雨はやはり憂鬱で死ぬ

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願いを叶えられる

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 川の流れに逆らい歩いて、どれだけ時間が経ったか。
 そろそろ体力が限界なので、近場の岩に登る。
 この辺は岩が沢山あるから有難い。
 ……この辺は危険な生き物の生息地だったはずだ。
 警戒を高めておかないと。
 それでも腹は減るので、持ってきた魚を千切って釣り針に刺す。
 釣りの時間だ。

~~~~

 手のひらサイズの魚を何匹か釣って、もぐもぐ食べる。
 休憩したから大分体力が回復してきた。
 そろそろ本確定に仕留めに行こうかな。
 ゾーイの願いを俺は叶えられるって知ってもらいたいし。

 さっき釣った大きめの魚の一匹の鰓に手を突っ込んで引き裂く。
 その魚を釣り針に刺してまた川へ流した。
 血の匂いで来てくれればいいんだけど。
 しばらくは何も反応がなかった。

 何度か釣り竿に魚が食いついたが目的の生き物は釣れない。
 もう夜になってしまったのに。
 最悪俺が餌になるから早く釣れてほしい。
 そう思ったとき、強く釣り竿が引っ張られた。
 来たか!?
 思いっきり引っ張り上げる。
 ふふふ、やっと姿を現したな!
 魚に食らいつく生き物の口を全力で抑える。
 こいつは魚ではない。
 ゾーイが子供と一緒に食べたがっていた、ワニという生き物だ。
 噛む力が強いので、口を開けさせてはいけない。
 釣り糸をワニの口にぐるぐると巻き付けた。
 その間も暴れるのでなかなか大変だったが。
 安全が確保されたら、ワニの首を持ち、背中側にそらせる。
 ゴキッと音がなったとたん、ワニは暴れるのをやめた。
 さて、ワニの半分は川に浸かっているから、どのくらいの大きさか確認しておくか。
 ワニを岩の上に持ち上げる。
 重すぎて頭の血管切れるんじゃないかってほど力を使った。
 釣りで筋力を鍛えた俺がこんなに頑張って引き上げるって、どんだけデカいんだ。
 暗い中、ワニに近づいて確認する。
 ……あれ?
 俺と同じくらいの体長じゃね?
 でっかいな。
 これ引き上げられたなら俺の筋力は昔よりずっと鍛えられているんだろう。
 そしてこのデカさなら、ゾーイもさぞ喜んでくれるだろうな。
 子供が生まれた時にまた、ワニをとってきてといいやすくなるはず。
 ……もっとデカいのがよかったかな?
 ちょっと不安になりながらも、とりあえず明日ゾーイのもとへ帰るために体力を回復させようと、ワニの腹を枕にして、俺は岩の上に寝転がる。
 ゾーイの願いはいつかワニパーティーをすることだ。
 ほかにも願いはあると思う。
 俺はその願いを叶えられるだろうか。
 ゾーイが抱きしめてくれたことを思いだす。
 ……母さんの優しさと重なった。
 俺を子供扱いするのは気に食わないが、彼女に関わるのは嫌じゃないな。
 ……裏切らない限りは、彼女と一緒に過ごしてみたい。
 ゾーイが子供に食われるまでは、面倒をみてやろうかと思う。
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