連れ去られた先で頼まれたから異世界をプロデュースすることにしました。あっ、別に異世界転生とかしないです。普通に家に帰ります。 ② 

KZ

文字の大きさ
上 下
62 / 101
天使のホワイトデー 後編

天使ちゃんとお出かけ ③

しおりを挟む
 流石はデパート。見たかったものは全部見れた。逆に全部あり過ぎて迷ってしまうくらいだ。
 マジでどうしよう……と。いや、本当にどうしよう。

 ホワイトデーのお返し、(買うにしても貰った相手が困らず、役立ち、喜ばれる。しかし、それほど気合いが入っていてもいけない)を選ぶのは難しい。
 これはルイさんとルシアさんには申し訳ないが、お菓子になるかもしれない。お菓子なら上の条件に合う。

 気持ちがあればお菓子でもいいのかな?
 実際のところ、その辺どうなの?

 ちなみに、俺が手作りするのはバレンタインでやってるから、ホワイトデーのお菓子を手作りという選択肢はない。
 また俺が作ったやつを貰っても嬉しくないかもだし。
 そうなると、やはりお菓子か。それなりに値段のするやつにするのが一番か。うーむ……。

「パフェーっていうのね。冷たい。甘い。冷たい。サクサク。冷たい。これが層ごとに敷き詰められいる。層ごとに違うのが実に良く考えられているわ。パフェーはスゴいわね!」

「……パフェな。パフェーーじゃない」

 上記のようなぐあいに、俺は今日の成果を確認しながら考え事をし、その俺の前の席ではミカが2杯目のパフェを食べている。

 ひとしきりデパート内を見て回り、そろそろ帰ろうとミカと話していた。
 しかし、結構付き合わせてしまったし、いてくれてかなり助かった。だから、お礼に何かご馳走しようとデパート内の飲食店に入った。
 そこでメニューを見るなり、目をキラキラさせパフェに興味を示して今に至る。『おかわり』と言った時はマジかと思ったよ。マジで。

「こんなのを毎日食べられるなんてなんてズルい!」

 お姫様もチョコレートの時に同じことを言っていた。
 いつでも食べられるというのは、普段は意識した事はないがありがたいことらしい。かと言って、パフェなんて食べなくても生きられるけどね。

「毎日こんなの食ってたら死ぬよ? 甘さとカロリーで死ぬ。よくもこんな甘いものを2杯もムシャムシャできるよね。あれだけ試食しまくった後なのに」

「何を言ってるのよ。もう1種類も食べるわよ?」

「!?」

 メニューにはパフェが3種類ある。天使ちゃんは現在その2種目を食べている。
 更に、この後もう1種類も食べるつもりらしい。化け物め。

「それで決まったの。お返しは」

「迷っている。いや、もう分かんない。考えるほど分かんない」

「悩むのは意識してるからよね。どうでもいいやつは選べないと。そうね、今日見て回った物の中で選ぶとするなら……」

 ミカはスプーンを口に運びながら、おもむろに核心をついてきた。
 俺が黙り込んで考えていたから、いくらパフェに夢中でも分かりやすかったのだろう。

「やっぱり宝石じゃないの? あのピカピカのやつ」

「いくらすると思ってんだ」

「値段の問題じゃないわ。大事なのは気持ちよ!」

「それ、安いものの時に使うやつだよ。どうして宝石に使うんだよ。まず値段も問題だし、そんなん渡す気持ちも問題だよ。俺は普通にやりたいよ」

 一応、通ったところにあったから宝石のショウケースも見てきた。
 ミカの言った宝石とは、お手軽な価格のアクセサリーとは違いガチの宝石だ。

 アクセサリーもお返しの候補としてはあったのだが、やっぱりお返しではない。そう判断した次第です。
 それにアクセサリーなんてあげたことないし。ホワイトデーのお返しすら初めて渡すようなもんだし。

 そして、そんなものを渡されたらどう反応されるのよ。告白と同じというか、バレンタインにチョコ渡してお返しが宝石って! そんなん無いだろ……。ないよね?

「キミ、自分はもうお返しを買ったから余裕だね」

「これはお土産よ。ルシアにもあげるけどね」

「はぁ? じゃあお前、お返しどうすんだよ?」

「作ってもらったんだからアタシも作るわよ。決まってるじゃない」

 ええーっ、あの大量のお菓子は本当にお土産なんだ。てっきりお返しにするんだと思ってたのに。
 品物が決まっていればあとは簡単だったのに。そこからやるとなると大変じゃん。
 作ると言うということは、見て回っている中で何か思いついているのか? パフェを食べている様子からは全く何も感じられないけど。
 
「作ると言うが、何を作るのか決まってるのか? それは自分で出来るのか?」

「──全然! これから考えるわ!」

「ダメだこりゃ……」

 ホワイトデーはバレンタインの轍を踏まないようにしなければならないようです。
 今だから認めるが、バレンタインは準備が遅かった……。

 始まるのも遅かったし、材料から調達したもんだからギリギリだったんだ。
 今回もホワイトデーまで残り9日。材料調達を省けば余裕があるような気もする。
 しかし、1日1日を大事にしていかないと駄目だ。


 ※


「──という訳なんです。ミカに何かお菓子を伝授してやってくだせえ。ほら、見てないでキミも頼んで」

「ルシアにも教えたんだからアタシにも教えて」

「なんだその言い草は! それが頼む側の言うことか! ルイさんだって忙しいんだぞ」

 デパートから帰ってくるなりお隣にお邪魔している。
 何故なら、頼りになる将来の夢はお菓子屋さん。現在はお菓子学校に通う、幼馴染大明神様がおられるからだ。

 ホワイトデーの件を話し、バレンタインのように何かお菓子を伝授してもらおうと考えたのだ。
 正直、俺はあまり乗り気ではないのはナイショだ。

「あっ、ルイにもお土産よ。美味しいからどうぞ」

「……あ、ありがとう」

「そうか。おばさまにも買ってくれば良かったわね。ここはアタシの分から、おばさまにも渡すしかないわね」

「いや、1つ貰えばじゅうぶんだよ。3人家族だから、みんなで食べられるし。で、本題なんだけど……お菓子を作るのは構わない。けど、少し忙しくて時間がとれない」

 ああ、説明がなかったというか俺も知らなかったんだが、出かけにおばちゃんと遭遇した時に聞いた話しだ。
 一愛いちかが間に立ったことで仲良くなったらしいルイとミカ。ほら、俺がひな祭りをすっぽかしたろ? あの時だよ。

 あの日、俺に連絡がつかない一愛は、最初にミカを呼んで来て、2人でそれはもう憤慨しながらルイの家である和菓子屋に、頼んでもあったひな祭りのお菓子を受け取りに来たらしい。
 その際に俺の事をあーだこーだと、おっちゃんおばちゃんに話し、初めから一愛にお祝いのケーキを持ってくるつもりだったルイを連れ、我が家のひな祭りが開催された。

 そういうわけでミカはおばちゃんとも顔見知りだったというわけだ。
 どこで説明しようかと思ってたんだが、タイミングがあってよかった。

「そうなの? それじゃあ迷惑よね。分かったわ。ありがとう。レートに頼るから大丈夫よ」

「──全然大丈夫じゃないよ?! ルイ、忙しいって何? なんとかなんないの?」

 何を言い出すのか……。
 大丈夫ではないからこうして、ホワイトデー前にルイのところに来ているんだよ。
 せめて、お返しを用意してからにしたかったのに。

「うーん、学校のことだからな。ちょっと無理だ」

 そういえば……昨日もルイは制服で電車に乗っていた。あれは遊びに行くとかではなく、学校の用事だったのか。
 土曜日まで学校に行くとか相当忙しいらしいな。
 俺にはとても無理なことだ。絶対にサボる自信がある。

「今の時期だと入試関連とかか? お菓子学校だし、普通の学校とは違うもんな」

「まあ、そんなところだ。来週は入試で休みが入るだろ? その前にってなっててな。とりあえず水曜までは無理だ」

 そうか。来週は受験で在校生は休みのところがほとんどだ。
 俺も学校は火曜までで、あとはホワイトデーまで休みだ。

 ルイのお菓子学校も普通科の授業はあるのだから、試験も普通にあるのだろう。
 試験の日数に違いはあれど来週は休みになるのか。

「ミカ、お菓子はやめたらどうだ」

「お菓子って言ってるのはレートでしょ?」

「「んんっ?!」」

 思わずルイと顔を見合わせてしまう。『どういうことだ?』『わからん』とテレパシーが通じる。
 ここまで話しておいて今更だからね。

「アタシはお菓子を作るなんて言ってない。そりゃあ、ルシアみたいに作れたらいいなー、とは思うけど。学校で忙しいルイに迷惑をかけることもないわ」

 じゃあ、どうするのよ……。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

お花畑な母親が正当な跡取りである兄を差し置いて俺を跡取りにしようとしている。誰か助けて……

karon
ファンタジー
我が家にはおまけがいる。それは俺の兄、しかし兄はすべてに置いて俺に勝っており、俺は凡人以下。兄を差し置いて俺が跡取りになったら俺は詰む。何とかこの状況から逃げ出したい。

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~

シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。 主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。 追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。 さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。 疫病? これ飲めば治りますよ? これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

処理中です...