異世界無宿

ゆきねる

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第四章 旅と戦闘

第四十一話 夜の灯り

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イズミ側の状況説明を受けたフレイルは、騎士隊へ一報を入れるとの事で魔法通信を切ってしまった。

カレンが賊の拠点や機微な情報を捕らえた残党と[おはなし]して聞いた事を流した訳で、これで上手く事が運べば賊の壊滅も近付くだろう。

とは言っても、もう夕方になる。
到着は明日以降になから、まず今晩を切り抜けなればならない。
戦闘中に仲間を呼ばれている可能性はゼロでは無いのだ。
カレンが[おはなし]を聞いた残党からは、増援を呼んだ仲間の記憶は無かったようだが。

イズミは元いた世界での夜勤経験はあっても、夜戦の経験がある訳がない。
夜目が利くタイプの人間と感じた事も、思い返しても浮かんで来ない。

日が暮れる前に色々と準備をしなければと、カレンを呼んで夜の対策を練る事した。



簡単な食事を済ませたイズミは、マスタングに定期的な索敵を頼んで見回りをする事にした。
村で使われていただろう松明を拝借して、今日の拠点とした建物近辺を見て回る。

ランプでもあれば便利なのだが、さらっと見た分にはそれらしい物は無かった。

マスタングの索敵の結果は異常無しで、見回りでも違和感は無かったのでとりあえずは良しとして拠点にした建物に入る。
最初にドンパチした老人のいた宿屋の隣だ。

入るとカレンが囲炉裏に火を灯して、スープを温めていた。
緊張状態でも温かいスープは、イズミの心に安らぎをもたらしてくれるものがあった。


夜風を浴びようと建物の外に出たイズミは、月や星が見えない暗い空を睨みつけながら右手を肩からぶら下げるリボルバーへと伸ばす。
マスタングへと歩を進めて運転席に乗り込むと、カーナビのモニターに映る索敵結果を確認する。

「マスタング、フラッシュライトとか実体化出来るか?」

松明では遠くを確認しきれず危険だ。
フラッシュライトがあれば索敵から目潰しまでこなせる優れものだ。
元の世界で持っていたフラッシュライトをイメージする。
映画での警官や特殊な捜査官が使用していたライトを思い返していた。

「実体化は可能なのですが、電池とフィラメント部を魔石で生成した方が性能が向上します」

魔石…何処で入手出来るのか分からないが、今後も必要になりそうなので調べておくのが良さそうだ。

「分かった。魔石を手に入れてから改めて考えよう」

イズミはマスタングに索敵を継続させ、カレンが待機している建物へと戻った。


建物に戻ると宿屋の老人もスープを貰いに来ていたので、魔石があるか聞いてみた。

「あるにはあるが…質は悪いのばかりじゃぞ」

そう言って老人は宿屋から数個持ってきた。
そのうちの一つを渡されたので囲炉裏の火にかざす。
白い魔石は向こうが透けて見えるが、中は結構濁っていた。

「貰って良いのか?」

イズミが老人に確認すると、笑いながら持っていた残りの魔石も渡された。

「この村じゃこの手の魔石などあっても使わないからの」

有り難く頂戴した魔石を持ってマスタングへと向こうと、早速使えるかどうか確認をしてもらった。

「マスタング、質は悪いらしいが魔石を持って来た。使えそうか?」

グローブボックスを開けて魔石を入れ込むと、モニター画面にスキャン中と表示された。

「スキャン完了しました。こちらのライトであれば実体化が可能です」

モニター画面に表示されたのは、単4電池1本で動作するライトだった。
せめて単3電池2本のモデルが実体化出来れば嬉しかったが、それは今後の楽しみにと自分に言い聞かせだ。

「魔石の質が悪いってのは、使える部位が少ない…みたいなものか」

無いよりはマシと思って試しに1本だけ実体化させてみる。
出て来たライトは元いた世界の使用方法と一緒で、ヘッド部を回転させると点灯した。

LED球のような白い光では無く、白熱電球の光と言った方が近い。
ご丁寧にダークスポットまであるのは何故なのだろうか。
そして何より、心許無い明るさだった。

「次の街で魔石を購入するのが良いでしょう。手持ちの照明は戦闘にも有用です」

マスタングに感謝の言葉を伝え、ライトで足元や近場を照らしつつ建物へと戻ってみる。
この明るさならば松明の方がマシかもしれないが、松明よりは遠くへ明かりを飛ばせてはいた。
流石に敵の目潰しに使用するのは厳しいだろう。

マスタングからの有り難い助言も頂いたので、この面倒事が済んだら一度街へ買い出しついでに探しても良い。
そんな気分になっていた。
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