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天使のホワイトデー
続・お留守番の天使
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♢10♢
それは帰宅してすぐは分からなかったんだ。
今日お留守番だった天使に買ってきたお菓子をあげ、天使に今朝上手いこと言ってくれた妹にお菓子をあげ、バイト帰りな俺は真っ直ぐ風呂にいった。
その風呂から出て、自分の部屋に荷物を置きに行って初めて分かった。部屋に入った瞬間に、『──あれっ?』って思った。
今朝、妹が聞き分けのない天使を、時間が迫っている俺の代わりに引き受けてくれた。
俺は、『一愛のことだ。上手いこと天使に話してくれたんだろう』とだけ思っていた。
しかし、ヤツはどうミカに話したのか? 何を言ったのか? それを俺は考えるべきだったんだ。
妹はろくなヤツではないと知っていたんだから……。
入った自室は散らかっているわけでも、荒らされているわけでもない。むしろ綺麗に掃除されている。
綺麗過ぎるくらい掃除されていた。この時点で嫌な予感がした。
「なっ──」
みんなの内、いくらかは経験があるだろう。
やらなくていいと言ってるのに、部屋が勝手に掃除されているということを。それは見られたくないものがあるからだと言えないから、やらないでくれと言ってるのだということを。
「──」
そして、もしソレを発見した場合、机の上に整理して置かれるているという、謎の現象に見舞われるということを。
「ミ、ミカエラーーッ! 貴様、何をしたーー!」
俺は下にも聞こえるだろう声で叫び、ここで思い出す。お菓子をあげた際に、茶の間のコタツに入っていた2人から、それぞれ言われたことを。
天使は、『だ、大丈夫よ。アタシは理解がある女だから。必要だって知ってるから!』と、何を言ってんだ? このポンコツ天使? な発言も。
妹の、『まぁ、いいでしょう……。ごく普通のだったので特に何も言いません。だから、早くそのお菓子をちょうだい』という、意味が分からない発言も。全て繋がった。
「一愛、貴様はミカに何を言ったんだーーーーっ!」
ダッシュで茶の間までいき、勢いよくふすまを開き、最初から一歩も動いていない妹たちに詰め寄る。
すでにお菓子の袋はからになり、2人はコタツでお茶をすすっていた。
「なに? 今朝ミカちゃんに、日本には一宿一飯の恩義というのがあると教えてあげただけだよ。ただ、れーとの部屋を掃除してあげたら喜ぶよ。お宝が見つかるかもしれない! っても言ったけどね。ズズッ……」
「お宝が肌色の本だったのはショックだったけど、いい事したから気分はいいの。だから満足したわ。暇しなかったし。ズズッ……」
そういう話ではない。これは男のプライド的な話なのだ。
個人的な志向とか、個人的な趣味とかの話でもある。俺はノーマルな人だけどね!
「一愛……俺は怒っている。余計なことしやがって……」
「ふっ──、じゃあどうするの? 一愛に何かしようものなら、個人の趣味嗜好について言わなくていいことも、そこら辺でベラベラと喋ってしまうよ」
「脅して何とかしようなど、あまい! 女だろうと妹だ。一発ひっぱたいてやる!」
俺は女の子を殴りはしない。だが、妹は女の子ではない!
この性悪には物理的にダメージを与えるしかないんだ。おそらく精神的にダメージを与えることはできないから……。
「しねやーー!」
この行為に対する批判は甘んじて受けよう。だが、それでもやらないといけないんだ!
男にとって見られたくないものを見られた。その上、趣味嗜好を言いふらすなど言語道断だろ!
「ミカちゃんたすけて」
「──妹になにをしようっていうのよ!」
俺は妹に物理的制裁を加えようと手を振り上げたのだが、その妹の隣でコタツに入ったままの状態の天使に攻撃を軽く止められ、逆に天使の雑な攻撃が俺にクリーンヒットする。
「ぐっ──、そうだった……この天使は物理が強かった……。がくっ……」
「ふふふ、れーとがミカちゃんに勝てないことも知っていた。ルシアちゃんにも。お姉ちゃんにも勝てないと知っているぞ? 一愛に何かしようものなら、彼女たちが黙っていない。あきらめるんだな! HAHAHAHA──」
やはり、この妹が俺にとってのラスボスらしい。
もし一愛に何かすれば、物理な女たちにその倍以上に制裁されるとは。俺は妹に勝てないらしい……。
「──HAHAHAHA──」
ラスボスの高笑いが遠くに聞こえる。
おわり。
※
「──なんて終わるか! 何であんなことするの? やめて、金輪際やめて!?」
「ああなるとは思わなかったんだよ。ミカちゃんは、もっと不器用なやつだと思ってたんだよ」
あぁ……なるほどな。ダメな天使のことだから、掃除という名の散らかしになると一愛は考えたのか。それがああなったと。
ああなったのが何より問題なわけだが、その件に関してはもう諦めるしかない状況なので。物理的に敵わないので……。
「それは確かに。ミカにあんな女子力があるとは思わなかった。ポンコツなだけじゃなかったんだね」
確かに、掃除なんかができるとは思わなかった。そんなことは執事任せにでもしてるもんだと思ってた。
というか、俺は何もできないダメなヤツだと思っていたよ。
「学校でやってることは大抵できるわ! できないと天使長に怒られるからね!」
自信ありげにミカは言うが、その自信に見合うだけのことはあった。これも予想外だが、天使の学校というのはあなどれない。天使長なる人物もだ。
一見ダメな天使に、あれだけの女子力を与えるとはな……。
「──とにかく! もうやめてね? 男の子にはいろいろあるんだよ!」
「しばらくはやめるよ」
「しばらくじゃなくて、もうやめろよ! 帰ってくるたびにビクビクすんのやだよ!」
「そんなに嫌なら処分しなよ。見られて困るものなんて置いとくべきではないよ。それに、お姉ちゃんとかどう思うかな?」
オープンに置いてあったわけでは断じてないが、そう言われると考えざる得ない。
ルイは……わからない。しかし、許してはくれないかもしれない。
お姫様も……わからない。やっぱり許してはくれないかもしれない。
「考えておきます」
「よろしい!」
一愛とミカはともかく、女子の出入りが勝手にあるし考えた方がいいかもな……隠し場所を。
えっ、なくすのはムリだよ。男の子だから。
「れーと。ところで、お姉ちゃんから何か聞けたの?」
「──そうだ、忘れてた! 一愛。明日、スーパーなアレを飾ろう!」
「自分から言いだすとは……。いったいどうしたの? 毎年イヤイヤなのに?」
何か気になるものがあったのか、真剣にテレビを見ている天使に気づかれないように、聞かれないようにヒソヒソ話にする。
(天使とお姫様を仲直りさせるのに使えるかと思ってな。ひな祭りとは思いつかなかった)
(なるほどー、悪くないかも。ひな祭りといえばアレだしね)
(なので明日やろう。バイトは休むと言ってきた)
(さすがだね。用意もいい。ルシアちゃんには?)
(これから言ってくる。天使を少し見張っててくれ)
天使を帰らせるのを少し遅らせる。もとい、お姫様に天使が通ると伝えておかなくては。プラスして明日のお誘いをしなくては。
それは帰宅してすぐは分からなかったんだ。
今日お留守番だった天使に買ってきたお菓子をあげ、天使に今朝上手いこと言ってくれた妹にお菓子をあげ、バイト帰りな俺は真っ直ぐ風呂にいった。
その風呂から出て、自分の部屋に荷物を置きに行って初めて分かった。部屋に入った瞬間に、『──あれっ?』って思った。
今朝、妹が聞き分けのない天使を、時間が迫っている俺の代わりに引き受けてくれた。
俺は、『一愛のことだ。上手いこと天使に話してくれたんだろう』とだけ思っていた。
しかし、ヤツはどうミカに話したのか? 何を言ったのか? それを俺は考えるべきだったんだ。
妹はろくなヤツではないと知っていたんだから……。
入った自室は散らかっているわけでも、荒らされているわけでもない。むしろ綺麗に掃除されている。
綺麗過ぎるくらい掃除されていた。この時点で嫌な予感がした。
「なっ──」
みんなの内、いくらかは経験があるだろう。
やらなくていいと言ってるのに、部屋が勝手に掃除されているということを。それは見られたくないものがあるからだと言えないから、やらないでくれと言ってるのだということを。
「──」
そして、もしソレを発見した場合、机の上に整理して置かれるているという、謎の現象に見舞われるということを。
「ミ、ミカエラーーッ! 貴様、何をしたーー!」
俺は下にも聞こえるだろう声で叫び、ここで思い出す。お菓子をあげた際に、茶の間のコタツに入っていた2人から、それぞれ言われたことを。
天使は、『だ、大丈夫よ。アタシは理解がある女だから。必要だって知ってるから!』と、何を言ってんだ? このポンコツ天使? な発言も。
妹の、『まぁ、いいでしょう……。ごく普通のだったので特に何も言いません。だから、早くそのお菓子をちょうだい』という、意味が分からない発言も。全て繋がった。
「一愛、貴様はミカに何を言ったんだーーーーっ!」
ダッシュで茶の間までいき、勢いよくふすまを開き、最初から一歩も動いていない妹たちに詰め寄る。
すでにお菓子の袋はからになり、2人はコタツでお茶をすすっていた。
「なに? 今朝ミカちゃんに、日本には一宿一飯の恩義というのがあると教えてあげただけだよ。ただ、れーとの部屋を掃除してあげたら喜ぶよ。お宝が見つかるかもしれない! っても言ったけどね。ズズッ……」
「お宝が肌色の本だったのはショックだったけど、いい事したから気分はいいの。だから満足したわ。暇しなかったし。ズズッ……」
そういう話ではない。これは男のプライド的な話なのだ。
個人的な志向とか、個人的な趣味とかの話でもある。俺はノーマルな人だけどね!
「一愛……俺は怒っている。余計なことしやがって……」
「ふっ──、じゃあどうするの? 一愛に何かしようものなら、個人の趣味嗜好について言わなくていいことも、そこら辺でベラベラと喋ってしまうよ」
「脅して何とかしようなど、あまい! 女だろうと妹だ。一発ひっぱたいてやる!」
俺は女の子を殴りはしない。だが、妹は女の子ではない!
この性悪には物理的にダメージを与えるしかないんだ。おそらく精神的にダメージを与えることはできないから……。
「しねやーー!」
この行為に対する批判は甘んじて受けよう。だが、それでもやらないといけないんだ!
男にとって見られたくないものを見られた。その上、趣味嗜好を言いふらすなど言語道断だろ!
「ミカちゃんたすけて」
「──妹になにをしようっていうのよ!」
俺は妹に物理的制裁を加えようと手を振り上げたのだが、その妹の隣でコタツに入ったままの状態の天使に攻撃を軽く止められ、逆に天使の雑な攻撃が俺にクリーンヒットする。
「ぐっ──、そうだった……この天使は物理が強かった……。がくっ……」
「ふふふ、れーとがミカちゃんに勝てないことも知っていた。ルシアちゃんにも。お姉ちゃんにも勝てないと知っているぞ? 一愛に何かしようものなら、彼女たちが黙っていない。あきらめるんだな! HAHAHAHA──」
やはり、この妹が俺にとってのラスボスらしい。
もし一愛に何かすれば、物理な女たちにその倍以上に制裁されるとは。俺は妹に勝てないらしい……。
「──HAHAHAHA──」
ラスボスの高笑いが遠くに聞こえる。
おわり。
※
「──なんて終わるか! 何であんなことするの? やめて、金輪際やめて!?」
「ああなるとは思わなかったんだよ。ミカちゃんは、もっと不器用なやつだと思ってたんだよ」
あぁ……なるほどな。ダメな天使のことだから、掃除という名の散らかしになると一愛は考えたのか。それがああなったと。
ああなったのが何より問題なわけだが、その件に関してはもう諦めるしかない状況なので。物理的に敵わないので……。
「それは確かに。ミカにあんな女子力があるとは思わなかった。ポンコツなだけじゃなかったんだね」
確かに、掃除なんかができるとは思わなかった。そんなことは執事任せにでもしてるもんだと思ってた。
というか、俺は何もできないダメなヤツだと思っていたよ。
「学校でやってることは大抵できるわ! できないと天使長に怒られるからね!」
自信ありげにミカは言うが、その自信に見合うだけのことはあった。これも予想外だが、天使の学校というのはあなどれない。天使長なる人物もだ。
一見ダメな天使に、あれだけの女子力を与えるとはな……。
「──とにかく! もうやめてね? 男の子にはいろいろあるんだよ!」
「しばらくはやめるよ」
「しばらくじゃなくて、もうやめろよ! 帰ってくるたびにビクビクすんのやだよ!」
「そんなに嫌なら処分しなよ。見られて困るものなんて置いとくべきではないよ。それに、お姉ちゃんとかどう思うかな?」
オープンに置いてあったわけでは断じてないが、そう言われると考えざる得ない。
ルイは……わからない。しかし、許してはくれないかもしれない。
お姫様も……わからない。やっぱり許してはくれないかもしれない。
「考えておきます」
「よろしい!」
一愛とミカはともかく、女子の出入りが勝手にあるし考えた方がいいかもな……隠し場所を。
えっ、なくすのはムリだよ。男の子だから。
「れーと。ところで、お姉ちゃんから何か聞けたの?」
「──そうだ、忘れてた! 一愛。明日、スーパーなアレを飾ろう!」
「自分から言いだすとは……。いったいどうしたの? 毎年イヤイヤなのに?」
何か気になるものがあったのか、真剣にテレビを見ている天使に気づかれないように、聞かれないようにヒソヒソ話にする。
(天使とお姫様を仲直りさせるのに使えるかと思ってな。ひな祭りとは思いつかなかった)
(なるほどー、悪くないかも。ひな祭りといえばアレだしね)
(なので明日やろう。バイトは休むと言ってきた)
(さすがだね。用意もいい。ルシアちゃんには?)
(これから言ってくる。天使を少し見張っててくれ)
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