連れ去られた先で頼まれたから異世界をプロデュースすることにしました。あっ、別に異世界転生とかしないです。普通に家に帰ります。 ② 

KZ

文字の大きさ
上 下
46 / 101
天使のホワイトデー

ガールズトーク ②

しおりを挟む

『で、ミカちゃんはどうして、ルシアちゃんからのバレンタインチョコをぐちゃぐちゃにしたの? やっぱりバカなの?』

 ミカちゃんをだいたい把握したので、ここら辺で核心をついてみることにした。
 聞いただけのことしか知らないから、本人から暴挙の理由を直に聞いてみたかった。

『──バカ!? 今、バカって言わなかった!?』

『言ってないよ。それよりはよいえや』

 ミカちゃんは無駄にバカに対する反応が早いよね。
 きっと、自覚があるんだね。つまりバ……。

『……チョコレートは知らなかったのよ』

『それだけかい? 本当はもっと違う理由があるんじゃないの?』

『そうね、アレは結果ね。きっかけは違う。あのね』

 小さい頃。ルシアちゃんのところに来たミカちゃんは、お城に1週間くらい滞在していることがあった。
 何事かを大人たちは話し合い日数を過ごしていたが、子供であるミカちゃんからすれば、泊まりがけで遊びに来た。そんな認識だったらしい。

 その楽しいお泊りも最後になった日。
 もう帰るとなった日に、ミカちゃんは明日も遊ぼうとルシアちゃんと約束した。ミカちゃんは帰りたくなかったし、ルシアちゃんは帰らないで欲しかった。
 小さい2人の思惑は一致し、仲良し2人は考える。

『どうしたら明日も遊べるか。どうしたら帰らなくていいのか。どうしたら、この楽しかった時間が続くのかを考えた。アタシたちなりに一生懸命に考えた』

 明日も一緒だと約束し合ったが、その明日を迎えるためには、自分たちの意見など聞かない、帰る気の大人たちを出し抜くか、心変わりさせなくてはいけなかった。

 そのために2人で画策したのに。上手くいっていたのに。もう少しだったのに。最後に、『ルシアに裏切られた』そうミカちゃんは思ったらしい。
 状況だけを見ればそうなんだろう。でも、ルシアちゃんが自分でやったのではないと思う。でも、小さいミカちゃんにはそうとしか思えなかったんだ。

 この時のことは、ずっとミカちゃんの中に残っている。悲しいやら悔しいやらな思い出として。

『それからは、アタシは学校も勉強も忙しくなって、遊びに行く暇もなかった。いえ……会いたくなかった。そんな中でも、たまに公務でルシアと顔を合わるの。その度に、どうしても裏切られたという気持ちが大きくて、ルシアに噛み付いて喧嘩になってしまう。アタシは悪くない。ルシアが悪い。そんなふうにばかり思っていたら、アタシも気づかないうちに今の状況だった。喧嘩していないともう、どうしていいのかも分からなかった。元がどうだったのかも分からなくなってしまっていた』

『はぁ……』

『──今のため息は何!? アタシ、重要な話してたわよ。核心に迫る重要な話だったわよ』

 そりゃあため息もでるよ。そこでこそ、お姉ちゃんぶりたいなら噛み付かないで、大人な対応をしてあげれば良かったのに。
 まぁ、無理か。ミカちゃんには無理だね。子供だからね。

『にゃんでもないよ。続けてください』

『……けど、本当は昔みたいにしたかった』

『そうだね。仲直りしないとね』

『そのために、どうしたらいいのかが分からない』

 昔と同じというのは無理だろう。だって、もう子供じゃないんだから。未だに子供みたいなことしてるけど、小さい頃とは違うんだから。

 とは言っても、ミカちゃんは子供のままな気がする。対してルシアちゃんは大人な対応ができる娘だと思う。
 なのでルシアちゃんの対応を考えつつ、ミカちゃんにルシアちゃんとの距離感を考えさせなくてはならない。

『とりあえず練習しよっか』

『何の? アタシ、自慢じゃないけど勉強とか練習とか嫌いよ?』

『やらないのならミカちゃんの秘密を暴露するだけだ。いいのかい? 一愛いちかはやると言ったらやるよ。何せ、れーとの妹だからね』

『──何て説得力! 納得するしかないわ』

『まずは謝る練習からやろう。もしくは告白の練習の方がいい? 好きですってルシアちゃんに言う?』

『──言わないわよ! す、好きじゃないし!』

 ミカちゃんは嘘が下手。好きじゃなかったらこんなことしてないじゃない。
 嫌いだったら。どうでも良かったら。別にそのままでいいはずだ。
 それが嫌でなんとかしようとするってことは、好きだからでしょう。まったく。本当に素直じゃないやつだ。

『はいはい。好きじゃない好きじゃない』

『何よそれ!』

『一愛がルシアちゃん役をやるから謝ってみて。できるまでやるからね。はい、はじめ!』

『そんな急に……』

『いいからやれや!』『──はいっ!』

 と言うようなことがあった。この後、繰り返し練習して姫祭りに臨んだのに。
 ダメっ娘はチャンスを台無しにしやがった!


 ※


「嫌いではな…………くもないこともないような気がしないということもないような気がするようなしないような──」

「──だーーーーっ! どうして素直に言えないんだ。さんざん練習しただろうが!」

一愛いちか、それはナイショだって言ったじゃない!」

「今、いい場面だったのに。台無しだ! 本当にれーとみたいだ。ダメなヤツだ! ダメっ娘!」

「練習とは違うのよーー」

 苦労したのに。今、チャンスだったのに。
 ミカちゃんが肝心なところで怖気づきやがった。

「…………」

 ダメっ娘に対してルシアちゃんはやっぱり大人だ。普通はキレるところなのに特に怒りもしないとは……──あれっ、怒りもしないというのは、それはそれでマズくないかな?

 ルシアちゃんはミカちゃんの骨を折ったあとから、特に怒りもしていない。実はこれはもう、見離されているということは……ないよね?

「……る、ルシアちゃん?」

 それか内心は、はらわた煮えくりかえっているんじゃないよね。だとすると、ミカちゃんはピンチなんだけど……。

「一愛。どうしたの?」

「──いや、なんでもないっす」

 見た感じ、普通。しかし、なんか違和感があるような……。
 専門家の人に意見を聞きたいけど、アレは未だに面白楽しくはしゃいでいる。アレも肝心なところで使えない。ダメれーとめ。

「そう。あたしちょっと外すわね」

「うん。ゆっくりでいいからねー。いってらっしゃいー」

 恐ろしいくらい何もなくルシアちゃんは席を立つ。
 これがトイレ休憩だったらセーフ。違ったらアウトだ。しかし──

「練習とは違うのよ。いざとなるとダメなのよーー」

 泣きくずれているダメっ娘。

「おっさん、あんた意外といけるな! 続けてもう一曲どうぞ!」

 面白楽しいお祭り男。
 どうしよう……。
 ダメなやつしかいないんだけど。
 これはあれだな。一愛も向こうにまざろうかな。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結済】隣国でひっそりと子育てしている私のことを、執着心むき出しの初恋が追いかけてきます

鳴宮野々花@書籍2冊発売中
恋愛
 一夜の過ちだなんて思いたくない。私にとって彼とのあの夜は、人生で唯一の、最良の思い出なのだから。彼のおかげで、この子に会えた────  私、この子と生きていきますっ!!  シアーズ男爵家の末娘ティナレインは、男爵が隣国出身のメイドに手をつけてできた娘だった。ティナレインは隣国の一部の者が持つ魔力(治癒術)を微力ながら持っており、そのため男爵夫人に一層疎まれ、男爵家後継ぎの兄と、世渡り上手で気の強い姉の下で、影薄く過ごしていた。  幼いティナレインは、優しい侯爵家の子息セシルと親しくなっていくが、息子がティナレインに入れ込みすぎていることを嫌う侯爵夫人は、シアーズ男爵夫人に苦言を呈す。侯爵夫人の機嫌を損ねることが怖い義母から強く叱られ、ティナレインはセシルとの接触を禁止されてしまう。  時を経て、貴族学園で再会する二人。忘れられなかったティナへの想いが燃え上がるセシルは猛アタックするが、ティナは自分の想いを封じ込めるように、セシルを避ける。  やがてティナレインは、とある商会の成金経営者と婚約させられることとなり、学園を中退。想い合いながらも会うことすら叶わなくなった二人だが、ある夜偶然の再会を果たす。  それから数ヶ月。結婚を目前に控えたティナレインは、隣国へと逃げる決意をした。自分のお腹に宿っていることに気付いた、大切な我が子を守るために。  けれど、名を偽り可愛い我が子の子育てをしながら懸命に生きていたティナレインと、彼女を諦めきれないセシルは、ある日運命的な再会を果たし────  生まれ育った屋敷で冷遇され続けた挙げ句、最低な成金ジジイと結婚させられそうになったヒロインが、我が子を守るために全てを捨てて新しい人生を切り拓いていこうと奮闘する物語です。 ※いつもの完全オリジナルファンタジー世界の物語です。全てがファンタジーです。 ※この作品は小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

〈完結〉妹に婚約者を獲られた私は実家に居ても何なので、帝都でドレスを作ります。

江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」テンダー・ウッドマンズ伯爵令嬢は両親から婚約者を妹に渡せ、と言われる。 了承した彼女は帝都でドレスメーカーの独立工房をやっている叔母のもとに行くことにする。 テンダーがあっさりと了承し、家を離れるのには理由があった。 それは三つ下の妹が生まれて以来の両親の扱いの差だった。 やがてテンダーは叔母のもとで服飾を学び、ついには? 100話まではヒロインのテンダー視点、幕間と101話以降は俯瞰視点となります。 200話で完結しました。 今回はあとがきは無しです。

〈完結〉前世と今世、合わせて2度目の白い結婚ですもの。場馴れしておりますわ。

ごろごろみかん。
ファンタジー
「これは白い結婚だ」 夫となったばかりの彼がそう言った瞬間、私は前世の記憶を取り戻した──。 元華族の令嬢、高階花恋は前世で白い結婚を言い渡され、失意のうちに死んでしまった。それを、思い出したのだ。前世の記憶を持つ今のカレンは、強かだ。 "カーター家の出戻り娘カレンは、貴族でありながら離婚歴がある。よっぽど性格に難がある、厄介な女に違いない" 「……なーんて言われているのは知っているけど、もういいわ!だって、私のこれからの人生には関係ないもの」 白魔術師カレンとして、お仕事頑張って、愛猫とハッピーライフを楽しみます! ☆恋愛→ファンタジーに変更しました

処理中です...