飲み屋にあったダーツくらいだろう。
「出来て損は無いぞ。ナイフの扱いは出来て何一つ損が無い【活きた技術】だ。儂が教えようか?」
老騎士の提案は有り難いが、真意が掴みきれないので今回は断る事にした。
「飛び道具は間に合ってるので」
イズミは朝食を食べ終えると食器を片付けて、騎士隊のナイフ投げを遠目で眺めていた。
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