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ワニ
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温泉を拠点にしばらく過ごしている。
足を湯につけながらゆったりと、ゾーイの話を聞く。
「ダーリンったら勇敢で、ワニに立ち向かって行ったのよ! しかも無傷で勝って、私とワニパーティーをしたの。楽しかったわ」
ゾーイが楽しそうに夫であるギルバートの話をしていた。
ダーリンなんて面白い呼び方だな。
俺もゾーイの夫のことダーリンって呼ぼう。
「いつかこの子にも、ワニを食べさせてあげたいのよね」
ゾーイが膨らんだ腹をよしよしと撫でる。
ワニで思い出したが、食べ物を調達すべきだな。
獲った魚はまだ残ってるが、少なくなってきているのも事実。
考えついたら行動だ。
今日は運動の時間にしよう。
「ゾーイ、しばらくこの魚で生きてくれ。俺は飯を獲ってくる」
そう言って俺は小さめの魚一匹以外のほかの魚を全てゾーイに渡した。
「大丈夫なの?」
「飯食うために生きてるようなもんだ。こういうのは得意だぜ?」
「……必ず帰って来てね」
「おう。気が向いたらな」
「気が向かなくてもよ?」
「んー、じゃあゾーイが死ぬ前に帰って来てやる」
「偉そうね。でもお願いよ、帰って来て」
「何度も言うなよ。ちゃんと帰ってくるから」
「私は何度だって言うわ」
「だったら聞かないようにさっさと出かける。じゃあな」
全く、ゾーイはしつこいな。
足を湯から出して釣竿を持つ。
槍も持って行こうとしたが、それだとゾーイが無防備だ。
置いていくことにしよう。
「リュカ」
「あ? なんだよしつこいと食う、ぞ?」
ゾーイが俺をぎゅっと抱きしめる。
は、え、なに?
包まれる温かさに困惑してしまい、俺は固まる。
「もう何も失いたくないの。私より先に死んだりしないで」
「……おう」
離れてもすぐに俺の頭を撫でてくるゾーイの様子のおかしさに、俺はされるがままとなってしまう。
というか、なんか顔が熱いんだが。
ゾーイの顔を見れなくて、俺はそっぽを向く。
「ふふ、顔赤くしちゃって。可愛い」
「うっせぇ!」
どうしようもなく恥ずかしいので、さっさと川の中に入った。
そして俺は川の流れとは逆に進んでいく。
ちらりと後ろを振り返ったら、ゾーイが俺のことを見てくれていた。
……ゾーイに沢山の物を食わせてやらないとな。
俺はさっきまでの恥ずかしさを忘れ、張り切って飯がある場所に向かった。
足を湯につけながらゆったりと、ゾーイの話を聞く。
「ダーリンったら勇敢で、ワニに立ち向かって行ったのよ! しかも無傷で勝って、私とワニパーティーをしたの。楽しかったわ」
ゾーイが楽しそうに夫であるギルバートの話をしていた。
ダーリンなんて面白い呼び方だな。
俺もゾーイの夫のことダーリンって呼ぼう。
「いつかこの子にも、ワニを食べさせてあげたいのよね」
ゾーイが膨らんだ腹をよしよしと撫でる。
ワニで思い出したが、食べ物を調達すべきだな。
獲った魚はまだ残ってるが、少なくなってきているのも事実。
考えついたら行動だ。
今日は運動の時間にしよう。
「ゾーイ、しばらくこの魚で生きてくれ。俺は飯を獲ってくる」
そう言って俺は小さめの魚一匹以外のほかの魚を全てゾーイに渡した。
「大丈夫なの?」
「飯食うために生きてるようなもんだ。こういうのは得意だぜ?」
「……必ず帰って来てね」
「おう。気が向いたらな」
「気が向かなくてもよ?」
「んー、じゃあゾーイが死ぬ前に帰って来てやる」
「偉そうね。でもお願いよ、帰って来て」
「何度も言うなよ。ちゃんと帰ってくるから」
「私は何度だって言うわ」
「だったら聞かないようにさっさと出かける。じゃあな」
全く、ゾーイはしつこいな。
足を湯から出して釣竿を持つ。
槍も持って行こうとしたが、それだとゾーイが無防備だ。
置いていくことにしよう。
「リュカ」
「あ? なんだよしつこいと食う、ぞ?」
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「……おう」
離れてもすぐに俺の頭を撫でてくるゾーイの様子のおかしさに、俺はされるがままとなってしまう。
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そして俺は川の流れとは逆に進んでいく。
ちらりと後ろを振り返ったら、ゾーイが俺のことを見てくれていた。
……ゾーイに沢山の物を食わせてやらないとな。
俺はさっきまでの恥ずかしさを忘れ、張り切って飯がある場所に向かった。
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