異世界無宿

ゆきねる

文字の大きさ
上 下
24 / 236
第三章 無宿人の宿命

第二十四話 ギルドは無宿者お断り

しおりを挟む
冒険者ギルドの支店がある町、ミグルンには村を出発した翌日の昼過ぎに到着した。

道中で1日だけ夜営をした訳だが、広大な草原から平原へと移り変わる風景や焚火をしつつ夜空を眺めたりと、少しだけこの世界にも慣れつつある…気がする。

楽しむ余裕が有るのと無いのでは、かなり違いがあるからな。

ミグルン町は建物も道路もしっかりとしていて、活気溢れる商店街もあった。
俺はカレンと一緒に食料を購入すべく、馬車置場を探した。

町に入るとすぐの所に馬車置場があったので、そこに停める事にした。

「お客さん、馬車の停留と管理で1日につき銅貨3枚になりますけど、よろしいでしょうか?」

馬車置場の管理を任されているのか手伝っているのか、少年が近付いて案内をしてくれた。

「見張り番みたいなものですよ」

カレンがそっと教えてくれた。
有人式のコインパーキングと言った所か。
俺は少年に指示された場所にマスタングを停めて、銅貨3枚を手渡した。

商店街へ向かう途中には武器屋に宿屋、ギルドの支店があり様々な種族が買い物や仕事に勤しんでいる。
冒険者ギルドと書いてある看板をカレンが見つけてくれたので、食料を買う前に冒険者ギルドの登録をする事になった。

冒険者ギルド支店の入口を潜ると、受付担当の方なのか犬の耳が付いている人が案内をしてくれた。

「ようこそ冒険者ギルドミグルン支店へ!仕事の依頼ですか?」

影響スマイルとハキハキとした声で、明るい雰囲気で案内所まで話ながら進んだ。

「旅の者でね、冒険者ギルドへ登録をしたくて」

ギルド登録の受付窓口に案内してくれた犬耳の人にお礼を言って、窓口に向かって声をかけた。

「冒険者ギルドへの登録を頼みたい」

窓口の向こうから返事が聞こえ、担当の人…こちらも犬耳だ…が顔を見せた。

「はいはい!新規登録ですね!」

資料一式を持って現れたのは、頭は犬だが身体は人間の亜人?だった。

「担当しますモールと申します」

挨拶をそこそこに、モールの登録手続きを始めてもらった。

手続きは簡単なものだった。
魔法陣の上に立ち検査魔法を受けてから、書類型の検査具で右手の手形を取る。
他には簡単な質疑応答だ。

「検査結果は一刻半程度で出ますのでお待ち下さい、再度お越し頂けるのであれば外出も可能です」

と言う事で、待つのは退屈なので買い物に出掛ける。

俺はまず、カレンの衣服を新調する事に決めた。
流石に出会った時の服装では歩きにくいし、俺の衣服とは別の意味で目立つ可能性があるからだ。

カレンに銀貨を渡して服を見てもらっている間に、俺は武器屋に行ってみる。

この世界の武器屋だ。
どのような武器が売っているのか、男なら気になる所だろう。

武器屋に入ると、思わず溜め息が出てしまった。
レイピア、ハンマー、アックスに2mはある棍棒…
飛び道具まで展示されている。

「いらっしゃい、冒険者かい?」

店の店主だろう男…これはドワーフ族とでもいうのだろうか?…小柄で筋肉質なオジサンが奥からやって来た。

俺はギルドに登録申請中だと伝えつつ、店内の武器を見て回った。
日本刀のような武器は無く、銃も無かった。

店の奥を覗くと、小型の武器が飾られていた。
ナイフやダガー、クロスボウに指輪と言った具合だ。

「こっちのは戦闘用と言うより、狩猟や護身用だな」

ドワーフ族…だと思う事にする…のオジサンが説明してくれた。
冒険者ギルド登録者だと、少しだけ割引もあるらしい。

気になるナイフがあったが、詳細はギルド登録が済んでからにしよう。
また来ると挨拶をして、カレンの元へ向かった。

カレンと合流すると、新しい服に着替えていた。
ウエスタン映画の町娘が着ていそうな服だった。

「似合ってるな」

俺は自分の語彙力の無さに苦笑するしか無かった。

腕時計を見ると、申請してから2時間は経過していた。
一刻半は過ぎたと判断して、ギルドの支店に向かう。


「大変申し訳御座いません。イズミ様の申請は通りませんでした」

「カレン様は、仮登録と言う形で受理されました」

悲しそうに耳が垂れている担当のモールさんの隣に、厳つい亜人がやって来た。

「イズミと言ったな?お前の魔法検査結果では、ギルドへの登録は受理出来ぬ」

男はギルドの管理者らしい。

「…詳細を聞いても?」

俺は検査検査を教えて貰う事にした。


「冒険者ギルドは10年程前から、冒険者達の身元確認をしているのだ」

管理者の話はこうだ。

『冒険者ギルドの質を向上する為、問題行動を起こす登録者を排除する事になった』

その結果、冒険者ギルドへの新規登録には以下の条件が必須となったらしい。

1つ目は、出自の透明化。
これは生まれ育った場所や環境、育ちを把握する為だ。
2つ目は、犯罪歴の有無。
ギルド登録者が犯罪行為をしていたら、ギルドの信頼が失われてしまうからだ。
3つ目は、難民で無い事。
難民はまず生活の安定が最優先になる為、冒険者の前に一般市民のしての登録及び生活を確保して欲しい…だそうだ。
難民ならば、仮登録までは出来るみたいだ。
カレンは戦争で避難をしているだけで、故郷が存在するのでこれに該当したのか。

「イズミよ…お前の出自を確認したが、ギルド上層部や魔術師連盟でも把握していない土地と名前であった。これでは例え紹介や推薦状があっとしても、規則として登録は認められん」

「厳しい言い方になるが、身元の分らぬ無宿者は断る規則なのだ。例外は無い。理解してくれ」

規則は登録は出来無い。
例外は無い。

今の俺は、諦めるしか無かった。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

料理スキルで完璧な料理が作れるようになったから、異世界を満喫します

黒木 楓
恋愛
 隣の部屋の住人というだけで、女子高生2人が行った異世界転移の儀式に私、アカネは巻き込まれてしまう。  どうやら儀式は成功したみたいで、女子高生2人は聖女や賢者といったスキルを手に入れたらしい。  巻き込まれた私のスキルは「料理」スキルだけど、それは手順を省略して完璧な料理が作れる凄いスキルだった。  転生者で1人だけ立場が悪かった私は、こき使われることを恐れてスキルの力を隠しながら過ごしていた。  そうしていたら「お前は不要だ」と言われて城から追い出されたけど――こうなったらもう、異世界を満喫するしかないでしょう。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

転売屋(テンバイヤー)は相場スキルで財を成す

エルリア
ファンタジー
【祝!第17回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞!】 転売屋(テンバイヤー)が異世界に飛ばされたらチートスキルを手にしていた! 元の世界では疎まれていても、こっちの世界なら問題なし。 相場スキルを駆使して目指せ夢のマイショップ! ふとしたことで異世界に飛ばされた中年が、青年となってお金儲けに走ります。 お金は全てを解決する、それはどの世界においても同じ事。 金金金の主人公が、授かった相場スキルで私利私欲の為に稼ぎまくります。

異世界に転生した俺は元の世界に帰りたい……て思ってたけど気が付いたら世界最強になってました

ゆーき@書籍発売中
ファンタジー
ゲームが好きな俺、荒木優斗はある日、元クラスメイトの桜井幸太によって殺されてしまう。しかし、神のおかげで世界最高の力を持って別世界に転生することになる。ただ、神の未来視でも逮捕されないとでている桜井を逮捕させてあげるために元の世界に戻ることを決意する。元の世界に戻るため、〈転移〉の魔法を求めて異世界を無双する。ただ案外異世界ライフが楽しくてちょくちょくそのことを忘れてしまうが…… なろう、カクヨムでも投稿しています。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

処理中です...