11 / 101
天使のホワイトデー
天使のやらかし
しおりを挟む
「さて、容疑者はキミたち2人だ。ポンコツな天使ちゃんと、胡散臭い悪魔執事くん。あのゴミは最初はどんなだった? しっかり思い出せ!」
場所をプロデューサーとしての俺の部屋に移し、容疑者はたちへの取り調べを開始した。
お姫様の部屋でこれをやっていた場合、お姫様が帰ってきづらくなると思ってね……。多分すぐには戻ってこないだろうけどね。
「プロデューサー殿。仮にそのゴミが何なのか判明したとして、もう元には戻らないと思うのですが、いかがでしょう?」
「ナナシくんの言う通りだが、それでいいのか? このまま帰るという選択も、お前たちがありというならありだ。天使の目的は達成されているから、もう二度とお姫様からは贈り物はないだろうし、もう二度と遊びに来る必要もないし、もう二度とお姫様に関わらないで生きていける」
「──そんなのイヤ! 嫌いだし……ムカつくけど……こんなのイヤ。一方的に泣かせて、勝ち誇って帰るなんてできない! ………………なんだから」
天使の言葉の後ろの部分は、声が小さくて聞こえなかったが、だいたいわかってるからいい。
「だ、そうだ。姫がこう言ってるけど執事は帰る? お前は関係ないなら帰っていいよ」
言われて帰るようなやつなら女子だろうとぶん殴っていたが、俺についてきた時点でアレは意図しない展開だったのだと分かってた。
さらに事態を解決したいというのなら、手を貸すつもりです。なんだか、自分を見ているようで無視はできないのです。
「うーん。ここで自分だけ帰っては、完全にワルモノになってしまう。ですから姫にお付き合いします」
「よし! なら、このボロッボロの、元が何か分からないゴミが何だったのかを探る。思い出せ。描けるなら絵にしろ。あっ、異世界語はやめてくれよ。人間である俺は読めないからな。日本語で書くか、口頭で説明して」
何かの袋のようなゴミ。だが、元はカラフルな袋だったようだ。
天使は可愛らしい包みと言っていた。その可愛らしい包みから、ゴミが出てきたと。
しかし、お姫様はゴミは送るまい……。
天使が来たのが2月23日。
あー、これは現実での日付であり、異世界は2月24日だ。誰かのせいで日付は1日ずれてる。
誰かのせいでね? ……誰かとは誰かだよ。もう次いくよ?
なら、これが天使に届いたのは昨日か一昨日くらいだろうか?
天使の性格を考えると、すぐにでも飛んできそうだからな。配達のシステムが不明だから何とも言えないけど、どうせ何でもありの悪魔たちの仕業だろう。
そこはそれでいいとして。んっ、そういえば……。
「なぁ、天使はどっから来たんだ?」
「上よ。雲の上」
「ふーん、雲の上からか……──って、上って何!? ここもだいぶ上なんだけど。この城はもう雲より上にあるよ!?」
「じゃあもっと上よ。集中してるんだから邪魔しないで!」
絵にすることにしたらしい天使は、色鉛筆を上手に使い何かを描いている。
普通に鉛筆を持って、使いこなしているのが気になるところだが、邪魔して鉛筆で刺されてはたまらないから刺激しないようにしよう。
それにしても、もっと上。上?
城から見える上空の範囲には、何もないと思うんだけど……。もしかすると、天国的なところからきたのかな? 天使だし。
「なぁ、ナナシくん。天国はあるのかな?」
「ありますよ。ついでに言うと地獄もありますよ。地面深ーーくに」
「──ストップ! もういいや。続けて続けて」
あっ、これ聞いたらダメなやつだ! 世界の秘密的な感じだ!
俺はそういうのに関わらずにいきたいし。生きたい。余計な情報が追加されると、変なフラグが立つんだろ? しってる、しってる。
なので、──これ以上は聞きません!
普通が大事なんだよ? ここが異世界だとしても、俺が目指すのは俺たちの世界の普通くらいなんだから。
十分に普通はスゴいんだから、普通でいいんだ。
異世界を冒険したりバトルしたりは、そういうのをやりたい人たちがやればいいんだ。
俺はそんなの『やりたくない!』ので。城と城下町。たまに旅行くらいで満足なので。
「──できた!」
天使が色鉛筆を置き、描き上げた絵をこちらに見せてくる。
ちなみに筆記用具は、俺がこの部屋に持ってきていたやつを与えたんだ。普通の鉛筆に色鉛筆と、絵を描くには十分だったはずなんだが……。
「下手くそ。絵心ないな」
「──こんなに上手に描けてるじゃない!」
「見た側から分からないんじゃあ上手くはないだろう。何だそれ。黒い塊とか特になに?」
「──これが包みの中身よ!」
小さい子供でも、もう少し上手く描けると思うよ。天使は絵心もないと……。
となると、この天使のはあてにならない。ナナシくんに期待しよう。
「こんな感じでしたね」
「ほら、見てみろ! こういうのを上手いというんだ。自分のと比べてみ?」
「──なんでアタシより上手く描くのよ! アタシに花を持たせないよ!」
天使は怒るが、下手くそは下手くそとしか言いようがない。執事が姫にやられそうだが、執事と姫のやり取りはどうでもいい。
暴力天使が執事を折檻しようとしてるだけだからね。俺がお姫様にやられそうでも、誰も助けてはくれないからね。
ドカッ── バキッ── グシャ──
また壊してるけど自己責任だから。送られる請求書が増えるだけだし、天使は天使長なる人物に殺されるだけだから。
もう少し姫らしくおしとやかにできないのかな……。
「んっ……あれっ? これ、どっかで見たな」
ナナシくんの描いた元の包みの袋。その柄。それを俺は見た覚えがある。
それもつい最近な気がする。どこだったか……──んっ!?
「──やめ、お前らやめろ! これか!? もしかして袋っていうのはこれか!」
その袋は俺の目に入る位置にあった。
中身は取ってしまったけど、俺はこれを額に入れて飾ろうかと思っていたんだ。
「……そうね。そんなやつだったわね」
「ええ、形状は異なりますがその柄でした」
じゃあ──
「この包みが届いたのはいつだ?」
「2月15日ですね」
空いた口が塞がらなくなりそうだけど、それならそれで聞くことがある。
「それなのに、ここに来るまで1週間以上時間が空いてるのはなんでだ?」
「姫が普段から何もやられてないので、天使長から遊びに行く許可がおりませんでした。許可が出てすぐにこちらに伺ったしだいでして。いつもは事前にお伝えしてから遊びに来るのですが、今回は急だったのでそれもなく」
「もういいや。天使がさらにポンコツだったと判明しただけだ。天使、俺はそれが何か分かった。お姫様が泣いた理由もだ……」
「えっ、どういうこと? 何なの?」
この反応を見る限り天使は知らなかった。だが、知らずにやってしまったことは俺でも引く。ドン引きだ。
俺もなかなかだったが、天使ちゃんもなかなかだ。
「これはチョコレートというお菓子だ」
「……お菓子ってなに?」
「ちょっと待ってろ。今取ってきてやる」
当日には着かなかったんだろう。翌日に届いただけ大したものだったんだろう。事前に送ることも出来なかったんだろう。
お姫様はそれを自分1人で作ったらしいからな。
なんたることか……お姫様が天使に送ったのは、バレンタインのチョコレートだ。
※
「この黒い物体がお菓子というやつなの? ……キモいんだけど」
「じゃあ、こっちならどうだ? イチゴのチョコがかかってるやつ」
「これなら見た目綺麗ね。それに甘い匂いがする!」
「そんな興味深々な顔してないで食べろよ。そのために、お姫様のお菓子箱から取ってきたんだ」
1日1つだけと自ら決めた、お姫様のお菓子箱。中身はお菓子。毎日のおやつが入っているやつだ。
最近はアンティルールにより中の数を減らしているが、それでもまあまあ入っていたお菓子箱からチョコレートを勝手に拝借してきた。
「──美味しい! 何これ! 何なの!?」
「チョコレートだって言っただろ。そっちの黒いのもチョコレートだからな? むしろそっちが本物だからな」
「ふんふん……匂いは同じ感じね。えいっ──」
「そんなに警戒せんでも……」
知らない人からするとチョコレートのデザインは怪しく見えるのか、天使はだいぶ警戒しながらチョコレートを食べた。
最後は『もうどうにでもなれ!』という感じだった。イチゴの色味がなかったら真っ黒だしな。
「これも甘い! こんなのあるなら教えなさいよ!」
しかし、1つ食べて美味しいと分かれば、あとは止まらずに食べている。すでに3つ、4つ、5つと天使はチョコレートを連続して食べている。
あっ、最初のイチゴのチョコレートを自分の方に寄せて、これも自分のアピールまで始めた。食べさせておかないみたい。
「教えなさいもなにも、だから教えたんだろ? 届いてたじゃねーか。チョコレート」
「…………あー、でもでも! いきなりあんな物体を送りつけられても、ゴミにしか見えないじゃないの! 真っ黒だし食べ物だなんて思わないって!」
「それも疑問なんだけど……。何も入ってなかったのか?」
「どういう意味?」
「包みの中には手紙とかは入ってなかったのか。と言ったんだ。確かに、いきなり黒い物体が送りつけられたら怪しむだろう。しかし、そんなことはお姫様だって分かってたはずだ。どうなのよ天使ちゃん?」
天使は何故だか沈黙する。口を閉じ、その顔には冷や汗が出ている。それでやっぱりと判明したが、天使は黙ったままなので、代わりに執事が答えた。
「ありましたね。包みの表に貼り付けてありました」
やはり手紙は付属していたようだ。
そりゃあそうだろう。物だけ送りはしないだろう。
名探偵でない俺にだって、このくらいの推理はできる。
「おい、ポンコツ天使。それはどうしたんだ? 読まずに食べたのか? 無限ループするやつか?」
「……や、破いて捨てた。カッとなってビリビリにした。中は見てない……」
どうやら、こいつは勢いで生きてるらしい。
表に付いている手紙を読むことなく中を開け、中身をゴミだと思い込み、手紙もチョコレートもやってしまったと。この子は、マジでアホなのかな。
「黒ヤギさんは読まずに食べたと……。仕方がないからお手紙書くのか? さっきの手紙の用事は何と。 ──このポンコツ天使! 順番がおかしい。外に付いてたなら手紙から読めよ! 何で中身を先に出して、読まずに手紙を破る! 頭の中が空っぽと言われてもしょうがないな!」
「うわーーーーん。人間にバカにされてるけど、何も言い返せないーー!」
バレンタインの手作りチョコをゴミだと言われ、食べるどころか踏みつけられてグチャグチャにされ、おまけにそれを自分の目の前でやられたら、あんな反応をするだろう……。
バレンタインにやらかすか……。
なんか自分を見ているようだな。はぁ……。
場所をプロデューサーとしての俺の部屋に移し、容疑者はたちへの取り調べを開始した。
お姫様の部屋でこれをやっていた場合、お姫様が帰ってきづらくなると思ってね……。多分すぐには戻ってこないだろうけどね。
「プロデューサー殿。仮にそのゴミが何なのか判明したとして、もう元には戻らないと思うのですが、いかがでしょう?」
「ナナシくんの言う通りだが、それでいいのか? このまま帰るという選択も、お前たちがありというならありだ。天使の目的は達成されているから、もう二度とお姫様からは贈り物はないだろうし、もう二度と遊びに来る必要もないし、もう二度とお姫様に関わらないで生きていける」
「──そんなのイヤ! 嫌いだし……ムカつくけど……こんなのイヤ。一方的に泣かせて、勝ち誇って帰るなんてできない! ………………なんだから」
天使の言葉の後ろの部分は、声が小さくて聞こえなかったが、だいたいわかってるからいい。
「だ、そうだ。姫がこう言ってるけど執事は帰る? お前は関係ないなら帰っていいよ」
言われて帰るようなやつなら女子だろうとぶん殴っていたが、俺についてきた時点でアレは意図しない展開だったのだと分かってた。
さらに事態を解決したいというのなら、手を貸すつもりです。なんだか、自分を見ているようで無視はできないのです。
「うーん。ここで自分だけ帰っては、完全にワルモノになってしまう。ですから姫にお付き合いします」
「よし! なら、このボロッボロの、元が何か分からないゴミが何だったのかを探る。思い出せ。描けるなら絵にしろ。あっ、異世界語はやめてくれよ。人間である俺は読めないからな。日本語で書くか、口頭で説明して」
何かの袋のようなゴミ。だが、元はカラフルな袋だったようだ。
天使は可愛らしい包みと言っていた。その可愛らしい包みから、ゴミが出てきたと。
しかし、お姫様はゴミは送るまい……。
天使が来たのが2月23日。
あー、これは現実での日付であり、異世界は2月24日だ。誰かのせいで日付は1日ずれてる。
誰かのせいでね? ……誰かとは誰かだよ。もう次いくよ?
なら、これが天使に届いたのは昨日か一昨日くらいだろうか?
天使の性格を考えると、すぐにでも飛んできそうだからな。配達のシステムが不明だから何とも言えないけど、どうせ何でもありの悪魔たちの仕業だろう。
そこはそれでいいとして。んっ、そういえば……。
「なぁ、天使はどっから来たんだ?」
「上よ。雲の上」
「ふーん、雲の上からか……──って、上って何!? ここもだいぶ上なんだけど。この城はもう雲より上にあるよ!?」
「じゃあもっと上よ。集中してるんだから邪魔しないで!」
絵にすることにしたらしい天使は、色鉛筆を上手に使い何かを描いている。
普通に鉛筆を持って、使いこなしているのが気になるところだが、邪魔して鉛筆で刺されてはたまらないから刺激しないようにしよう。
それにしても、もっと上。上?
城から見える上空の範囲には、何もないと思うんだけど……。もしかすると、天国的なところからきたのかな? 天使だし。
「なぁ、ナナシくん。天国はあるのかな?」
「ありますよ。ついでに言うと地獄もありますよ。地面深ーーくに」
「──ストップ! もういいや。続けて続けて」
あっ、これ聞いたらダメなやつだ! 世界の秘密的な感じだ!
俺はそういうのに関わらずにいきたいし。生きたい。余計な情報が追加されると、変なフラグが立つんだろ? しってる、しってる。
なので、──これ以上は聞きません!
普通が大事なんだよ? ここが異世界だとしても、俺が目指すのは俺たちの世界の普通くらいなんだから。
十分に普通はスゴいんだから、普通でいいんだ。
異世界を冒険したりバトルしたりは、そういうのをやりたい人たちがやればいいんだ。
俺はそんなの『やりたくない!』ので。城と城下町。たまに旅行くらいで満足なので。
「──できた!」
天使が色鉛筆を置き、描き上げた絵をこちらに見せてくる。
ちなみに筆記用具は、俺がこの部屋に持ってきていたやつを与えたんだ。普通の鉛筆に色鉛筆と、絵を描くには十分だったはずなんだが……。
「下手くそ。絵心ないな」
「──こんなに上手に描けてるじゃない!」
「見た側から分からないんじゃあ上手くはないだろう。何だそれ。黒い塊とか特になに?」
「──これが包みの中身よ!」
小さい子供でも、もう少し上手く描けると思うよ。天使は絵心もないと……。
となると、この天使のはあてにならない。ナナシくんに期待しよう。
「こんな感じでしたね」
「ほら、見てみろ! こういうのを上手いというんだ。自分のと比べてみ?」
「──なんでアタシより上手く描くのよ! アタシに花を持たせないよ!」
天使は怒るが、下手くそは下手くそとしか言いようがない。執事が姫にやられそうだが、執事と姫のやり取りはどうでもいい。
暴力天使が執事を折檻しようとしてるだけだからね。俺がお姫様にやられそうでも、誰も助けてはくれないからね。
ドカッ── バキッ── グシャ──
また壊してるけど自己責任だから。送られる請求書が増えるだけだし、天使は天使長なる人物に殺されるだけだから。
もう少し姫らしくおしとやかにできないのかな……。
「んっ……あれっ? これ、どっかで見たな」
ナナシくんの描いた元の包みの袋。その柄。それを俺は見た覚えがある。
それもつい最近な気がする。どこだったか……──んっ!?
「──やめ、お前らやめろ! これか!? もしかして袋っていうのはこれか!」
その袋は俺の目に入る位置にあった。
中身は取ってしまったけど、俺はこれを額に入れて飾ろうかと思っていたんだ。
「……そうね。そんなやつだったわね」
「ええ、形状は異なりますがその柄でした」
じゃあ──
「この包みが届いたのはいつだ?」
「2月15日ですね」
空いた口が塞がらなくなりそうだけど、それならそれで聞くことがある。
「それなのに、ここに来るまで1週間以上時間が空いてるのはなんでだ?」
「姫が普段から何もやられてないので、天使長から遊びに行く許可がおりませんでした。許可が出てすぐにこちらに伺ったしだいでして。いつもは事前にお伝えしてから遊びに来るのですが、今回は急だったのでそれもなく」
「もういいや。天使がさらにポンコツだったと判明しただけだ。天使、俺はそれが何か分かった。お姫様が泣いた理由もだ……」
「えっ、どういうこと? 何なの?」
この反応を見る限り天使は知らなかった。だが、知らずにやってしまったことは俺でも引く。ドン引きだ。
俺もなかなかだったが、天使ちゃんもなかなかだ。
「これはチョコレートというお菓子だ」
「……お菓子ってなに?」
「ちょっと待ってろ。今取ってきてやる」
当日には着かなかったんだろう。翌日に届いただけ大したものだったんだろう。事前に送ることも出来なかったんだろう。
お姫様はそれを自分1人で作ったらしいからな。
なんたることか……お姫様が天使に送ったのは、バレンタインのチョコレートだ。
※
「この黒い物体がお菓子というやつなの? ……キモいんだけど」
「じゃあ、こっちならどうだ? イチゴのチョコがかかってるやつ」
「これなら見た目綺麗ね。それに甘い匂いがする!」
「そんな興味深々な顔してないで食べろよ。そのために、お姫様のお菓子箱から取ってきたんだ」
1日1つだけと自ら決めた、お姫様のお菓子箱。中身はお菓子。毎日のおやつが入っているやつだ。
最近はアンティルールにより中の数を減らしているが、それでもまあまあ入っていたお菓子箱からチョコレートを勝手に拝借してきた。
「──美味しい! 何これ! 何なの!?」
「チョコレートだって言っただろ。そっちの黒いのもチョコレートだからな? むしろそっちが本物だからな」
「ふんふん……匂いは同じ感じね。えいっ──」
「そんなに警戒せんでも……」
知らない人からするとチョコレートのデザインは怪しく見えるのか、天使はだいぶ警戒しながらチョコレートを食べた。
最後は『もうどうにでもなれ!』という感じだった。イチゴの色味がなかったら真っ黒だしな。
「これも甘い! こんなのあるなら教えなさいよ!」
しかし、1つ食べて美味しいと分かれば、あとは止まらずに食べている。すでに3つ、4つ、5つと天使はチョコレートを連続して食べている。
あっ、最初のイチゴのチョコレートを自分の方に寄せて、これも自分のアピールまで始めた。食べさせておかないみたい。
「教えなさいもなにも、だから教えたんだろ? 届いてたじゃねーか。チョコレート」
「…………あー、でもでも! いきなりあんな物体を送りつけられても、ゴミにしか見えないじゃないの! 真っ黒だし食べ物だなんて思わないって!」
「それも疑問なんだけど……。何も入ってなかったのか?」
「どういう意味?」
「包みの中には手紙とかは入ってなかったのか。と言ったんだ。確かに、いきなり黒い物体が送りつけられたら怪しむだろう。しかし、そんなことはお姫様だって分かってたはずだ。どうなのよ天使ちゃん?」
天使は何故だか沈黙する。口を閉じ、その顔には冷や汗が出ている。それでやっぱりと判明したが、天使は黙ったままなので、代わりに執事が答えた。
「ありましたね。包みの表に貼り付けてありました」
やはり手紙は付属していたようだ。
そりゃあそうだろう。物だけ送りはしないだろう。
名探偵でない俺にだって、このくらいの推理はできる。
「おい、ポンコツ天使。それはどうしたんだ? 読まずに食べたのか? 無限ループするやつか?」
「……や、破いて捨てた。カッとなってビリビリにした。中は見てない……」
どうやら、こいつは勢いで生きてるらしい。
表に付いている手紙を読むことなく中を開け、中身をゴミだと思い込み、手紙もチョコレートもやってしまったと。この子は、マジでアホなのかな。
「黒ヤギさんは読まずに食べたと……。仕方がないからお手紙書くのか? さっきの手紙の用事は何と。 ──このポンコツ天使! 順番がおかしい。外に付いてたなら手紙から読めよ! 何で中身を先に出して、読まずに手紙を破る! 頭の中が空っぽと言われてもしょうがないな!」
「うわーーーーん。人間にバカにされてるけど、何も言い返せないーー!」
バレンタインの手作りチョコをゴミだと言われ、食べるどころか踏みつけられてグチャグチャにされ、おまけにそれを自分の目の前でやられたら、あんな反応をするだろう……。
バレンタインにやらかすか……。
なんか自分を見ているようだな。はぁ……。
0
お気に入りに追加
21
あなたにおすすめの小説
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
【取り下げ予定】愛されない妃ですので。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃になんて、望んでなったわけではない。
国王夫妻のリュシアンとミレーゼの関係は冷えきっていた。
「僕はきみを愛していない」
はっきりそう告げた彼は、ミレーゼ以外の女性を抱き、愛を囁いた。
『お飾り王妃』の名を戴くミレーゼだが、ある日彼女は側妃たちの諍いに巻き込まれ、命を落としてしまう。
(ああ、私の人生ってなんだったんだろう──?)
そう思って人生に終止符を打ったミレーゼだったが、気がつくと結婚前に戻っていた。
しかも、別の人間になっている?
なぜか見知らぬ伯爵令嬢になってしまったミレーゼだが、彼女は決意する。新たな人生、今度はリュシアンに関わることなく、平凡で優しい幸せを掴もう、と。
*年齢制限を18→15に変更しました。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
ボッチはハズレスキル『状態異常倍加』の使い手
Outlook!
ファンタジー
経緯は朝活動始まる一分前、それは突然起こった。床が突如、眩い光が輝き始め、輝きが膨大になった瞬間、俺を含めて30人のクラスメイト達がどこか知らない所に寝かされていた。
俺達はその後、いかにも王様っぽいひとに出会い、「七つの剣を探してほしい」と言われた。皆最初は否定してたが、俺はこの世界に残りたいがために今まで閉じていた口を開いた。
そしてステータスを確認するときに、俺は驚愕する他なかった。
理由は簡単、皆の授かった固有スキルには強スキルがあるのに対して、俺が授かったのはバットスキルにも程がある、状態異常倍加だったからだ。
※不定期更新です。ゆっくりと投稿していこうと思いますので、どうかよろしくお願いします。
カクヨム、小説家になろう、エブリスタにも投稿しています。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
テンプレな異世界を楽しんでね♪~元おっさんの異世界生活~【加筆修正版】
永倉伊織
ファンタジー
神の力によって異世界に転生した長倉真八(39歳)、転生した世界は彼のよく知る「異世界小説」のような世界だった。
転生した彼の身体は20歳の若者になったが、精神は何故か39歳のおっさんのままだった。
こうして元おっさんとして第2の人生を歩む事になった彼は異世界小説でよくある展開、いわゆるテンプレな出来事に巻き込まれながらも、出逢いや別れ、時には仲間とゆる~い冒険の旅に出たり
授かった能力を使いつつも普通に生きていこうとする、おっさんの物語である。
◇ ◇ ◇
本作は主人公が異世界で「生活」していく事がメインのお話しなので、派手な出来事は起こりません。
序盤は1話あたりの文字数が少なめですが
全体的には1話2000文字前後でサクッと読める内容を目指してます。
地獄の手違いで殺されてしまったが、閻魔大王が愛猫と一緒にネット環境付きで異世界転生させてくれました。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作、面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
高橋翔は地獄の官吏のミスで寿命でもないのに殺されてしまった。だが流石に地獄の十王達だった。配下の失敗にいち早く気付き、本来なら地獄の泰広王(不動明王)だけが初七日に審理する場に、十王全員が勢揃いして善後策を協議する事になった。だが、流石の十王達でも、配下の失敗に気がつくのに六日掛かっていた、高橋翔の身体は既に焼かれて灰となっていた。高橋翔は閻魔大王たちを相手に交渉した。現世で残されていた寿命を異世界で全うさせてくれる事。どのような異世界であろうと、異世界間ネットスーパーを利用して元の生活水準を保証してくれる事。死ぬまでに得ていた貯金と家屋敷、死亡保険金を保証して異世界で使えるようにする事。更には異世界に行く前に地獄で鍛錬させてもらう事まで要求し、権利を勝ち取った。そのお陰で異世界では楽々に生きる事ができた。
転生弁護士のクエスト同行記 ~冒険者用の契約書を作ることにしたらクエストの成功率が爆上がりしました~
昼から山猫
ファンタジー
異世界に降り立った元日本の弁護士が、冒険者ギルドの依頼で「クエスト契約書」を作成することに。出発前に役割分担を明文化し、報酬の配分や責任範囲を細かく決めると、パーティ同士の内輪揉めは激減し、クエスト成功率が劇的に上がる。そんな噂が広がり、冒険者は誰もが法律事務所に相談してから旅立つように。魔王討伐の最強パーティにも声をかけられ、彼の“契約書”は世界の運命を左右する重要要素となっていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる