異世界無宿

ゆきねる

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第四章 旅と戦闘

第三十七話 大掃除にしては…

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「村を丸ごと占拠か…あまり聞かないパターンだ」

フレイルに一連の出来事を説明すると、唸るような返答が来た。

「ただ村を占拠するのでは脳が無い。何か大きな目的があっての占拠だと思う」

俺とフレイルは二人して、賊の考えそうな事を話し合った。

「…絨毯か」

二人で出した結論はこうだ。

賊が村を占拠して特産品を奪う。
住民を連れ去り高値で売買をする。
特産品を購入しに来た商人を襲撃して、金を巻き上げる。
奪った特産品は、別の場所で高値で売り捌く。

これくらいしか思い付かん。

「冒険者ギルドでも何処でも良いが、この村に誰か派遣出来ないのか?」

俺はギルドへの依頼方法など知らないので、頼みの綱はフレイルだ。

「出来ない事も無いが、冒険者ギルドが動くには時間がかかる」

冒険者ギルドはギルドよろしく依頼制だ。
緊急で依頼をしても、その依頼を受けるパーティーが居なかったり、人が揃わなかったりすれば対応は遅くなる。

もっと言えば、依頼内容の信頼性も関わってくる。
本当に村は占拠されているのか?
村人の安否はどうなのか?
嘘の情報でギルドに負荷をかけるのが目的と思われる可能性は捨て切れない。

「私が今すぐに仲間を集めたとしても、到着は2日後になってしまう」

飛竜を扱える部隊であれば明日の昼に到着も出来るそうだが、申請が面倒過ぎて使われた実績がほとんど無い。

この村に居る賊達が明日まで俺達に攻撃を仕掛けて来ない保証は無い。

「どうにか切り抜けるしか無さそうだな」

フレイルも動いてくれると言ってはいるが、到着を呑気に待っている訳にもいかない。

魔法通信を切ると、マスタングから連絡が来た。

「マスター、村中の魔法反応に動きがあります」

俺は老人に隠れるように話をしてから、駆け足でマスタングに飛び乗った。

探知魔法で周囲を探らせると、確認出来るだけでも50人はいる。

「多勢に無勢、逃げ出したいね」

俺は溜め息をつきながら泣き言を言ってみた。
何も変わりはしないが。

バックミラーを見ながら少し後方へ移動し、マスタングを遮蔽物で隠れるように駐車した。
こうすれば弓や魔法攻撃を受ける方向を減らせるはずだ。

カレンは膝の上にクロスボウを置いて、外からの攻撃に備えて窓の外を睨んでいる。

俺は後部座席に置いていたライフルとショットガンを、すぐに取り出して打てるように移動させた。

「警告、多数の魔力反応が近付いて来ています」

流石に考える時間を与えてはくれないようだ。
マスタングに自動運転を頼み、銃とクロスボウを使えるように窓を開ける。

マスタングが轟音を上げて通りに出ると、民家から賊が出て武器を構えて近付いて来る。

俺はショットガンで近付いて来た男を撃った。
しっかりと胸部に命中し、男は仰向けに倒れた。
一撃でお陀仏になっていると有り難いが、確認をしている時間的な余裕は無い。

賊は次々とマスタングに攻撃を仕掛けてくる。
俺は直ぐに新たな標的を探して、ショットガンで黙らせる。
カレンの方を見るとクロスボウを連射していた。

魔法攻撃を仕掛けている賊を優先的に攻撃しているらしく、マスタングに火球や電撃のような攻撃は来ていない。

「村のあちこちから現れて…射的じゃないんだぞ全く!」

ショットガンに弾を込めては撃つのを繰り返しつつ、村の広場を一周して来た道を引き返すルートを進む。

一旦村の入口まで戻ってフレイルと連絡を取りたいけれど、賊が何処まで追い掛けてくるのか分からない。

マスタングは賊の攻撃に臆する事無く、力強く駆け抜けた。
村の入口まで戻りマスタングを停車させる。
見ると剣や斧を持った賊が束になって追い掛けて来ていた。

俺はマスタングから降りてライフルを取り出し、賊達に向けて連射した。
倒れる賊を目にしても、恐れる事無く突撃して来る賊達は単純に脅威だ。

カレンはクロスボウに矢を装填していた。
攻撃を再開するには、もう少し時間が必要だろう。

「マスター、敵が密集しているのであればガトリングガンが有効です」

マスタングの助言を聞いて実行しようとも思ったが、強力過ぎる武装なので少々気が引けた。

ガトリングガンと火炎放射器は俺にとって秘密の機能、大切な隠し玉なのだ。
バーゲンセールよろしく大安売りするような物では無い。

「一度は試しておいて損はない筈です」

俺は溜め息をついてからライフルを下ろし、マスタングに命じる。

「1秒だけ、ガトリングガンを使う。オートで攻撃をしてくれ」

マスタングから返事が来て、ガトリングガンが現れた。
ゆっくりと回転を始める。
回転速度が安定したら、マスタングは賊達に銃口が向くように位置を調整した。

「カレン、目を閉じて耳を塞いでおいた方が良い」

どんな激しい音が出るかも分からないので、念の為に伝えておいた。

「発射します」

マスタングの音声が流れた後、ガトリングガンの咆哮が耳に直撃した。
超高速で連続する発射音とマズルフラッシュが、俺にとって最強の切札がこのガトリングガンなのだと実感させてくれた。

「おぉ…」

それと同時に、凄惨と言う表現すら適切では無い迄に酷い状態になった賊達が眼前に広がっていた。

音が止んだのを確認したカレンが、賊達のいた場所を見た。
その惨状に言葉を失ってしまっている。

「これは…本当の意味で秘密の機能にした方が良さそうだな」

俺はカレンの方を見ずにボソッと呟いた。
最強の武装だが、これは危険過ぎる。

賊達の大掃除が出来た…そんな黒過ぎるジョークが脳裏をよぎったが、言葉にはしなかった。
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