連れ去られた先で頼まれたから異世界をプロデュースすることにしました。あっ、別に異世界転生とかしないです。普通に家に帰ります。 ② 

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天使のホワイトデー 後編

プロデューサーのターン!

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♢4♢

 日付けは変わらず土曜日。バイトが終わり無事帰宅して、美味しい夕飯のあとだ。
 心優しい俺は怪我をして安静にと言われている、お姫様のところにお見舞いにやってきた。

 その際、本当は枕元に6匹並べる予定だった猫のぬいぐるみは、諸事情により1匹になってしまったが、予定通りにお見舞いの品として献上した。

「ふかふかー、やっぱり可愛いわね。猫」

「ふっ──、おまえのほうが可愛いぜ」

 このように大変お喜びになられているので良かったです。怪我の具合も良いようで、完全復活も近いとのことです。良かったです。

「…………。ねぇ、いい加減に返事したら? ずっと呼ばれてるわよ」

「何の話? ボクには何も聞こえないよ?」

 ミカとのバトルにより負傷したお姫様は、安静のためベッドに横になられており、俺は近くに椅子を持ってきて、それに座り話している。
 あと、いつもはお姫様の部屋の前に兵はいないが今はいる。

 彼女が怪我をしているので、現在警備はお姫様大好きマンたちにより厳重になっている。
 この様子では、俺ですら中に入れなかったかもしれない。
 そんな中、俺がどうやってお姫様の部屋に入ったのかは、俺の使う入り口がお姫様の部屋の中にあるからだ。分からない人は自分で読み返してくれ。

「あんたが来るまで、ずっとあんな感じよ。その上、まだ平然と無視するのね。彼らが何をしたのよ?」

 お姫様の部屋の前からは、『人間……いや、プロデューサーと言ったか。頼む、出てきてくれ!』『説明しろ。何がどうなっている!』『このままでは奥さんに殺される』『あわわわわっ──』とか聞こえるような気もしなくもない。ここき来てからずっとね。

「さぁ、知らないなぁ。仮に知っていてもお姫様には関係ない。だが、少し耳障りではあるね。仕方がないから、ぼちぼち相手をしてやろうかね。えらーい天使さんたちの」

 本来は朝からこうなる予定ではあった。だが、俺がバイトだったから。帰りに遊んできちゃったから。
 時間だけは過ぎ。気が気でない。自分ではどうしようもない、えらーい天使たちは慌てふためいている。

「……悪い顔してるわよ」

「嫌だなー、ボクは良い人だよ? みんな仲良く。これがモットーだからね。まあ、それが出来ないヤツにはちょっとだけ厳しく接するけどね」

 あと、調子に乗ってるヤツらとかね。


 ※


 お姫様の部屋では迷惑になるので、プロデューサーの部屋に移動してきた。
 後ろに、えらーい天使たちを引き連れて。
 しかし、大して広くはないこの部屋に、おっさんたちに集団で雪崩れ込まれても邪魔でしかないので、1人ずつ順番に話をしています。

「──あれは何だ!」

 こいつで……何人目なのかは数えてない。
 半分は過ぎたような気もするし、そろそろ終わりのような気もします。分からないけど、いなくなるまで同じことを繰り返すだけです!

「写真」

 最初はこれまで全員に、ほぼ同じ事を言われているので即答で返す。それも、この後も大して変化のない質問が繰り出されるのがパターン化している。
 よって、俺も同じ事を言う。

 このヒゲ天使(偉い)に言った写真とは、もちろん、ただの写真ではない。
 えらーい天使さんたちが、酒に酔って女の子にセクハラしている(ように見える)写真だ。

 実際のところを酔っ払いの天使たちは覚えていないし、証拠が実際に写真としてある。
 これが全てだ! 何が真実かなどどーーでもいい!
 重要なのは、俺は怒っているという点だ。
 怒らせてはいけないヤツがこの世にはいるんだと、調子こいてる天使たちに教えてやる。

「貴様、いったいどういうつもりで──」

「──思い出だ。良い事も、悪い事も思い出だ。文句があるなら全部買い占めたら? まあ、その度に無限にプリントするけどね。お買い上げありがとうございます! ザマァ──」

 写真の販売方法について説明すると、修学旅行とかのあれを採用している。
 写真が欲しい人は番号を伝えて欲しい写真を買うというやつだ。

 俺の徹夜作業により、姫祭り翌日から姫祭りの写真を城内で販売している。
 写真は3人のカメラマンによって撮影されているので、思い出になる良い写真もあれば、見せられないような悪い写真も存在している。というわけだ。

 ちなみに悪い写真というのは主に、えらーい天使たちのなので、彼らには別に写真のリストを配布した。
 ああ、場内には一応彼らの写真も貼り出してあるけどね。ざまあみやがれクソ天使共が!

「たかが人間の分際で……」

「思い上がるなよ、クソ天使。自分の不逞だろ? それに、誰に口を聞いてるのかなー。言ったろう。俺が責任者だと。俺の指示1つでアレが天国中に拡散してしまうよー。いいのかなー。奥さんとか娘さんとか、どう思うかなー」

「ぐっ……」

「なに、そう青い顔をするな。俺はもう1つの言ったはずだ。みんな仲良くと。何もキミたちを貶めるつもりはないんだ」

「なら、何が目的だ。金か! 地位か!」

「──俺をみくびるな! 金も地位もいらん! 異世界の通貨など必要ないし、地位はこうしてすでにあるからな!」

 おい、『うわぁ……』とか今思ったな?
 でも、本当のことだから! それが現実だから!

「悪魔め……。なら、何が望みだ?」

「とりあえずお姫様に土下座して謝ってこい。話はそれからだ。馬鹿にして申し訳ありませんでしたーって誠意を持って謝ってこい。いいか、頭は上げてくださいって言われるまで上げんなよ? 分かったらさっさと行け! このグズのエロ天使が!」

「それで皆、この部屋から走って出て行くのか!」

「そうだよ、とっとと走れ! はい、次の人ーー」

 と、このようにしてとりあえず全員に謝らせます。
 しかし、これは序の口です。本場はこれからです。


 ※


「こ、困るぞ。あんなものが出回ったら私は終わりだ……」

「嘘つけ。お前には奥さんいないだろ。誰に見られて困んだよ。というか少しは痩せたら? そして奥さんもらったら?」

 ヒゲの後にガリガリ。そしてこのデブ天使で、偉い天使たちは終わりなようだ。
 ガリガリとデブは独身貴族なので、写真程度ではダメかと思っていたのだが、こいつは違うらしい。

「えっ、痩せたらいいのか?」
「えっ、言ってみただけだけど?」

「「……」」

「──何なのだ! 困るのは事実なんだ。表沙汰になれは今の地位から転がり落ちるのは明白。そうなったら奥さんどころの話ではない……」

 ふむ、こいつも地位と金はあるんだ。
 それに反応を見るにモテたいらしいな。
 クズが何を言ってんだと思わなくもないが、使えるならば使う。

「なら、俺に協力しろ。クズでデブでも何とかなるかもしれない」

「酷い……」

「うるせぇ! やんのかやんねーのかだ! まあ、やらないと言っだ場合には、ちょっと口には出せないことになるけどな。お前、金と地位じゃモテないんだろ? なら、うってつけだと思うぜ。良い事をするやつは魅力的に見えるからな」

 ちょっと口には出せないことは、すでに天国内部で準備万端用意されている。
 協力者というか、話を持ちかけてきたナナシくんがスタンバイしている。
 電話一本で終わりになるというわけだね!

「良い事?」

「お前らの地位と金が人の役に立つんだ。見返りは何も無いが、あの人は良い人だというくらいは宣伝してやってもいいぞ?」

「しかし、私1人では……」

「それも分かってる。とはいえ、どうせ他のヤツらは嫌とは言えない。キミには、同じく奥さんがいないガリガリを説得してもらいたい。ヤツめ、生意気に首を縦に振らんのだ。やり方は他にもあるがめんどくさ……同じ天使から言われれば違うだろう。それに、満場一致でないと俺のイメージが悪くなる。上手いこと言ってガリガリにも積極的に協力させろ」

「分かった」

「よろしい。ならば、行きたまえ」

「……どこへ?」

「──お姫様のところだよ! 行って頭下げて来いや! 最後に全員でもう1回謝らせるが、テメェもさっさと行けや!」

 次回は会議室から始まる……。
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