27 / 101
天使のホワイトデー
ひな祭りの用意。異世界編
しおりを挟む
♢15♢
お姫様のお願いというのは他でもない。異世界でもひな祭りをやりたいらしい。
我らが姫にプロデューサーとしてお願いされてしまったからには、誠心誠意力一杯頑張らせていただく所存であります! ……であります……。
そんなわけで、ひな祭りの用意は異世界編へと突入した。そのためにまず最初に俺がやる事は、そのための各方面への協力依頼だ。
これは俺の仕事なので、その間にお姫様はルイのところにチョコレート修行にいかれた。
きっと今より強くなって、お姫様は帰ってくるはずだ!
──と冗談はさておき、まずは近場から行こう。
「城門の修繕は一旦中止だ。これを作ってくれ」
まずは一番近くのところからだ。
城門の修繕をしている大工集団ゴリラ組に、あるものの建設を頼む。
図面は用意してきたので、あとはお願いするだけだ。
「急にそんなこと言われてもなぁ……。こっちも職人なんで、中途半端な仕事はできんのですよ」
それはそうか。『はいそうですか』とはいかないか。
職人気質はいい事だし大事なんだろうが、今は必要ない。これは姫からの、お願いとは名ばかりの命令なんだから。
「これはお姫様直々の依頼なんだけどなーー。しかし、ニックさんが嫌だと言うなら仕方がない、他所に頼むよ。邪魔したね。チミたちは城門の修繕を、予定通りに進めてくれたまへ。仕方がないね。こればかりは職人気質というやつだからね。とはいえ急ぎだし、姫からの直々のお願いだし。ガチで嫌だけど悪魔な業者に頼むかなーー」
なので、俺は『うん』と言わせないといけない。従わせなくてはいけない。
まあ、姫の威光があれば簡単なんだけどね。見てろ。
「──待ってくれ!」
にやり──
「おや、まだ何か? 私は悪魔な業者にこれを依頼しに行かなくてはいけないのだが?」
「──やらせてください! お願いします!」
「最初からそう言ってよー。アンチたちも信者だけど、ニックさんたちもお姫様好きだよねー。知ってた」
信者は皆チョロい。ありがとうございます!
大工集なら問題なく仕上げてくれるな。
よし、台はこれでいい。次は小物関係か。
※
「いらっしゃいませ! 玩具とご一緒に玩具はいかがですか!」
「うーん、なんか違うから、もう1回お願いします」
……今のでもダメなの?
これ、もうかなりの回数やってるよ。
やっぱり一周回って何がダメなのかわからないよ。なにより今じゃなくてはいけないのかな、これ。
つーか、俺はコンビニで働くの?
「いや、ミルクちゃん。俺は接客の練習しに来たわけじゃないんだよ?」
次は、ひな祭りの小物関係と衣装関係をミルクちゃんに頼みにきた。
そしたらミルクちゃんのコンビニは、中はもう出来上がっていて、品物も納得の配置となっている。流石だわ。
でだ。『これは今日は手伝うことはないなー、やったぜ!』って思ったら、なぜだがコンビニ店員的な挨拶練習をさせられている。
「たまにしか手伝いに来ないくせに口ごたえですか? ……はぁ……」
「お姫様のお願いなんだよ。コンビニはまた後日ということで! こっちを何とかお願いします!」
「わかりました。姫様のお願いなら断れないです。似たようなものでよければ期日までにご用意しますと、そうお伝えください」
これも何故だか、悪魔にボラれないミルクちゃん。
彼女なら悪魔たちにも上手に交渉できるんだろうし、そのルートがあれば、急ぎの今回も品物を用意してくれるだろう。
それがなくても商売人として優秀だし。
最悪、似たものだろうとあればいいんだ。あれば!
そうなっても、ないものはあるものを使えばいいし、その方が異世界らしいし。
ひな祭りっぽい雰囲気が出ればいいんだ。なんでも!
「それとミルクちゃんも参加な! お姫様が呼んでるからね。着の身着のままでいいので3月3日にゴンドラのところに集合ね。時間は決まったら、また連絡するから!」
「はぁ……。ところでプロデューサーさん。ひな祭りとは何なんですか?」
「姫のための祭だ。姫による姫のための祭だ」
これで、ひな祭りをするためのお願いは完了と。
細かいところはイケメンがやるというか、俺は忙しいのだ。細かいことは全部、イケメンに押し付ける!
※
さて、ここからはお姫様には頼まれてはいない。俺の独断で勝手にやる。
しかし、今回の主役は姫だからさ。そして姫は2人いるし、どうせならダブルでお雛様してもらおうというわけだ。だから、お節介を焼く。
『天使のところに行きたい。どうすりゃいい?』
俺の考えるひな祭りには、ミカにも連絡つけなくてはならない。だが、直接ミカのところに行こうにも何も分からないので、暇そうな方の悪魔に聞いてみた。
『小僧。貴様は自分の立場を理解しているのか? 此度の件、天使の側に小僧の味方はいない。のこのこ出て行くのは勝手だが、命の保証は無いぞ』
『セバスに言われなくてもそのくらい分かってますー。だがね、何も使いとして行くわけじゃない。友達として怪我のお見舞いに行くだけだ!』
『その理屈が通じればいいがな。それに、人間を天使たちが自分たちの領地に入れるかも分からんぞ。門の前で射殺という可能性も大いにある』
この悪魔執事は仰々しく考えすぎなんだ。いくら何でも射殺とかないわー。
そんなん天使じゃないじゃん! そして門って!
天国への門があるとでも言うのかい? 笑っちゃうわ。はっはっは──
「止まれ! それ以上一歩でも進めば撃つ。ここがどこだか分かっているのか……人間」
少なく見積もっても100人くらい。それだけの数の天使による、天使ビームが俺を狙っている。
フラグを自ら作り、回収するということをしてしまったらしい。
ないと思った天国への門は目の前にあるし、ないと思ってたのに今にも撃ち殺されそう。
セバスの言ったように命の保証は無かった。そして天国への門はあった……。
「貴様、どこから来た。迷い込んだなどとは言うまい」
「間違えました。お騒がせして申し訳なかったです。ボク、──帰ります!」
撤退! 即ゴンドラまで撤退!
実は、城から下にいくゴンドラは上にもいけたんだ。セバスに教えてもらったように、ゴンドラの上へのボタンを押して着いた先はここ。
謎の巨大な門の前だった。きっとあの向こうは天国に違いない。そんな気がします!
「──動くな!」
撤退のために一歩踏み出したところに、ピンポイントで天使ビームが飛んできて、雲のような足場を貫通したーー! ギャーーッ!
「あぶねーな、当たったら死ぬぞ! というか、一歩も前に進んでないのに撃ちやがったな。嘘つき! 天使の嘘つき!」
「みすみす逃すわけがあるまい。捕らえろ! ここへ来た方法を聞き出す。その後は審判を仰ぐ」
「また審判だとぅ!? ふざけんなよ。2日続けてそんなことされてたまるか! モンスターペアレントじゃなくて……おっさんじゃなくて……何かよくゲームに出てきそうな名前の……──ミカエルだ! ミカエルさんを呼べ!」
とっさに名前が出てこなかった。
俺は自分で思ってる以上に、かなりギリギリの状態だからだろうね。かなりテンパってるね。
「……大天使様だと。ますます怪しい! やはりこの場で射殺しろ!」
「──なんでだよ! 話くらい通せよ。聞くだけ聞いてよーー。ミカエラさんのお友達の零斗くんが遊びにきています。って言ってきてよーー」
「姫の友達だと? よくもまあ、ぬけぬけとそんな嘘をつくものだ。構わん。射殺を許可する。この場で始末しろ」
なぜだーー! どうしてこの天使は何一つ信用しない!
警備がキツすぎる。もれなく全員射殺してんじゃねーの!? 最初の捕らえろは嘘なんだったのか!?
『お待ちなさい』
ここが天国だからだろうか。天から女の人の声がする。
空を見上げても誰もおらず、だが全員に声は届いているようだ。完全に空から聞こえてきている。
「ガブリエル様……」
うわぁ……。
また聞いたことある天使な名前だ。
天使はだいたい、なんとかエルって付くよね。
『その場での殺害など認められません。おやめなさい』
マジ天使。どんな人か知らないが、ガブリエルさんマジ天使だ。俺を助けてくださるらしい。
この頭固い天使とは比べられないくらいに天使。
「──しかしですね。明らかな不審者! 第一、人間がこんな場所に至る経緯が不明です。人間が大天使様の名前と姫様の名前も知っているなどありえない。あまつさえ友達などと。この場を預かる者としては──」
──そこで食い下がんなよ! ガブリエルさんの言うこと素直に聞けよ!
なんなんだこの野郎は。羽生えてれば偉いのか? よく見ればイケメンだし。死ねばいいのに。
『新参者の私の言うことなど聞けないというわけですね』
「──け、決してそのようなことは!」
……新参者? 超聞いたことある天使なのに? もしかすると2代目とか3代目とか付くのか?
あるいはガブリエルという天使は、この世界では若い人なのか? 若い女の人の声だし。
『なら、やめなさい。貴方は優秀な生徒でしたよ。真面目で誠実な。しかし、いかんせん頭が固い。人間が何の理由も無しにこんな場所にはこない。これない。ミカエラを敬愛する気持ちは分かりますが、それで物事を決めつけてはいけません。分かりましたか?』
「申し訳ありませんでした。天使長様」
なに、天使長だと……。
ガブリエルさんが天使長。
ミカが恐れていた方だろうか?
それとも天使長は複数いるのか?
『白夜 零斗。この門は貴方のためには絶対に開きません。門から中へは絶対に入れない。分かりましたね? では帰りなさい』
「……なんで……俺の名前……」
疑問とかが一瞬で、なんで名前を知られているのかに切り替わる。で、完全にフリーズする。
だっておかしいだろ。俺は名乗ってない。
『おかしなことを言いますね。先ほど自分で名乗っていたではありませんか。話は終わりです。私は授業がありますので失礼します』
いや、警備天使とのくだりで名乗っていたのか?
テンパっていて確信がないが、そうとしか思えないもんな。そうだとしよう。
「じゃあ、ガブリエルさん。ミカエルさんかミカエラさんに取り次いでもらえますか? ………………。」
そう言ってみても、天から声が聞こえてくることはなかった。何度言っても、何を言ってもだ。
門の前に残る融通が利かない警備の天使では話にならないので、この日は諦め一時撤退することにした。
お姫様のお願いというのは他でもない。異世界でもひな祭りをやりたいらしい。
我らが姫にプロデューサーとしてお願いされてしまったからには、誠心誠意力一杯頑張らせていただく所存であります! ……であります……。
そんなわけで、ひな祭りの用意は異世界編へと突入した。そのためにまず最初に俺がやる事は、そのための各方面への協力依頼だ。
これは俺の仕事なので、その間にお姫様はルイのところにチョコレート修行にいかれた。
きっと今より強くなって、お姫様は帰ってくるはずだ!
──と冗談はさておき、まずは近場から行こう。
「城門の修繕は一旦中止だ。これを作ってくれ」
まずは一番近くのところからだ。
城門の修繕をしている大工集団ゴリラ組に、あるものの建設を頼む。
図面は用意してきたので、あとはお願いするだけだ。
「急にそんなこと言われてもなぁ……。こっちも職人なんで、中途半端な仕事はできんのですよ」
それはそうか。『はいそうですか』とはいかないか。
職人気質はいい事だし大事なんだろうが、今は必要ない。これは姫からの、お願いとは名ばかりの命令なんだから。
「これはお姫様直々の依頼なんだけどなーー。しかし、ニックさんが嫌だと言うなら仕方がない、他所に頼むよ。邪魔したね。チミたちは城門の修繕を、予定通りに進めてくれたまへ。仕方がないね。こればかりは職人気質というやつだからね。とはいえ急ぎだし、姫からの直々のお願いだし。ガチで嫌だけど悪魔な業者に頼むかなーー」
なので、俺は『うん』と言わせないといけない。従わせなくてはいけない。
まあ、姫の威光があれば簡単なんだけどね。見てろ。
「──待ってくれ!」
にやり──
「おや、まだ何か? 私は悪魔な業者にこれを依頼しに行かなくてはいけないのだが?」
「──やらせてください! お願いします!」
「最初からそう言ってよー。アンチたちも信者だけど、ニックさんたちもお姫様好きだよねー。知ってた」
信者は皆チョロい。ありがとうございます!
大工集なら問題なく仕上げてくれるな。
よし、台はこれでいい。次は小物関係か。
※
「いらっしゃいませ! 玩具とご一緒に玩具はいかがですか!」
「うーん、なんか違うから、もう1回お願いします」
……今のでもダメなの?
これ、もうかなりの回数やってるよ。
やっぱり一周回って何がダメなのかわからないよ。なにより今じゃなくてはいけないのかな、これ。
つーか、俺はコンビニで働くの?
「いや、ミルクちゃん。俺は接客の練習しに来たわけじゃないんだよ?」
次は、ひな祭りの小物関係と衣装関係をミルクちゃんに頼みにきた。
そしたらミルクちゃんのコンビニは、中はもう出来上がっていて、品物も納得の配置となっている。流石だわ。
でだ。『これは今日は手伝うことはないなー、やったぜ!』って思ったら、なぜだがコンビニ店員的な挨拶練習をさせられている。
「たまにしか手伝いに来ないくせに口ごたえですか? ……はぁ……」
「お姫様のお願いなんだよ。コンビニはまた後日ということで! こっちを何とかお願いします!」
「わかりました。姫様のお願いなら断れないです。似たようなものでよければ期日までにご用意しますと、そうお伝えください」
これも何故だか、悪魔にボラれないミルクちゃん。
彼女なら悪魔たちにも上手に交渉できるんだろうし、そのルートがあれば、急ぎの今回も品物を用意してくれるだろう。
それがなくても商売人として優秀だし。
最悪、似たものだろうとあればいいんだ。あれば!
そうなっても、ないものはあるものを使えばいいし、その方が異世界らしいし。
ひな祭りっぽい雰囲気が出ればいいんだ。なんでも!
「それとミルクちゃんも参加な! お姫様が呼んでるからね。着の身着のままでいいので3月3日にゴンドラのところに集合ね。時間は決まったら、また連絡するから!」
「はぁ……。ところでプロデューサーさん。ひな祭りとは何なんですか?」
「姫のための祭だ。姫による姫のための祭だ」
これで、ひな祭りをするためのお願いは完了と。
細かいところはイケメンがやるというか、俺は忙しいのだ。細かいことは全部、イケメンに押し付ける!
※
さて、ここからはお姫様には頼まれてはいない。俺の独断で勝手にやる。
しかし、今回の主役は姫だからさ。そして姫は2人いるし、どうせならダブルでお雛様してもらおうというわけだ。だから、お節介を焼く。
『天使のところに行きたい。どうすりゃいい?』
俺の考えるひな祭りには、ミカにも連絡つけなくてはならない。だが、直接ミカのところに行こうにも何も分からないので、暇そうな方の悪魔に聞いてみた。
『小僧。貴様は自分の立場を理解しているのか? 此度の件、天使の側に小僧の味方はいない。のこのこ出て行くのは勝手だが、命の保証は無いぞ』
『セバスに言われなくてもそのくらい分かってますー。だがね、何も使いとして行くわけじゃない。友達として怪我のお見舞いに行くだけだ!』
『その理屈が通じればいいがな。それに、人間を天使たちが自分たちの領地に入れるかも分からんぞ。門の前で射殺という可能性も大いにある』
この悪魔執事は仰々しく考えすぎなんだ。いくら何でも射殺とかないわー。
そんなん天使じゃないじゃん! そして門って!
天国への門があるとでも言うのかい? 笑っちゃうわ。はっはっは──
「止まれ! それ以上一歩でも進めば撃つ。ここがどこだか分かっているのか……人間」
少なく見積もっても100人くらい。それだけの数の天使による、天使ビームが俺を狙っている。
フラグを自ら作り、回収するということをしてしまったらしい。
ないと思った天国への門は目の前にあるし、ないと思ってたのに今にも撃ち殺されそう。
セバスの言ったように命の保証は無かった。そして天国への門はあった……。
「貴様、どこから来た。迷い込んだなどとは言うまい」
「間違えました。お騒がせして申し訳なかったです。ボク、──帰ります!」
撤退! 即ゴンドラまで撤退!
実は、城から下にいくゴンドラは上にもいけたんだ。セバスに教えてもらったように、ゴンドラの上へのボタンを押して着いた先はここ。
謎の巨大な門の前だった。きっとあの向こうは天国に違いない。そんな気がします!
「──動くな!」
撤退のために一歩踏み出したところに、ピンポイントで天使ビームが飛んできて、雲のような足場を貫通したーー! ギャーーッ!
「あぶねーな、当たったら死ぬぞ! というか、一歩も前に進んでないのに撃ちやがったな。嘘つき! 天使の嘘つき!」
「みすみす逃すわけがあるまい。捕らえろ! ここへ来た方法を聞き出す。その後は審判を仰ぐ」
「また審判だとぅ!? ふざけんなよ。2日続けてそんなことされてたまるか! モンスターペアレントじゃなくて……おっさんじゃなくて……何かよくゲームに出てきそうな名前の……──ミカエルだ! ミカエルさんを呼べ!」
とっさに名前が出てこなかった。
俺は自分で思ってる以上に、かなりギリギリの状態だからだろうね。かなりテンパってるね。
「……大天使様だと。ますます怪しい! やはりこの場で射殺しろ!」
「──なんでだよ! 話くらい通せよ。聞くだけ聞いてよーー。ミカエラさんのお友達の零斗くんが遊びにきています。って言ってきてよーー」
「姫の友達だと? よくもまあ、ぬけぬけとそんな嘘をつくものだ。構わん。射殺を許可する。この場で始末しろ」
なぜだーー! どうしてこの天使は何一つ信用しない!
警備がキツすぎる。もれなく全員射殺してんじゃねーの!? 最初の捕らえろは嘘なんだったのか!?
『お待ちなさい』
ここが天国だからだろうか。天から女の人の声がする。
空を見上げても誰もおらず、だが全員に声は届いているようだ。完全に空から聞こえてきている。
「ガブリエル様……」
うわぁ……。
また聞いたことある天使な名前だ。
天使はだいたい、なんとかエルって付くよね。
『その場での殺害など認められません。おやめなさい』
マジ天使。どんな人か知らないが、ガブリエルさんマジ天使だ。俺を助けてくださるらしい。
この頭固い天使とは比べられないくらいに天使。
「──しかしですね。明らかな不審者! 第一、人間がこんな場所に至る経緯が不明です。人間が大天使様の名前と姫様の名前も知っているなどありえない。あまつさえ友達などと。この場を預かる者としては──」
──そこで食い下がんなよ! ガブリエルさんの言うこと素直に聞けよ!
なんなんだこの野郎は。羽生えてれば偉いのか? よく見ればイケメンだし。死ねばいいのに。
『新参者の私の言うことなど聞けないというわけですね』
「──け、決してそのようなことは!」
……新参者? 超聞いたことある天使なのに? もしかすると2代目とか3代目とか付くのか?
あるいはガブリエルという天使は、この世界では若い人なのか? 若い女の人の声だし。
『なら、やめなさい。貴方は優秀な生徒でしたよ。真面目で誠実な。しかし、いかんせん頭が固い。人間が何の理由も無しにこんな場所にはこない。これない。ミカエラを敬愛する気持ちは分かりますが、それで物事を決めつけてはいけません。分かりましたか?』
「申し訳ありませんでした。天使長様」
なに、天使長だと……。
ガブリエルさんが天使長。
ミカが恐れていた方だろうか?
それとも天使長は複数いるのか?
『白夜 零斗。この門は貴方のためには絶対に開きません。門から中へは絶対に入れない。分かりましたね? では帰りなさい』
「……なんで……俺の名前……」
疑問とかが一瞬で、なんで名前を知られているのかに切り替わる。で、完全にフリーズする。
だっておかしいだろ。俺は名乗ってない。
『おかしなことを言いますね。先ほど自分で名乗っていたではありませんか。話は終わりです。私は授業がありますので失礼します』
いや、警備天使とのくだりで名乗っていたのか?
テンパっていて確信がないが、そうとしか思えないもんな。そうだとしよう。
「じゃあ、ガブリエルさん。ミカエルさんかミカエラさんに取り次いでもらえますか? ………………。」
そう言ってみても、天から声が聞こえてくることはなかった。何度言っても、何を言ってもだ。
門の前に残る融通が利かない警備の天使では話にならないので、この日は諦め一時撤退することにした。
0
お気に入りに追加
21
あなたにおすすめの小説
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
【取り下げ予定】愛されない妃ですので。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃になんて、望んでなったわけではない。
国王夫妻のリュシアンとミレーゼの関係は冷えきっていた。
「僕はきみを愛していない」
はっきりそう告げた彼は、ミレーゼ以外の女性を抱き、愛を囁いた。
『お飾り王妃』の名を戴くミレーゼだが、ある日彼女は側妃たちの諍いに巻き込まれ、命を落としてしまう。
(ああ、私の人生ってなんだったんだろう──?)
そう思って人生に終止符を打ったミレーゼだったが、気がつくと結婚前に戻っていた。
しかも、別の人間になっている?
なぜか見知らぬ伯爵令嬢になってしまったミレーゼだが、彼女は決意する。新たな人生、今度はリュシアンに関わることなく、平凡で優しい幸せを掴もう、と。
*年齢制限を18→15に変更しました。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
テンプレな異世界を楽しんでね♪~元おっさんの異世界生活~【加筆修正版】
永倉伊織
ファンタジー
神の力によって異世界に転生した長倉真八(39歳)、転生した世界は彼のよく知る「異世界小説」のような世界だった。
転生した彼の身体は20歳の若者になったが、精神は何故か39歳のおっさんのままだった。
こうして元おっさんとして第2の人生を歩む事になった彼は異世界小説でよくある展開、いわゆるテンプレな出来事に巻き込まれながらも、出逢いや別れ、時には仲間とゆる~い冒険の旅に出たり
授かった能力を使いつつも普通に生きていこうとする、おっさんの物語である。
◇ ◇ ◇
本作は主人公が異世界で「生活」していく事がメインのお話しなので、派手な出来事は起こりません。
序盤は1話あたりの文字数が少なめですが
全体的には1話2000文字前後でサクッと読める内容を目指してます。
地獄の手違いで殺されてしまったが、閻魔大王が愛猫と一緒にネット環境付きで異世界転生させてくれました。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作、面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
高橋翔は地獄の官吏のミスで寿命でもないのに殺されてしまった。だが流石に地獄の十王達だった。配下の失敗にいち早く気付き、本来なら地獄の泰広王(不動明王)だけが初七日に審理する場に、十王全員が勢揃いして善後策を協議する事になった。だが、流石の十王達でも、配下の失敗に気がつくのに六日掛かっていた、高橋翔の身体は既に焼かれて灰となっていた。高橋翔は閻魔大王たちを相手に交渉した。現世で残されていた寿命を異世界で全うさせてくれる事。どのような異世界であろうと、異世界間ネットスーパーを利用して元の生活水準を保証してくれる事。死ぬまでに得ていた貯金と家屋敷、死亡保険金を保証して異世界で使えるようにする事。更には異世界に行く前に地獄で鍛錬させてもらう事まで要求し、権利を勝ち取った。そのお陰で異世界では楽々に生きる事ができた。
転生弁護士のクエスト同行記 ~冒険者用の契約書を作ることにしたらクエストの成功率が爆上がりしました~
昼から山猫
ファンタジー
異世界に降り立った元日本の弁護士が、冒険者ギルドの依頼で「クエスト契約書」を作成することに。出発前に役割分担を明文化し、報酬の配分や責任範囲を細かく決めると、パーティ同士の内輪揉めは激減し、クエスト成功率が劇的に上がる。そんな噂が広がり、冒険者は誰もが法律事務所に相談してから旅立つように。魔王討伐の最強パーティにも声をかけられ、彼の“契約書”は世界の運命を左右する重要要素となっていく。
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる