連れ去られた先で頼まれたから異世界をプロデュースすることにしました。あっ、別に異世界転生とかしないです。普通に家に帰ります。 ② 

KZ

文字の大きさ
上 下
44 / 101
天使のホワイトデー

姫たちのターン! ②

しおりを挟む
 女の子が3人も集まれば勝手に恋の話になる……普通は。
 しかし、この場にいるのは恋とは縁遠そうな姫。箱入りというか、城入りのお姫様である。

 かく言う一愛いちかも、恋よりどちらかといえば、カードゲームの話とかしたい。
 トップメタを効率よく狩る方法とか、最新弾の使いたいカードの話とかしたい。

 ──まあ、姫相手では無理だけどね。知ってる。
 なので、テンプレ通りに恋の話をふる。

「さて、写真も撮ったしお腹も満たされた。ここからは、優雅にグラスを傾けながら、本来女子のするべき話をしようじゃあないか」

 テーブルには変わらずに3人。一愛に、ルシアちゃん、ミカちゃん。
 本当はミルクちゃんも参加して欲しいのだが、彼女はれーとの企みに参加したダメージが意外とあったらしく、ダウンしてしまった。

『ちょっと休んできますね。ちょっとだけ……』

 こう言い残して、休憩しに行ってしまった。
 まったく。けしからん身体つきをしているくせに情けない。
 あれが一愛にあったなら、もうスゴいことになっていただろうと確信できるほどなのに。

「急に何よ。パーティの席でする話なら、政治の話か、どうでもいいような自慢話とかじゃないの?」

「うん、すごい落差。政治とどうでもいい話が一緒の括りでビックリだよ。というか、ミカちゃんの中ではその2つしかないんだね」

「ミカの言う通りよ。パーティでする話なんて、そんなもんよ。他があるとするなら、後はご機嫌とりね。表向きはニコニコして聞いてるけど、内心は『ウザッ』って思ってるわ」

「ルシアちゃんも本音が出すぎだよ。大変なんだね、姫って。もっと夢があるんだと思っていたよ」

 想像以上にこいつらダメだ。
 恋なんていったら『鯉?』って言いそう。

「それは姫一般的なパーティの話であって、今日は違うのだよ。今するべきは恋の話だよ。恋バナなんだよ!」

 しかし、一愛はできる妹。ダメなれーとなどとは違い、得るべき情報は手に入れる。
 ここは攻めて情報を引き出す!

「鯉?」「コイとは?」

「……マジか」

 今さ、どっちかは魚ですらなくなかった?
 本当に。そこから? そこから説明しないといけない?

「魚ではないよ」

「あぁ、そうなのね」

 ルシアちゃんが魚だと思っているのか。
 つまり、ミカちゃんが問題外か。

「アタシにも教えなさいよ。コイって何なのよー」

 これでは恋なんて話をふるだけ無駄かもしれない。
 生きてきた世界が違うということは、こうも違うということなのか。だが、言うだけは言ってみよう。

「好きな人。あるいは気になる異性。恋バナとはそういうことを話すんだよ」

「「…………」」

 おや、2人とも黙ってしまった。まさか、この沈黙は……。
 これは。もしかすると。いるのか? 好きな人。
 城入りだとばかり思っていれば、一愛より進んでいたりするのか。

「お、お付き合いしたいとか。将来的には結婚まであるとか。そういう人が、もしかすると、お2人には、いるのかな?」

「「…………」」

 うっかり踏み込んでしまったけど、『いる』って言われたらどうしよう。『れーと、残念だったね。ざまぁ』って言えばいいのかな。
 もしくは、『れーと、貴様にはお姉ちゃんがいる。だから大丈夫だ』かな。

 一愛としてはお姉ちゃんが第一候補ではあるが、それは一愛の意見であって、当人たちの意思は含まれていない。
 あと、れーとにお姉ちゃんは勿体ないと若干思っていたりもする。

「一愛。好きな人と付き合うって何? 結婚って決まってるんじゃないの?」

「うん。親が決めるんじゃないの?」

 ……あー、そういうパターンだったか。
 いつの時代なんだよ、ここ。
 そして本当に姫なのかよ。マンガかよー。

「付き合うっていうのは、交際するってこと。恋人と言えば伝わるかな?」

「コイ」「──ビト」

「おい、ちょっと待て? ルシアちゃんは分かってるな。今わかっていてミカちゃんに乗っかったな?」

 さては、ルシアちゃんは恋も分かっていたな。
 知らんぷりするということは、聞かれては困るという事か。ないとは思うが……。

「質問です。れーとのことが好きである。もしくは、気になっている。マルかバツか」

 直球でいこう。そしてマルだった場合は、聞かなかったことにしよう。
 バツだった場合は、その言葉を信じられはしない!

「──それはない」

「──うん、ないわね。だってあれよ」

 アレとは、未だに騒ぎの真ん中にいる、ダメなヤツのことだ。その勢いは衰えるどころか増している。
 これはヤツのための情報収集だったのだが、あんな姿を見ると『一愛は何やってんだろ』と思ってしまいます。

「よく分かりました。じゃあ、ミカちゃんはルシアちゃんが好きなの?」

「な、な、な、な、な、何を言ってるの!? 好きなわけないじゃない!」

「うわぁ……冗談のつもりだったのに。ミカちゃん、反応がマジすぎるよ。で、ルシアちゃんはどうなの? ミカちゃんが好きだってよ」

 この本気の反応を見ると、れーとが眼中にないと分かる。ミカちゃんがルシアちゃんを好きなのは、傍目からも非常に分かりやすいが、ルシアちゃん側からはよく分からない。
 こちらも、恋バナついでに確かめてみよう。

「好きよ。当たり前でしょ」

「「えぇーーーー!?」」

 れーと、ごめんね。まさかの事実が判明してしまったよ。最初から貴様の入り込む余地はなかったようだ。
 ルシアちゃんは諦めて、お姉ちゃんルートに入るように頑張ろうね。一愛も応援してあげるから。

「2人して何で驚くのよ。嫌いな方が良かったの?」

「──それは困る! いや、好きなのも困る……」

「一愛のことも好きよ」

「──えぇ?! 一愛のことも好きなの。アタシじゃないの!?」

 あー、またこういうやつか。
 好きの意味が違うのか。少し焦ったよ。

「ミカちゃん。落ち着きなさい。ルシアちゃんの好きは、友達として好きだということだよ。友達として」

「……友達。そうよね。うんうん、そうよ!」

「はい、よろしい」

 ガールズトークのかいが……何でもない。何でもないんだよ。何でもないと言っているではないですか。
 この話を掘り下げようものなら容姿しないよ? わかったね。

「ねぇ、ミカはあたしが嫌いなの?」

 むっ──、これは思わぬ形で確信に迫ってきた。
 こうなると口を挟むに挟めない。黙ってミカちゃんを見守るしかない。

「ルシアのことを……」

 頑張れ。私も好きだと言うんだ。それで万事上手くいく。
 好きだから、ついちょっかいかけてしまうんだと言うんだー。

「そう、あたしのことを」

 ルシアちゃんは言ったぞ。
 ごめんなさいとも。好きだとも。
 それはミカちゃんのことを想っているからだ。
 だから、ミカちゃんもちゃんと言うんだ。

「嫌いではな…………くもないこともないような気がしないということもないような気がするようなしないような──」

「──だーーっ! どうして素直に言えないんだ。さんざん練習しただろうが!」

「一愛、それはナイショだって言ったじゃない!」

「今、いい場面だったのに。台無しだ! 本当にれーとみたいだ。ダメなヤツだ! ダメっ娘!」

「練習とは違うのよーー」

 はぁ……。ダメだなぁ。ミカちゃんはダメだ。ごめんなさいも言えないし、好きですも言えない。
 仲良くしたいくせに、仲良くしてくれとは言えない。困った娘だ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結済】隣国でひっそりと子育てしている私のことを、執着心むき出しの初恋が追いかけてきます

鳴宮野々花@書籍2冊発売中
恋愛
 一夜の過ちだなんて思いたくない。私にとって彼とのあの夜は、人生で唯一の、最良の思い出なのだから。彼のおかげで、この子に会えた────  私、この子と生きていきますっ!!  シアーズ男爵家の末娘ティナレインは、男爵が隣国出身のメイドに手をつけてできた娘だった。ティナレインは隣国の一部の者が持つ魔力(治癒術)を微力ながら持っており、そのため男爵夫人に一層疎まれ、男爵家後継ぎの兄と、世渡り上手で気の強い姉の下で、影薄く過ごしていた。  幼いティナレインは、優しい侯爵家の子息セシルと親しくなっていくが、息子がティナレインに入れ込みすぎていることを嫌う侯爵夫人は、シアーズ男爵夫人に苦言を呈す。侯爵夫人の機嫌を損ねることが怖い義母から強く叱られ、ティナレインはセシルとの接触を禁止されてしまう。  時を経て、貴族学園で再会する二人。忘れられなかったティナへの想いが燃え上がるセシルは猛アタックするが、ティナは自分の想いを封じ込めるように、セシルを避ける。  やがてティナレインは、とある商会の成金経営者と婚約させられることとなり、学園を中退。想い合いながらも会うことすら叶わなくなった二人だが、ある夜偶然の再会を果たす。  それから数ヶ月。結婚を目前に控えたティナレインは、隣国へと逃げる決意をした。自分のお腹に宿っていることに気付いた、大切な我が子を守るために。  けれど、名を偽り可愛い我が子の子育てをしながら懸命に生きていたティナレインと、彼女を諦めきれないセシルは、ある日運命的な再会を果たし────  生まれ育った屋敷で冷遇され続けた挙げ句、最低な成金ジジイと結婚させられそうになったヒロインが、我が子を守るために全てを捨てて新しい人生を切り拓いていこうと奮闘する物語です。 ※いつもの完全オリジナルファンタジー世界の物語です。全てがファンタジーです。 ※この作品は小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

〈完結〉妹に婚約者を獲られた私は実家に居ても何なので、帝都でドレスを作ります。

江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」テンダー・ウッドマンズ伯爵令嬢は両親から婚約者を妹に渡せ、と言われる。 了承した彼女は帝都でドレスメーカーの独立工房をやっている叔母のもとに行くことにする。 テンダーがあっさりと了承し、家を離れるのには理由があった。 それは三つ下の妹が生まれて以来の両親の扱いの差だった。 やがてテンダーは叔母のもとで服飾を学び、ついには? 100話まではヒロインのテンダー視点、幕間と101話以降は俯瞰視点となります。 200話で完結しました。 今回はあとがきは無しです。

完結【真】ご都合主義で生きてます。-創生魔法で思った物を創り、現代知識を使い世界を変える-

ジェルミ
ファンタジー
魔法は5属性、無限収納のストレージ。 自分の望んだものを創れる『創生魔法』が使える者が現れたら。 28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。 そして女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。 安定した収入を得るために創生魔法を使い生産チートを目指す。 いずれは働かず、寝て暮らせる生活を目指して! この世界は無い物ばかり。 現代知識を使い生産チートを目指します。 ※カクヨム様にて1日PV数10,000超え、同時掲載しております。

〈完結〉前世と今世、合わせて2度目の白い結婚ですもの。場馴れしておりますわ。

ごろごろみかん。
ファンタジー
「これは白い結婚だ」 夫となったばかりの彼がそう言った瞬間、私は前世の記憶を取り戻した──。 元華族の令嬢、高階花恋は前世で白い結婚を言い渡され、失意のうちに死んでしまった。それを、思い出したのだ。前世の記憶を持つ今のカレンは、強かだ。 "カーター家の出戻り娘カレンは、貴族でありながら離婚歴がある。よっぽど性格に難がある、厄介な女に違いない" 「……なーんて言われているのは知っているけど、もういいわ!だって、私のこれからの人生には関係ないもの」 白魔術師カレンとして、お仕事頑張って、愛猫とハッピーライフを楽しみます! ☆恋愛→ファンタジーに変更しました

処理中です...