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本編
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翌朝、朝のルーティンを済ませ朝市の眩しさから避けるように、夜の匂いが残る店へと足を運ぶ。
カウンター席に座ると、テーブル席に座る小綺麗な男達の疲れた話し声が聞こえる。
「夜明け前に隊長に起こされてよ…現場に行ったら酷い死体が4つと、顔面はグチャグチャ下半身は再起不能なまでに焼け爛れた大男だ」
「ソイツだけは生きててな…本当に酷い状態だったよ」
「頭も下顎も砕けて話が出来る状態じゃ無いが、仲間割れじゃないかって隊長が言ってたな」
「奴等の荷物が焼けているし酒が散らばった形跡と砕けた酒瓶があると来たら、宴やって分前の話で大揉めしたって考えるのが普通じゃないかって」
そんな話を小耳に挟みつつ、店主が持ってきたサンドを食べ始める。
食べ終えたらヴィレーの港町へ向かう馬車を確保しなければならない。
マキは食べているサンドが美味しく感じ、自分が素面になりかけているのを感じつつ、無言でサンドを胃に詰め込む。
朝食の支払い済ませ店を出ると、商人ギルドの建物へと向かう。
ギルドが運営する馬車であれば、ヴィレーに向かう便もあるからである。
マキは馬車置場に立っている管理人にヴィレー行きの馬車を確認する。
「ヴィレーにかい?それなら、明日の昼前に出発するね。到着は出発から3日後の昼前さ…乗るなら銀貨5枚だ、荷物は1人で持ち運べる大きさの荷物が1つまで、食料は各自での準備だぞ?」
「分かった、銀貨は先に渡しておこう」
「払いが良い男は信用出来る!時間に遅れるなよ?時間も守れる男はもっと信用出来る!」
マキは笑顔の管理人へ銀貨を渡すと、家へと歩き出す。
家に戻り一服を楽しみながら寛いでいると、家のドアを控えめに叩く音がする。
「マキ?冒険者ギルドのロレンツだ。アンタ宛の手紙の届けに来た」
村の小さな冒険者ギルドの人間が、一般人相手に手紙の配達をする道理は無い。
煙草の火を消してゆっくりとドアを開けると、まだ顔に幼さが残る優男の困り顔が見える。
「それはどうも…もし時間に余裕があるなら、手紙を読んでくれないか?恐らくだが、達筆過ぎて私には読めない」
手紙を受け取り差出人の名前を確認するも…達筆過ぎで誰だか分からない…読めないと判断し、封を切ってロレンツに手渡す。
「分かりました。差出人はセントアーリア教会のフレアリー様です。内容ですが…」
幼さを残す男の顔が曇る。
「貴方も私も務めを果たさなければならない…どう言う意味なんです?」
聞き終えたマキは机に座ると、小箱から銀貨を数枚取り出しロレンツへ渡す。
「自堕落な生活は止めて、少しは真面目になれって事かな…」
無精髭を撫でつつ駄賃と口止めがてらの銀貨を取り出しロレンツへ手渡すと、手紙を机に置いて帰ってゆく。
ドアに鍵をかけたマキは机を動かし、黒電話が仕舞われている引き出しの1段上の引き出しに手を掛ける。
中は空である。
マキは1度引き出しを閉め、大きく深呼吸をする。
「務めか…分かったよ」
そう呟いて引き出しを改めて開けると、拳銃と予備弾倉が数本とポーチ類が入っていた。
拳銃の隣には引き通しの布製ベルトが付いている腕時計がある。
日付も曜日の表示もない、アラビア数字表記の小振りな腕時計である。
振っても振動が無いのか、竜頭を手巻していると20回程で巻き終える。
机の上に置いてから拳銃を手に取り、弾倉を抜き予備の弾倉と共に机に並べる。
シングルカラムの8連マガジンであり、底部にはマグバンパーが装着されている。
実弾は装填済みである。
銃本体に初弾が装填されていない事を確認してから、改めて拳銃の細部を見る。
レイルの無いマズル周り、鋭い木製チェッカリングがあるグリップ。
マグウェルは付いていない。
大型の前後サイトには小振りなホワイトドット。
スライドストップはロングタイプで、セイフティレバーはアンビ仕様では無い。
スライドはスムースに動作し、トリガーを引いて重さの調整具合を確認すると、大きなため息をつき静かに机の上へ置く。
カウンター席に座ると、テーブル席に座る小綺麗な男達の疲れた話し声が聞こえる。
「夜明け前に隊長に起こされてよ…現場に行ったら酷い死体が4つと、顔面はグチャグチャ下半身は再起不能なまでに焼け爛れた大男だ」
「ソイツだけは生きててな…本当に酷い状態だったよ」
「頭も下顎も砕けて話が出来る状態じゃ無いが、仲間割れじゃないかって隊長が言ってたな」
「奴等の荷物が焼けているし酒が散らばった形跡と砕けた酒瓶があると来たら、宴やって分前の話で大揉めしたって考えるのが普通じゃないかって」
そんな話を小耳に挟みつつ、店主が持ってきたサンドを食べ始める。
食べ終えたらヴィレーの港町へ向かう馬車を確保しなければならない。
マキは食べているサンドが美味しく感じ、自分が素面になりかけているのを感じつつ、無言でサンドを胃に詰め込む。
朝食の支払い済ませ店を出ると、商人ギルドの建物へと向かう。
ギルドが運営する馬車であれば、ヴィレーに向かう便もあるからである。
マキは馬車置場に立っている管理人にヴィレー行きの馬車を確認する。
「ヴィレーにかい?それなら、明日の昼前に出発するね。到着は出発から3日後の昼前さ…乗るなら銀貨5枚だ、荷物は1人で持ち運べる大きさの荷物が1つまで、食料は各自での準備だぞ?」
「分かった、銀貨は先に渡しておこう」
「払いが良い男は信用出来る!時間に遅れるなよ?時間も守れる男はもっと信用出来る!」
マキは笑顔の管理人へ銀貨を渡すと、家へと歩き出す。
家に戻り一服を楽しみながら寛いでいると、家のドアを控えめに叩く音がする。
「マキ?冒険者ギルドのロレンツだ。アンタ宛の手紙の届けに来た」
村の小さな冒険者ギルドの人間が、一般人相手に手紙の配達をする道理は無い。
煙草の火を消してゆっくりとドアを開けると、まだ顔に幼さが残る優男の困り顔が見える。
「それはどうも…もし時間に余裕があるなら、手紙を読んでくれないか?恐らくだが、達筆過ぎて私には読めない」
手紙を受け取り差出人の名前を確認するも…達筆過ぎで誰だか分からない…読めないと判断し、封を切ってロレンツに手渡す。
「分かりました。差出人はセントアーリア教会のフレアリー様です。内容ですが…」
幼さを残す男の顔が曇る。
「貴方も私も務めを果たさなければならない…どう言う意味なんです?」
聞き終えたマキは机に座ると、小箱から銀貨を数枚取り出しロレンツへ渡す。
「自堕落な生活は止めて、少しは真面目になれって事かな…」
無精髭を撫でつつ駄賃と口止めがてらの銀貨を取り出しロレンツへ手渡すと、手紙を机に置いて帰ってゆく。
ドアに鍵をかけたマキは机を動かし、黒電話が仕舞われている引き出しの1段上の引き出しに手を掛ける。
中は空である。
マキは1度引き出しを閉め、大きく深呼吸をする。
「務めか…分かったよ」
そう呟いて引き出しを改めて開けると、拳銃と予備弾倉が数本とポーチ類が入っていた。
拳銃の隣には引き通しの布製ベルトが付いている腕時計がある。
日付も曜日の表示もない、アラビア数字表記の小振りな腕時計である。
振っても振動が無いのか、竜頭を手巻していると20回程で巻き終える。
机の上に置いてから拳銃を手に取り、弾倉を抜き予備の弾倉と共に机に並べる。
シングルカラムの8連マガジンであり、底部にはマグバンパーが装着されている。
実弾は装填済みである。
銃本体に初弾が装填されていない事を確認してから、改めて拳銃の細部を見る。
レイルの無いマズル周り、鋭い木製チェッカリングがあるグリップ。
マグウェルは付いていない。
大型の前後サイトには小振りなホワイトドット。
スライドストップはロングタイプで、セイフティレバーはアンビ仕様では無い。
スライドはスムースに動作し、トリガーを引いて重さの調整具合を確認すると、大きなため息をつき静かに机の上へ置く。
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