異世界無宿

ゆきねる

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第四章 旅と戦闘

第四十九話 後始末って大変

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冒険者パーティーはイズミの頼み事を聞き終えると、しばしパーティー内で相談をしていた。

イズミの頼み事…無茶振りは大きく分けて3つだ。

1つは、負傷した騎士の手当て。
1つは、ゴブリン討伐の証拠集め。
1つは、フォレストオーガの解体。

勿論、対価も提示している。

冒険者ギルドからのゴブリン討伐分の報酬100パーセントをパーティーに譲る。
素材に使えるフォレストオーガの部位は、持てるだけ持って行って良い。

イズミやカレンでは騎士の怪我を治しきれないし、フォレストオーガの解体も効率的には出来ない。
ゴブリン討伐の証拠をギルドへ持って行っても、登録不可の人間と仮登録のエルフではどうしようもない。

冒険者パーティーは、この無茶振り…押し付けとも言える…を了承してくれた。



冒険者パーティーが言うには、ゴブリンの巣は破壊すると言う冒険者ギルドのルールがあるそうなので、それはイズミとカレンで引き受ける事にした。

カレンの魔法で巣を破壊してみたが時間がかかりそうなので、広い場所にある巣はマスタングでやってみた。

バリバリと音を立てて巣が崩れていく。
綺麗サッパリさせる必要があるならば、マスタングの秘密の機能である火炎放射器で燃やせば良いと考えていたが、どうやらそこまでは大丈夫だそうだ。


「傷は治りそうか?」

騎士の坊やの手当てをしてくれている魔術士に確認を取る。

「傷自体は治りますが、私の力では負傷前のように使えるかどうかまでは…」

その声は女性のものだった事に少々驚いてしまった。

ゴブリンの巣の調査と言う不確定要素の多い仕事でも請け負うとは、かなりガッツのある冒険者パーティーなのだろうと、イズミはひとり勝手に感心していた。

「それは彼が騎士隊の本部とやらに戻ってから、独自に何とかして貰うとしよう」

騎士の坊やは仲間や同僚と言った関係性の無い存在なので、イズミとしてはほぼ無関心である。

「ゴブリン討伐の証拠、集め終わったぞ」

剣士と斥候の2人がゴブリンの右耳を切り落とし、袋いっぱいに詰め込んであった。

狙いやすい胴体ばかりを攻撃していたからか、頭部の損傷が少なくて助かったと言われてしまった。

頭部をピンポイントで狙い撃つって、かなり難しいからな…


「証拠集めが終わったのなら、解体も手伝ってくれ!デカくて骨が折れる」

フォレストオーガを解体していた剣士が、両手を上げて仲間にアピールしていた。
アレの素材って売れるのだろうか?

「牙に毛皮に爪や骨、肉だって売れるぞ。魔石を持ってれば…儲けもんだ」

3人がかりで解体をしつつ、ざっと説明をしてくれた。

「アイテムボックス持ちがいれば、狩った魔物を仕舞ってギルドでまるっと渡せるんだけどな…高ランク冒険者や貴族とかしか持ってないから、持て余す物は棄てるしかない」


冒険者達の話を聞きつつ後処理を続けていると、マスタングから連絡が入ってきた。

「マスター、飛竜が1体近付いて来ます…騎士隊の可能性が高いです」

連絡を聞いたイズミは、騎士隊の人間が降りてくるのを待つ事にした。
負傷した騎士の坊やを回収して貰おうかと考えたからだ。


降りてきた飛竜騎士に状況を説明する。

魔道具やアーティファクトを献上しろと言ってきた事。
自分が散歩と言って連れ出した事。
フォレストオーガを見て、剣を捨てて逃げた事。
魔道具を奪って仕留めようとしたが、ヘマをして利き手を負傷した事。
幸運にも近くにいた魔術士に応急処置をしてもらった事。
後遺症が残る可能性があるので、急ぎ連れ帰って本格的な治療を受けた方が良い事。

あった事を淡々と話していたら、飛竜騎士がキレた。

「あの馬鹿貴族!醜態を晒すどころか、剣を捨てて逃げるなど騎士の恥とは正にこの事!…ご迷惑をお掛けし、誠に申し訳ない」

この飛竜騎士はあの坊やが勝手に行動をして行方をくらましたので、本部へ連れ戻しに来たと言う。

「いやいや、私が言うのも恐縮ですが…良い人生経験にはなったと」

イズミは飛竜騎士に引きづられて行く坊やを見送り、冒険者パーティーの仕事ぶりを確認しに向かった。
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