異世界無宿

ゆきねる

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第四章 旅と戦闘

第四十三話 逆戻り

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イズミの中では一段落したので次の旅支度でもと考えていたが、やって来た王国第二騎士隊の副隊長ヴォルフゲートと名乗る男に止められた。

「イズミ殿…大変恐縮ではあるが、本件はそう単純な話では無さそうでな。一度騎士隊の拠点へ来て情報の精査にご協力頂けないだろうか?」

聞くところによると、お尋ね者の賊を一掃出来たり拠点を制圧出来たりと、騎士隊としても王国としても…冒険者ギルドにとっても非常に良いニュースなのだ。
イズミ的には複雑な心境だった。

今回の派手に暴れ回ってしまったが、不慮の事故みたいなもので余り有名になりたく無いのだ。

「俺は今後の旅路も気楽に生きたいってのもあるし、なるべく顔を覚えられるような事は避けたいのだが」

その言葉を聞いたヴォルフゲートは少し考え込み、部下に聞こえない程度の声で話を始めた。

「それであれば…まず貴族、出来れば王族に親しい方とのコネを作る必要がありますな。怪しまれないような説得力のある作り話をまとめ、それを広める事の出来る有力者とのコネです」

コネと聞いてイズミは険しい顔をしつつ考え込む。

「貴族は面倒事を嫌がりますが、珍しい物美しい物には目がありません。そう言った所を刺激するのも1つの手段ですな」

そう言い残すと竜騎士は飛竜へ飛び乗った。

「皆は村の被害状況を確認、報告をしてくれ。私は本隊と連携を取る」

部下の一人がイズミの所へとやって来た。

「副隊長よりイズミ殿を最寄りの拠点まで案内するように命じられました。飛竜に乗られますか?」

話によると飛竜には3人程度なら乗れるらしいが、イズミは酔ってしまうかもしれないと言ってカレンと一緒にマスタングへ乗り込んだ。

「こいつなら飛竜に追いつける…はずだ。だよな?マスタング」

イズミがステアリングを撫でると、マスタングがエンジンを蒸して答えてくれた。

「で、向かう拠点は何処にあるんだ?」

案内してくれる騎士に確認する。

「本拠点だと王都になるのですが、今回は最寄りのミグルンです」

冒険者ギルドの方々と一悶着あって日も空いていないのに、外で暴れ回って騎士隊と一緒に戻って来る事になるとは。

「ミグルンか。なんか気まずいな」

イズミの小言にカレンは小さく頷いた。
マスタングのエンジンが起動し、ミグルンへと移動を開始した。


飛竜の移動速度は思っていたよりも早く、マスタングのメーターは60マイルを下回らない。
日が暮れるまでに到着したいのか、ハイペースな移動に感じる。
イズミとマスタングは久し振りに感じる高速走行を楽しんでいた。
魔力を使わずに道の凹凸での振動すらイズミには心地良い。
隣のカレンに目をやると、表情が強張っているように感じる。

「カレン!マスタングはもっと飛ばせるんだ。この位で怖がってると大変だぞ?」

段差ももろともせずに爆走するマスタングの揺れに慣れていないカレンは身体を強張らせていた。

「だ、大丈夫です~~!?」

混乱しているカレンを尻目に、イズミとマスタングは爆走を続けた。



途中で1回休憩を入れたタイミングでアーリアと魔法通信をする。
直ぐにアーリアは転移魔法でやって来た。

「大暴れした後にしては元気そうね。ラムネ頂戴」

アーリアも中々にタフな奴なのかもしれないと思いつつ、マスタングに頼んでラムネを実体化させる。

「聞きたいことがあったんだ。魔石が欲しいのだが、何処で買うんだ?」

アーリアに尋ねると色々と教えてくれた。
冒険者ギルドや商人ギルドが運営する店舗だったり、物々交換だったり。
岩石が魔石化する場合もあるので、鉱物を取り扱う店で売っていたりもするらしい。
価格はマチマチであり、魔石としての純度や質が悪い物はタダでくれたりする事もあるそうだ。

一言いってくれれば持ってきたのにと笑ってくれたが、すっかり忘れていたと答えた。

「で、魔石を何に使うの?」

イズミはポケットに仕舞っていたライトを渡して使用方法を説明した。

「面白い道具ね。魔法の扱いが下手な冒険者は喜びそう」

アーリアが呪文を唱えると、掌に球体の光が現れた。
魔法を使える者であれば、夜道を照らす位の光魔法は属性関係無く使えると言う。
カレンにも聞いてみたが、さらっと呪文を唱えて光を出された。

イズミが持っていたライトより明るかった。

「ほんと、魔法が使えるってのは羨ましいぜ」

イズミは大きな溜め息をついた。
やはりもう少し大型のライトが欲しい。
出来れば単3電池か単2電池を使ったサイズ感のライトを、と強く願うのであった。

その後アーリアは転位魔法で帰ったのを確認して移動を再開する。
移動は順調でご機嫌にマスタングを飛ばし続けた結果、日が暮れる前にミグルンの街に到着した。
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