雨はやはり憂鬱で死ぬ

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練習

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「とりあえず、私たちは海の向こうを目指してるの。クラハはどうする?」

 ゾーイが言うと、クラハはうーんと唸って考え始める。

「私はもう一人はいやなので……こういうのはどうです? 私が魔法で海の向こうまで連れて行く代わりに、結婚を取り消す手伝いをしてください」

 考えた結果そうなったらしい。
 まあいいんじゃね?
 ゾーイも許可すればだが。

「リュカ、どうする? 私は良いと思うけど」

「ゾーイが良いならクラハの案に乗ろう」

「決まりね。クラハ、よろしくね」 

「はい!」

 でも今日はこの岩で夜を過ごす。
 魚を何匹か釣って食べて、明日ようの食事も釣って明日に備えた。

~~~~

 翌日の朝、しっかり魚を食べてから川を下っていく。
 岩にぶつからないように踏ん張りながら。

 休憩を挟みながら三日くらいでなんとか怪我せずに海へたどり着けた。
 あとは空を飛ぶだけだ。
 しかし空を飛ぶのも練習しないといけない。
 空を飛ぶ魔法を使っても浮くだけで、空中での操作は魔法がかかった本人がやるらしいから。

「では魔法をかけますね。浮いても、立った状態のまま何もしないでください」

 クラハに言われるのでゾーイと一緒に頷く。

「じゃあ行きますね」

 深呼吸をして真剣な眼差しをするクラハ。

「巡られる風よ、我らを運べ!」

 呪文を唱えると、俺とゾーイの体が浮かび上がる。
 言われた通り、立ったまま動かない。
 足が地面についてなくてふわふわするのがすっげぇ落ち着かねぇが。
 でも水の中と同じと考えれば、それほど怖くはない。
 空中は空気があるので溺れるようなことはないし。
 落ちたら死ぬだろうから、そこは魔法使いであるクラハを信じるしかないかな。
 まあこれから行うのは練習なので、落ちても良いような海の上で低空飛行をするらしい。
 クラハの指示のもと、練習だ。

 最初は着地する練習だった。
 浮かんだまま空を飛ぶクラハに手を引かれ、海の上に浮かぶ。
 そしてクラハの指示のもと海面に足をつけようと強く意識。
 魔法はイメージが大切で、魔法の源である魔力は強い念に動かされる……らしい。
 やってみる。
 海面に足つける。足がつくまで降りる。降りろ。海面にに足が届く! 届け!
 うん、降りれねぇ。
 泳ぐ時みたいに足を使ったり、手を使ったりしてみた。

「おわっ!?」

 バランスが崩れて海へダイブしてしまったが。
 くっそ悔しい。
 ゾーイも空中に浮いているのみだ。
 というか全く動いてない。
 眉間に皺を寄せて頑張ってイメージしているみたいだが。

「リュカさん! 大丈夫ですか?」

 クラハが俺を海から引きずり出し、また浮かせた状態にしてくれる。

「問題ねぇ! こんなの簡単だ! すぐ習得してみせる!」

 身近な魔法といえば釣竿なんだから、それを使うときと同じような感覚でやればいい。
 釣り糸で物を切るときも、出来るかなーって試してみて出来たんだ。
 やれると思えばやれるはず。
 海面に足をつけるイメージをする。
 しっかりと脳内で光景や自分が感じるであろう触覚、温度などを鮮明に思い浮かべる。
 ちょん、と爪先が海面についた。
 波が過ぎていって、すぐに触れなくなったが。
 もう少し降りて、そのまま足を海につけ続けることの出来るほどにしてみる。
 ……よし。出来た。

「り、リュカさん凄いです!」

「釣りで鍛えた成果だ」

「あの釣竿ってやっぱり魔法道具なんですね? リュカさんは魔法がかかってるものを操作するのに慣れてるので、これならすぐに空くらい飛べますよ!」

 クラハがそういってくれる。

「なるほど、自分の体を魔法道具と考えればいいのね」

 ゾーイが納得したように呟いた。
 するとゾーイも海面に足をつけることに成功した。
 ゾーイの様子だと、彼女も魔法道具を使ったことがあるらしい。
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