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第四章 旅と戦闘
第四十四話 騎士隊庁舎にて
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再びのミグルン。
数日ぶりなので代わり映え無い、変わっていても変化に気付けないだろう町並みを尻目に、竜騎士の案内で騎士隊の拠点へとマスタングを進めた。
もう日も暮れると言う事で、騎士隊の宿舎の1室を使わせてもらえる事になったが、監視の目がありそうでイズミは挨拶をそこそこに一旦マスタングへ戻った。
周囲に誰も見当たらない事を確認してから、右手に着けていた腕時計を外してメーターバイザーの上に置き、手首を解したり腕をゆっくりと伸ばして調子を整える。
「貴族か…この時計も目立つのか?」
イズミは昼間の会話を思い出しつつ、大切な腕時計を見つめる。
元いた世界で購入した腕時計。
イズミが『世界で1番格好良い男』と信じてやまない男が、ある映画で着用した角型の自動巻クロノグラフ。
それの復刻版だ。
「確実に目立ちますし、下手をすれば条件交渉の材料にもされかねません」
マスタングが答えた。
この世界には時計自体が存在していても非常に大型で、まず携帯出来るサイズでは無いのだ。
「コピーは可能か?」
「マスターの考える完全な複製品は作れません。こちらの世界の技術、部品と成り得る物で構成された【本物に限りなく近い複製品】となります」
イズミは大きなため息をつき、目を閉じて考え込む。
そして目を開くとマスタングのグローブボックスを開け、腕時計をそこに入れた。
「厳重に保管しておいてくれ。他人の手に渡るリスクを背負うよりマシだ」
大切だからこそ、オリジナルのままであって欲しい。
複製品を実体化させる気にはならなかった。
グローブボックスを閉めたイズミは、腕時計の重みを失った右手を見つめると、小さく笑った。
それは、物悲しげで淋しい笑みだった。
マスタングから降りたイズミは、騎士隊の宿舎へと歩を進めた。
その後姿を見たマスタングは警戒態勢に入ると同時に、小さくガコンと魔法使用時の駆動音が鳴った。
その音はとても小さく、イズミには聞き取れなかった。
翌日、簡素な朝食も程々に騎士隊からの聴取…尋問ではない…が始まった。
何故あの村へ向かったのかから始まり、何を見聞きして、どう戦ったのか。等々…
そして昼前。
「おおよその流れは理解出来たが、戦闘に関しては疑問が多い。これでは説明しきれない。見る所剣士では無いし、カレン嬢のクロスボウでは説明出来ない程の傷を賊に負わせる武器は検討も付かない」
聴取は終わっていなかった。
「それに関しては戦闘用の魔道具だと思ってくれ。それ以上の説明は難しい」
誰だって自分の得意技を誰彼構わず見せつけはしないだろ?
そう付け加えて、イズミはなるべく武器に関しては伏せて話をしていた。
その結果、埒が明かない状態になりつつある訳だが。
「しかしだな…戦闘痕はクロスボウ以外はイズミ殿が所持している魔道具が2種類、賊の原型すら分からなくなる程の攻撃が可能なモノまであると分かると、流石にある程度は答えて貰わねばならん」
試しにガトリング砲を使ったのが仇となったのだ。
アレさえ無ければもう少し穏便に話を進められたかもしれない。
イズミは苦虫を噛み潰したような表情で答える。
「アーティストの能力だ。俺も全ては把握出来ていないから、説明しきれないんだ」
騎士隊の人間も信じ難い話の連続で、記録は取っているが疑念の方が強いようだ。
イズミは冒険者ギルドの時とは違い、今回は武器の1つでも見せないと状況は好転しないと結論づけ、騎士隊の人間に肩からぶら下げたマグナムを指差した。
「訓練所はあるか?魔道具を1つ見せてやる。このままじゃ埒があかない」
外に出たイズミと騎士隊の数人は、訓練場に向かう。
「これは壊れても平気か?」
訓練場の一角にあったレンガを的に出来ると騎士隊に確認を取る。
問題ないと回答を貰い、イズミは右手で鼻を擦りながら歩き始め、マグナムを抜いてハンマーを起こしながら的との距離を取った。
騎士隊はそんなイズミの姿を少しだけ離れた場所で見つめている。
イズミが的を一度睨み、マグナムを構える。
大きいレンガの中心より、少し高めに照準を合わせる。
その直後、耳に残るような乾いた音が1発だけ響いた。
イズミはマグナムをホルスターへ収めて騎士隊の方へと向かう。
少しムスッとした表情で砕けたレンガの的を見た。
「ご覧の通り、レンガも砕ける威力の魔道具だ。一撃で相手をあの世へ送れる…かもしれない」
イズミは好きな映画のワンシーンを思い出し、もう一言付け足そうかと考えたが、あえて口には出さなかった。
数日ぶりなので代わり映え無い、変わっていても変化に気付けないだろう町並みを尻目に、竜騎士の案内で騎士隊の拠点へとマスタングを進めた。
もう日も暮れると言う事で、騎士隊の宿舎の1室を使わせてもらえる事になったが、監視の目がありそうでイズミは挨拶をそこそこに一旦マスタングへ戻った。
周囲に誰も見当たらない事を確認してから、右手に着けていた腕時計を外してメーターバイザーの上に置き、手首を解したり腕をゆっくりと伸ばして調子を整える。
「貴族か…この時計も目立つのか?」
イズミは昼間の会話を思い出しつつ、大切な腕時計を見つめる。
元いた世界で購入した腕時計。
イズミが『世界で1番格好良い男』と信じてやまない男が、ある映画で着用した角型の自動巻クロノグラフ。
それの復刻版だ。
「確実に目立ちますし、下手をすれば条件交渉の材料にもされかねません」
マスタングが答えた。
この世界には時計自体が存在していても非常に大型で、まず携帯出来るサイズでは無いのだ。
「コピーは可能か?」
「マスターの考える完全な複製品は作れません。こちらの世界の技術、部品と成り得る物で構成された【本物に限りなく近い複製品】となります」
イズミは大きなため息をつき、目を閉じて考え込む。
そして目を開くとマスタングのグローブボックスを開け、腕時計をそこに入れた。
「厳重に保管しておいてくれ。他人の手に渡るリスクを背負うよりマシだ」
大切だからこそ、オリジナルのままであって欲しい。
複製品を実体化させる気にはならなかった。
グローブボックスを閉めたイズミは、腕時計の重みを失った右手を見つめると、小さく笑った。
それは、物悲しげで淋しい笑みだった。
マスタングから降りたイズミは、騎士隊の宿舎へと歩を進めた。
その後姿を見たマスタングは警戒態勢に入ると同時に、小さくガコンと魔法使用時の駆動音が鳴った。
その音はとても小さく、イズミには聞き取れなかった。
翌日、簡素な朝食も程々に騎士隊からの聴取…尋問ではない…が始まった。
何故あの村へ向かったのかから始まり、何を見聞きして、どう戦ったのか。等々…
そして昼前。
「おおよその流れは理解出来たが、戦闘に関しては疑問が多い。これでは説明しきれない。見る所剣士では無いし、カレン嬢のクロスボウでは説明出来ない程の傷を賊に負わせる武器は検討も付かない」
聴取は終わっていなかった。
「それに関しては戦闘用の魔道具だと思ってくれ。それ以上の説明は難しい」
誰だって自分の得意技を誰彼構わず見せつけはしないだろ?
そう付け加えて、イズミはなるべく武器に関しては伏せて話をしていた。
その結果、埒が明かない状態になりつつある訳だが。
「しかしだな…戦闘痕はクロスボウ以外はイズミ殿が所持している魔道具が2種類、賊の原型すら分からなくなる程の攻撃が可能なモノまであると分かると、流石にある程度は答えて貰わねばならん」
試しにガトリング砲を使ったのが仇となったのだ。
アレさえ無ければもう少し穏便に話を進められたかもしれない。
イズミは苦虫を噛み潰したような表情で答える。
「アーティストの能力だ。俺も全ては把握出来ていないから、説明しきれないんだ」
騎士隊の人間も信じ難い話の連続で、記録は取っているが疑念の方が強いようだ。
イズミは冒険者ギルドの時とは違い、今回は武器の1つでも見せないと状況は好転しないと結論づけ、騎士隊の人間に肩からぶら下げたマグナムを指差した。
「訓練所はあるか?魔道具を1つ見せてやる。このままじゃ埒があかない」
外に出たイズミと騎士隊の数人は、訓練場に向かう。
「これは壊れても平気か?」
訓練場の一角にあったレンガを的に出来ると騎士隊に確認を取る。
問題ないと回答を貰い、イズミは右手で鼻を擦りながら歩き始め、マグナムを抜いてハンマーを起こしながら的との距離を取った。
騎士隊はそんなイズミの姿を少しだけ離れた場所で見つめている。
イズミが的を一度睨み、マグナムを構える。
大きいレンガの中心より、少し高めに照準を合わせる。
その直後、耳に残るような乾いた音が1発だけ響いた。
イズミはマグナムをホルスターへ収めて騎士隊の方へと向かう。
少しムスッとした表情で砕けたレンガの的を見た。
「ご覧の通り、レンガも砕ける威力の魔道具だ。一撃で相手をあの世へ送れる…かもしれない」
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