6 / 22
あったかぁ
しおりを挟む
それから十日、岩の上でゾーイと過ごした。
やはりここは、沢山の魚が釣れて最高だ。
味はアレだが、食べられなくはない。
でも行動範囲が岩の上だけというのは、悲しい。
飽きたら移動する生活を送っていた俺だが、今は同行者がいる。
どうしたものか。
「なあ、住処移動しね?」
「なんでよ?」
「飽きたから」
「はあ?」
まあ、他にもちょっと理由はある。
ただあそこは、食料が少ないからあまり行きたくはない。
じゃあなんで行くんだって話だが……。
横目でゾーイを見た。
寒いのか四六時中震えてる。
これはいけない。
食事は俺が獲って来れるが、腹の子を産めるのはゾーイしかいないのに。
「……従わないと食うとか言い出しそうね」
「おっ、よくわかったな」
従わなかったら脅そうと思ってたんだ。
十日間一緒に過ごしていて、俺の性格を把握したのか?
すげぇな。
俺はまだゾーイのことよくわからんぞ。
「わかったわ。移動しましょう」
その前に魚を沢山釣り上げておく。
そしてその魚たちは釣竿の糸で縛って持っていくことにした。
「じゃ、行こーぜ」
ゾーイは黙ってついてきてくれる。
記憶が正しければ、右手に見える大き目の岩のところに温泉があったはずだ。
ゾーイとはぐれないように腕を掴み合って、川の中を泳いでいく。
日が暮れる前に着くことが出来た。
その温泉は大きな岩に囲まれていて、川の流れから遮られている。
それでも岩の隙間から濁った川の水が、温泉の中に流れ込んでいるが。
「……ここって」
ゾーイが湯気が上がる温泉に驚いてくれているようだ。
ちょっと嬉しい。
着ていた毛皮を脱いでジャプンと温泉に入る。
あったかぁ。
雨と川の水で冷えていた体が、ジーンとあったまってくる。
ゾーイも恐る恐る足を温泉につけていた。
「……あったかい」
「だろ?」
「なんでここに来たの? あなたのことだし、気分の問題かしら?」
「ん? ゾーイがずっと寒そうだったからだが?」
「……なにそれ」
なにそれってなにそれ。
心配してたのに損した気分になったぞ。
「あなたにも人の心があったのね」
「あ? 俺は生まれた時から人だが?」
「ふふ、わかってるわよ」
ゾーイがクスクス笑っている。
笑っている姿を初めて見たので、少し驚いてしまった。
「リュカ、温泉に連れてきてくれてありがとね」
「……おう」
なんか礼を言われるのって照れ臭いな。
素っ気なく返事をしながら思う。
ゾーイは嬉しそうにしながら毛皮を脱いで、ゆっくりと温泉に入ってくる。
……毛皮で隠れていたが、ゾーイの腹は膨らんでいた。
と言っても記憶の中の母さんと比べれば、まだ小さな膨らみだ。
これからどんどん腹が膨れていくのだろう。
……あと、女の体が男と違いすぎてちょっと戸惑った。
裸の人間なんてこの冷たい雨のなかでは絶対見ないし、母さんでも毛皮を脱いだところなんて見たことがない。
食べる時は味に夢中であんまり覚えてないし。
ゾーイを凝視する。
むっちりとした太もも、丸みを帯びた尻、大きく膨らんだ胸、細くしなやかな首……。
見惚れてしまった。
「リュカ、見過ぎ」
バシャッと顔にお湯をぶつけられる。
見てただけなのになんで?
「やっぱりリュカも男の子なのね」
「男だからなんだよ」
「女の子の体に興味津々じゃない」
「そりゃ初めて見たしビビるだろ」
「……見たことないの?」
「見たことないっていうか、記憶にない」
「へぇ。人を食べた時に女の子はいなかったの?」
「母さん以外はいなかったな」
「お母さんの体は見なかったの?」
「食事に夢中で忘れた」
「……あなたねぇ」
だって美味しかったんだ。
仕方ないじゃん。
「もしかしてだけど、子供の作り方とか知らない?」
「……そういや知らんわ」
知らなくても困らなかった。
どうやって出来んだろう?
腕を組んで目を瞑り考える。
魚みたいに卵……なわけないな。
弟は母さんの股間から出てきたはず。
女がなんかするのか?
子供よ来いっ! 的な感じで出来る?
いやでも、だったら父親なんて存在いらんだろ。
んんー?
「さっぱりわからんな!」
「……なんかリュカが可愛く思えてきたわ」
「あ? なんだテメェ食うぞ」
「急変しないでくれるかしら?」
ゾーイが苦笑いしている。
ゾーイは腹に子供いるし、どうやって出来るか知っているよな。
「で、子供ってどうやって出来んだよ?」
「リュカはまだ知らなくていいの。好きな女の子が出来たら言って。その時教える」
「今教えろよ」
「ダメ。私が危険な目に合いそうで怖いから」
「危険なのか?」
「女の子がリュカと子供作りたいって言ったら良いのよ。でも女の子に無理矢理しちゃダメ。良いわね?」
「……よくわからん」
「とりあえず約束して。女の子に乱暴はしちゃダメよ?」
「んー。わかった。命を狙われない限りは乱暴しない」
「それでいいわ。リュカは意外と優しいみたいだから、大丈夫だとは思うけど」
ゾーイが俺の頭をわしゃわしゃ撫でてくる。
子供扱いされているようでムカついたので、ゾーイの手を振り払って、お湯をかけまくってやった。
やはりここは、沢山の魚が釣れて最高だ。
味はアレだが、食べられなくはない。
でも行動範囲が岩の上だけというのは、悲しい。
飽きたら移動する生活を送っていた俺だが、今は同行者がいる。
どうしたものか。
「なあ、住処移動しね?」
「なんでよ?」
「飽きたから」
「はあ?」
まあ、他にもちょっと理由はある。
ただあそこは、食料が少ないからあまり行きたくはない。
じゃあなんで行くんだって話だが……。
横目でゾーイを見た。
寒いのか四六時中震えてる。
これはいけない。
食事は俺が獲って来れるが、腹の子を産めるのはゾーイしかいないのに。
「……従わないと食うとか言い出しそうね」
「おっ、よくわかったな」
従わなかったら脅そうと思ってたんだ。
十日間一緒に過ごしていて、俺の性格を把握したのか?
すげぇな。
俺はまだゾーイのことよくわからんぞ。
「わかったわ。移動しましょう」
その前に魚を沢山釣り上げておく。
そしてその魚たちは釣竿の糸で縛って持っていくことにした。
「じゃ、行こーぜ」
ゾーイは黙ってついてきてくれる。
記憶が正しければ、右手に見える大き目の岩のところに温泉があったはずだ。
ゾーイとはぐれないように腕を掴み合って、川の中を泳いでいく。
日が暮れる前に着くことが出来た。
その温泉は大きな岩に囲まれていて、川の流れから遮られている。
それでも岩の隙間から濁った川の水が、温泉の中に流れ込んでいるが。
「……ここって」
ゾーイが湯気が上がる温泉に驚いてくれているようだ。
ちょっと嬉しい。
着ていた毛皮を脱いでジャプンと温泉に入る。
あったかぁ。
雨と川の水で冷えていた体が、ジーンとあったまってくる。
ゾーイも恐る恐る足を温泉につけていた。
「……あったかい」
「だろ?」
「なんでここに来たの? あなたのことだし、気分の問題かしら?」
「ん? ゾーイがずっと寒そうだったからだが?」
「……なにそれ」
なにそれってなにそれ。
心配してたのに損した気分になったぞ。
「あなたにも人の心があったのね」
「あ? 俺は生まれた時から人だが?」
「ふふ、わかってるわよ」
ゾーイがクスクス笑っている。
笑っている姿を初めて見たので、少し驚いてしまった。
「リュカ、温泉に連れてきてくれてありがとね」
「……おう」
なんか礼を言われるのって照れ臭いな。
素っ気なく返事をしながら思う。
ゾーイは嬉しそうにしながら毛皮を脱いで、ゆっくりと温泉に入ってくる。
……毛皮で隠れていたが、ゾーイの腹は膨らんでいた。
と言っても記憶の中の母さんと比べれば、まだ小さな膨らみだ。
これからどんどん腹が膨れていくのだろう。
……あと、女の体が男と違いすぎてちょっと戸惑った。
裸の人間なんてこの冷たい雨のなかでは絶対見ないし、母さんでも毛皮を脱いだところなんて見たことがない。
食べる時は味に夢中であんまり覚えてないし。
ゾーイを凝視する。
むっちりとした太もも、丸みを帯びた尻、大きく膨らんだ胸、細くしなやかな首……。
見惚れてしまった。
「リュカ、見過ぎ」
バシャッと顔にお湯をぶつけられる。
見てただけなのになんで?
「やっぱりリュカも男の子なのね」
「男だからなんだよ」
「女の子の体に興味津々じゃない」
「そりゃ初めて見たしビビるだろ」
「……見たことないの?」
「見たことないっていうか、記憶にない」
「へぇ。人を食べた時に女の子はいなかったの?」
「母さん以外はいなかったな」
「お母さんの体は見なかったの?」
「食事に夢中で忘れた」
「……あなたねぇ」
だって美味しかったんだ。
仕方ないじゃん。
「もしかしてだけど、子供の作り方とか知らない?」
「……そういや知らんわ」
知らなくても困らなかった。
どうやって出来んだろう?
腕を組んで目を瞑り考える。
魚みたいに卵……なわけないな。
弟は母さんの股間から出てきたはず。
女がなんかするのか?
子供よ来いっ! 的な感じで出来る?
いやでも、だったら父親なんて存在いらんだろ。
んんー?
「さっぱりわからんな!」
「……なんかリュカが可愛く思えてきたわ」
「あ? なんだテメェ食うぞ」
「急変しないでくれるかしら?」
ゾーイが苦笑いしている。
ゾーイは腹に子供いるし、どうやって出来るか知っているよな。
「で、子供ってどうやって出来んだよ?」
「リュカはまだ知らなくていいの。好きな女の子が出来たら言って。その時教える」
「今教えろよ」
「ダメ。私が危険な目に合いそうで怖いから」
「危険なのか?」
「女の子がリュカと子供作りたいって言ったら良いのよ。でも女の子に無理矢理しちゃダメ。良いわね?」
「……よくわからん」
「とりあえず約束して。女の子に乱暴はしちゃダメよ?」
「んー。わかった。命を狙われない限りは乱暴しない」
「それでいいわ。リュカは意外と優しいみたいだから、大丈夫だとは思うけど」
ゾーイが俺の頭をわしゃわしゃ撫でてくる。
子供扱いされているようでムカついたので、ゾーイの手を振り払って、お湯をかけまくってやった。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
ただのFランク探索者さん、うっかりSランク魔物をぶっとばして大バズりしてしまう~今まで住んでいた自宅は、最強種が住む規格外ダンジョンでした~
むらくも航
ファンタジー
Fランク探索者の『彦根ホシ』は、幼馴染のダンジョン配信に助っ人として参加する。
配信は順調に進むが、二人はトラップによって誰も討伐したことのないSランク魔物がいる階層へ飛ばされてしまう。
誰もが生還を諦めたその時、Fランク探索者のはずのホシが立ち上がり、撮れ高を気にしながら余裕でSランク魔物をボコボコにしてしまう。
そんなホシは、ぼそっと一言。
「うちのペット達の方が手応えあるかな」
それからホシが配信を始めると、彼の自宅に映る最強の魔物たち・超希少アイテムに世間はひっくり返り、バズりにバズっていく──。
☆10/25からは、毎日18時に更新予定!
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!
仁徳
ファンタジー
あらすじ
リュシアン・プライムはブラックハンターギルドの一員だった。
彼はギルドマスターやギルド仲間から、常人ではこなせない量の依頼を押し付けられていたが、夜遅くまで働くことで全ての依頼を一日で終わらせていた。
ある日、リュシアンは仲間の罠に嵌められ、依頼を終わらせることができなかった。その一度の失敗をきっかけに、ギルドマスターから無能ハンターの烙印を押され、クビになる。
途方に暮れていると、モンスターに襲われている女性を彼は見つけてしまう。
ハンターとして襲われている人を見過ごせないリュシアンは、モンスターから女性を守った。
彼は助けた女性が、隣町にあるハンターギルドのギルドマスターであることを知る。
リュシアンの才能に目をつけたギルドマスターは、彼をスカウトした。
一方ブラックギルドでは、リュシアンがいないことで依頼達成の効率が悪くなり、依頼は溜まっていく一方だった。ついにブラックギルドは町の住民たちからのクレームなどが殺到して町民たちから見放されることになる。
そんな彼らに反してリュシアンは新しい職場、新しい仲間と出会い、ブッラックギルドの経験を活かして最速でギルドランキング一位を獲得し、ギルドマスターや町の住民たちから一目置かれるようになった。
これはブラックな環境で働いていた主人公が一人の女性を助けたことがきっかけで人生が一変し、ホワイトなギルド環境で最強、無双、ときどきスローライフをしていく物語!
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
誰もシナリオを知らない、乙女ゲームの世界
Greis
ファンタジー
【注意!!】
途中からがっつりファンタジーバトルだらけ、主人公最強描写がとても多くなります。
内容が肌に合わない方、面白くないなと思い始めた方はブラウザバック推奨です。
※主人公の転生先は、元はシナリオ外の存在、いわゆるモブと分類される人物です。
ベイルトン辺境伯家の三男坊として生まれたのが、ウォルター・ベイルトン。つまりは、転生した俺だ。
生まれ変わった先の世界は、オタクであった俺には大興奮の剣と魔法のファンタジー。
色々とハンデを背負いつつも、早々に二度目の死を迎えないために必死に強くなって、何とか生きてこられた。
そして、十五歳になった時に騎士学院に入学し、二度目の灰色の青春を謳歌していた。
騎士学院に馴染み、十七歳を迎えた二年目の春。
魔法学院との合同訓練の場で二人の転生者の少女と出会った事で、この世界がただの剣と魔法のファンタジーではない事を、徐々に理解していくのだった。
※小説家になろう、カクヨムでも投稿しております。
小説家になろうに投稿しているものに関しては、改稿されたものになりますので、予めご了承ください。
【完結】雨上がり、後悔を抱く
私雨
ライト文芸
夏休みの最終週、海外から日本へ帰国した田仲雄己(たなか ゆうき)。彼は雨之島(あまのじま)という離島に住んでいる。
雄己を真っ先に出迎えてくれたのは彼の幼馴染、山口夏海(やまぐち なつみ)だった。彼女が確実におかしくなっていることに、誰も気づいていない。
雨之島では、とある迷信が昔から吹聴されている。それは、雨に濡れたら狂ってしまうということ。
『信じる』彼と『信じない』彼女――
果たして、誰が正しいのだろうか……?
これは、『しなかったこと』を後悔する人たちの切ない物語。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
お前らは勘違いしている
とらい
ファンタジー
主人公の高木 光輝は某進学校に通っている超エリート間違いなしの秀才である。
運動神経はもちろん、人間関係も完璧のイケメンだった。
そして、東京大学に入って、日本人の中の一握りしか許されない官僚になる試験を受け…
彼の人生の設計図は完璧だった。
だが、それもあることをきっかけにすべて崩れる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる