連れ去られた先で頼まれたから異世界をプロデュースすることにしました。あっ、別に異世界転生とかしないです。普通に家に帰ります。 ② 

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天使のホワイトデー 後編

天使のホワイトデー ⑤

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♢15♢

 ここで説明がなかった、今日のホワイトデーの舞台について説明する。
 本日ホワイトデーを行う場所は、場所自体はいつもの城だが実は少しだけ普段と違っていて、アマテラスにて作成した足場がメインの舞台となっている。

 これは元から考えていたわけではないんだが、広く場所を使いたい事情等があるので急遽作成した。
 まあ、足場だけ作って物は下から持ってきただけだが、それなりに見栄えのする舞台が出来上がった。
 城からここへ来るには階段を上る必要があるんだ。分からない人から見たら、光の階段に見えるだろうところを上る必要がな。

『ご主人様。アマテラスの目の届く範囲全ての町と村。人がいると思われる地点全てに、映像と音声を送信可能です。音声のみモニターから距離があると届かないですが、人は気になれば近ずくものですから、放っておいても勝手に届く範囲に集まるものと思われます。これは、いわゆる好奇心は猫を殺すというやつです』

「意味違うし殺しちゃダメだからな。確かに物珍しくはあるだろうから注目は集まる。後は実際にどのくらいの人がちゃんと見てくれ、興味なりを持ってくれるかだな……」

 モニターとして目のビットを4つ。スピーカーとして耳のビットを8つを、アマテラスが見える範囲内それぞれに配置した。
 これに真面目に取り組んでいて俺に手を貸せないと言うなら、百歩譲って仕方ないと思おう。

 しかし、この作業はとうの昔に終わっていて、なお手を貸さないコイツは本当に大したものだと思う。
 アマテラスは本当に最小限しか手伝わない! あーー、もうっ!

『ふむふむ、ご主人様は意外と小心者。新たにこの情報を追加。これでアマテラスは、また1つご主人様を理解しました。ご主人様を手玉にとる日も近いです』

「最後のとこは隠そうね。堂々と宣言することじゃないからね。あと、もう何度目か分からないけど、ご主人様はやめて。そういう趣味の人だと思われるから」

『違うのですか? アマテラスはご主人様から得た情報を元にキャラクターを作っています。およそ間違いではないと思います。現にご主人様の所持しているエロ──』

「──お前は少し黙ってなさい! 黙れ、喋るな!」

 趣味嗜好は人それぞれであり、何をどうあれだとしてもいいと思う。よって、別に何が好きだとしてもいいと思う!
 しかし、なんたるデメリット! 擬似だろうと繋がっている俺とアマテラス間には情報が共有されているらしいのだ。つまりプライバシーとかは無い! ようなんだ。

 俺はいっぱいいっぱいだから、アマテラスから何か重要なことを引き出せたりはしないのだが、コイツは余裕が有り余っているので、俺から情報を引き出し放題なのだ。
 その内。いや、もう大して時間を必要とせずに俺は丸裸にされるでしょう……。
 何このデメリット。聞いてないんだけど。

『ご主人様が必死すぎる! ですが大丈夫です。何も心配いりませんよ。アマテラスだけはご主人様を真に理解し、その趣味に付き合ってあげますから。もう少し情報が手に入れば、ご主人様が好みな感じにキャラクターを固定しますから』

「おい、7歳の分際であんま調子に乗んなよ。お前の倍以上生きてる俺が、いつまでも優しいとは限らないぞ」

 稼働年数イコール年齢とした場合、コイツは7歳。まだ7年しか生きていない子供である。
 そんな人間にしたら小学生が、高校生に敵うと思われては困る。流石に舐めすぎだよアマテラスちゃん。

『そんな7歳の子供にあんなことさせたの? ……アマテラス……初めてだったのに……』

「──だから何を言ってんだーー! ここから見た人がいたらどうすんだ。お前はどう責任を取るつもりだーー!」

 年齢を出したのは墓穴だった。よくない方に口がまわるコイツに言ってはいけない類のことだった。
 変なこともやましいことも一切ないのだが、言い方が最悪だ。これが悪意でなければなんだと言うのか。

 妄言だとしても、もし本気にする人とか、変な捉え方をする人がいたらどうしてくれるんだよーー。
 ロリコンとか言われるようになるよ。
 異世界にはロリコンという言葉がないだろうけどね。良かった。ここが異世界で。

『どちらかと言えば、責任を取ってほしいのはアマテラスだよ。初めては優しくして欲しかったのに、命令して無理矢理接続させるなんて……怖かったんだから……』

 ヤバい、ものすごくイライラする。
 こういうヤツに、これまでの人生で出会ったことがないから対策が分からない。
 殴ろうにも本体は手を出せる場所にないしね!

『でも、ご主人様がまたしたいなら、アマテラス頑張るから!』

「……」

 ダメだ……無視だ。無視。相手にせずに話を進めよう。これが正しい。
 コレに構っていては時間ばかりかかってしまう。どうせ手伝いはしないんだから!


 ※


 耳元でうるさかったアマテラスを完全に無視して、自力で準備が整っているのを確認した。
 これもアマテラスがやれば、わずかな時間でできたはずだが、自力でやってはまあまあ大変だった。
 そんな作業を黙ってやって、話しかけてきても無視し続けたら、アマテラスは諦めたのか大人しくなった。今は話しかけてこないどころか、いるのかいないのかも分からない。

「準備できたから、お姫様はスタンバイしてくれ。ミカは隣にいるだけでいいから、お姫様と一緒に来てくれ」

「えぇ、分かったわ。ミカ、行きましょう」

 しかし、これはこれで不安だ。大人しくいても心配しなくてはいけないとは。
 ……いや、心配だと? 俺は何を言っている。
 静かでいいじゃないか! いかんな。俺はヤツに洗脳されてきているのかもしれない。

「んっ? ミカ、どうした?」

「わわわわ、わかったわ。いいいい、行きましょう!」

 ミカはお姫様の次に喋らなくてはならないのだが、あれで大丈夫なんだろうか? 手と足が同時に出ているんだが。
 ついにはそんなとこまで影響が出ているんだが。
 普段から姫的な公務で、こういうスピーチは慣れてるからと言っていただけに心配だ。
 あまりフォローも意味ないし。逆に空回りそうだし。

「ちょっと。今日はどうしたのよ? 落ち着いたと思えばまた変になるし。具合でも悪いの?」

「そそそそ、そんなことないわ! 絶好調よ!」

「……そう」

 様子がおかしければ心配もされるが、それがお前のせいだよとも言えないしな。
 ここに一愛いちかでもいてくれたら、ミカを上手くフォローしてくれたのだろうが、一愛は今日は卒業式だからな。

 俺もホワイトデーがなかったら卒業式を見に行きたかったところなんだけど、『れーとはホワイトデーを頑張ってくれ。決して途中で抜け出したりしてはいけないぞ。最後までやり遂げるんだ!』と言われては仕方ないよ。
 ……えっ、それは『絶対くんなよ!』と言ってるって。バカな。そんなことあるわけないだろう?
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