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天使のホワイトデー

まな板の上の鯉の気持ち

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♢13♢

 どこを間違えたんだろう。
 どこから間違っていたんだろう。
 あれからずっとそんな感情に支配されてる。
 俺はまた、やらかしてしまったようだ……。

 天使とお姫様を仲直りさせるどころか、事態はより悪化してしまった。おまけに天使は手を骨折。強制帰宅となってしまった。
 知りたい人もいると思うから、その際のもようをお伝えする。
 あのあとすぐに天使を城の医者の元へと連れていき、診察してもらった。その診察の結果は骨折。ヒビはいってた。

『大丈夫! 大丈夫!!』

 そう天使はしきりに言い張っていたが、保護者である執事がどこかに電話して、さほど時間が経たずに大丈夫ではないと判断されたのだろう。

『──なに!? なんでこんなに人がいるの。ちょ──、アタシをどうするの!? 助けて。レート、助けてーーーー』

 何処かから現れた大量の白い服の人たちによって、天使はタンカで運ばれていった。
 あとから知ったが、アレは天使の皆さんだったようだ。こうして天使は強制的に帰宅させられたのだ。

『プロデューサー殿。ここまでの騒ぎにになるとは……。思ったよりも大ごとになってしまいました。申し訳ないです。しかし、怪我して滞在ではどのみちご迷惑になったでしょうし。私もこれで失礼いたします』

 胡散臭い執事もそう言い残して帰っていった。あとに残されたのは、起きた事についていけず呆然と立ち尽くす俺だけだった。

 これが昨日の顛末だ。
 そして今日……なんかピンチです。


 ※回想1


 天使が強制的に帰っていった昨日。
 今日は日曜で学校が休みな俺は、朝からお姫様のところに来ている。だが、昼過ぎからはバイトに行かなくてはならないから、こうしていられる時間には限りがある。

 昨日あのあと、お姫様と天使は一度も顔を合わせもしなかった。天使は強制帰宅させられたし、お姫様はミルクちゃんのところに行って昨日は帰ってこなかったからだ。
 そんなふうだったお姫様を心配し、優しい俺は朝からやってきたんだ。しかし……。

「おはよう! 今日もいい天気だね! あっ、ここは雲より上だからいつも晴れだったね。あっはっは──」

「……」

 先ほどから布団に潜ったままピクリともしない。これは天使にしていた無が発動しているのか?

「今日のオヤツは昨日のひなあられを持ってきたんだ。 ……しまった。自分から昨日とか言ってしまった……」

「…………」

 やはり、お姫様は布団から顔すら出さない。ちなみに今の発言はわざとではない。
 ガチで言ってしまった……。今日も俺はダメだ。ダメダメだ。

「じゃあ俺は城門の様子を見てくるから。二クスに投げっぱなしになってるからな」

 クローゼットの鍵が朝から開いていたし、起きていると思うんだがな。少ししたらまた来てみよう。
 そう思って、俺はお姫様の部屋をあとにした。


 ※回想2


 俺が城門の修理の責任者なのに、まるっきり放置という状況が気になっていた。
 昨日は様子を見ることすら忘れていた。情けない。なので、今日は責任者らしいことをしたい。

「お疲れ様でーす」「でーす」

 どうかしてしまったアンチと大工さんたちに、すれ違うたびに挨拶される。
 それに返事を返しながら、城門の方へと進んでいく。

「馬鹿な。もう足場ができているし、作業は始まっているだと!? しかも結構進んでいる!」

 俺は異世界大工を舐めていたらしい。
 アンチという労働力を得て、ゴリラ組の作業効率は凄まじく上昇していたようだ。
 アンチは単純作業を。大工さんたちは専門的な作業と、お互いに完全に分担することにより作業は効率よく早くなっている。

白夜はくやさん、おはようございます。昨日は大変だったようですね」

 これらを指示したのだろうイケメンが、わざわざ近寄ってきて声をかけてきた。今もあれこれと指示を出していて忙しいだろうにだ。
 それなのに、俺にすら声をかけてくれるイケメン。死ねばいいのに。

「ここにも俺は必要ないようだな……」

「どうされたのですか?」

「どうされたじゃねーよ。お前で足りてるからショック受けてんだよ! 天使の件でもダメだったし、こっちも役立たずじゃ、俺はどうすればいいんだよ!」

「気にしすぎじゃないでしょうか? 彼らを連れてきたのも白夜さんですし、使いの皆さんにやる気を出させたのもアナタだ。修繕は捗り、労働力についても事は進んでいる。それなのに少し上手くいかなかっただけで、落ち込む必要はないと思いますよ」

 言うことまでイケメンはイケメンなのか。ちゃんと俺をフォローしやがる。二クスめーー。
 こんなことを言われたら悪態つけない!
 コイツはこんな俺を評価している。あー、いいヤツ過ぎて逆にムカつくくらいだ。死ねばいいのに。

「開門、開門──」

 悪態つけないし、二クスになんと返そうか考えているとそんな声が響いた。
 現在ただ置いてあるだけの、ぶっ壊された元城門が開くらしい。兵士たちの人力で。

「なぁ、いつもはそんなこと言わなくね? 開門なんて言ってんの初めて聞いたぞ?」

「……それだけの人物がきたのでしょう」

「ここにこれるヤツは限られてんだろ?」

 こないだそんなことをニックさんが言ってた。
 許可なく城へは行けないし、許可のあるヤツもいないと。それなのに、どういうわけだ?

「白夜さん。急いで帰られた方がよろしいかもしれません」

 そう言った二クスの言葉はもう遅く、ゾロゾロと元城門から入ってきた白い集団は、あっという間に俺たちを取り囲む。
 その白い集団は、昨日見た天使たちと同じ格好のヤツらだった。


 ※回想ではなく今現在!


 上記のようなことがあり、なんか拘束され、なんか連行され、なんか今から審判的なことにかけらるらしい。 ……これはアレかな?

『娘に手を出されて黙ってられん! 戦争だ!』

『犯人は死刑しました。だから、許して?』

 ──となるやつ……。って、こんなこと考えてる場合じゃねーーっ!
 セクハラで死刑ですらない。俺はなんの理由で審判されるの!? 天使の審判とか絶対に死ぬヤツだよね!?

「どうされました。顔色が悪いですよ?」

「二クス……日本のことわざを教えてやろう」

 何故だかイケメンも一緒に拘束された。きっと天使を叱りつけたからだろう。
 それがモンスターペアレントの逆鱗に触れ、死刑にされるんだろう。哀れイケメン。

「ことわざとは?」

「昔からある言い伝えだな。それに、今の俺たちにピッタリな言葉がある」

 なんて、死刑になりそうなのはイケメンだけにあらず。イケメンが死刑ということは、隣にいる俺も同じだよね。
 天使が怪我したのは俺のせいだし……。

「ほう、是非ご教授ください」

「まな板の鯉。そんな言葉がある」

「どのような意味が?」

「鯉というのは魚だ。まな板は調理台。意味は調理台の上に載せられた魚のように、捌かれるのをただ待つしかないという意味だ! 捌かれるに裁かれるがかかっていて面白い……──なんて言ってる場合じゃねーんだよ! このままじゃ天使に裁かれて死ぬぞ!?」

 ズラリと並びに並んだ天使たちがいる、この先は会議室。現在なんかが話し合われている。
 なんかとは、──まあ俺たちのことだろうね!

「落ち着いてください。死にはしません」

「そんな言葉を信じられるわけないだろうが! 手枷に繋がれてるよ。天使たちはもれなく武装してるしね。何より天使ビームもあるじゃない!」

 考えれば考えるほど死ぬと思う。
 それに……めっちゃこわいおっさんがいた。王様を初めて見た時くらい怖かった。怖かったよー。アレがきっとモンスターペアレントだ。
 次回は果たしてあるのだろうか? 続く。といいな。
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