8 / 101
天使のホワイトデー
大工さんとかアンチとか
しおりを挟む
どれだけ壊れていようと、悪魔な業者に修繕を依頼すれば、すぐにでも城門は直るだろう。
しかし、悪魔に頼むというのは正直よろしくない。
何故なら、ビックリするくらいの修繕費を請求されるだろう。そして払えなければ、寿命とかをバリバリ取られるだろう。悪魔というのはそんなヤツらだと思う。
あっ──、これは俺の個人的な想像です。実際とは異なる場合があります。
よし! これで万が一の時も誤魔化せる。
まあ、あまり関わりたくない悪魔には頼らず、普通に大工さんを頼ろうという話だ。
そういえばバレンタインの時に、大工さんと知り合ったのを思い出したんだ。
ゴリラだと思ったら城下の人であり、ゴリラだと思ったら大工さんだった。
そんな彼に、城門を直してはくれないかと直接頼みにきました。早い方がいいからね。
「こないだはすまなかったね。急に異世界感が強くなって。こう、気持ちが盛り上がってしまってね」
「はぁ……今日は何かご用で?」
「ニックさん。あんた大工さんだったよね。急で悪いんだが、これで仕事を頼みたいんだ。どうだろうか?」
突然だし信用もない。なので金はいると予想し、予め用意してきた。ニクスが寄こした額なので問題もないと思う。
それに、どうせ請求書の大半は天使にいくんだ。財政にも響くまい。
「こ、こんなに……。その仕事っていうのは、ヤバい仕事で?」
「そうなんだ。実は──」
「──やめだやめ! そんなヤバい話はお断りだ!」
「冗談だよ。女子たちがぶっ壊した城門と城の一部。あと、できるなら庭もか。その修理を頼みたいんだ」
真面目なゴリラだな。冗談も通じやしない。
このくらいのジョークにも乗っかれないようではダメだと思う。
ヤバい仕事なんて、こんな突然来て頼まないだろ。
「「…………」」
って、ニックさん始め大工衆が、みんな無言になったんだが。微妙な感じだ。ゴリラな顔も雰囲気も。
なんだろう。俺、変なこと言ったか? ジョークは必要なかった。それとも金が足りなかったのか?
「それは、オレたちが城に行ってもいいってことですかい?」
「おかしなことを言うね。現場が城なんだから、城に行くに決まってるだろ? あっ、送迎はゴンドラを使うんだ。知ってるだろうけど」
「見てはいる。けど、城に上がれるのは許可のあるヤツだけだ。そして現在。そんなヤツはいねぇ」
「……んっ?」
このゴリラは何を言ってんだと一瞬思ったが、言われてみるとそうかもしれない。
兵士やメイドさんはいるが、彼らは上がってきているわけではない。城に住んでいるんだから。
城が、空にあるからってのが一番考えられる理由だけど。
「なら、許可は権力者である俺が出そう。『──いいよ!』これでいいか? きちんとした書面で必要だというなら用意してもらうけど」
「いや、大丈夫だ。それよりだ。バレンタインだったか? あれもだが、にいちゃんは何なんだ?」
「あれーーっ!? そこから説明しないとダメなのか。この格好が全てを語ってないかい!?」
「使いだってのは分かる。人間だってのもだ。だが、それだけだ」
城という場所は、普通は市民は入らない場所なのか? 日本にそんなところはないし。分からないな。
異世界には異世界のルールがあるのかもしれない。けど。
「俺はプロデューサーという役職だ。イベントの企画と運営が仕事だな。それで俺はこの世界を変える。これまでダメだったというのなら、今日から変える! 自由に出入りしていいよと勝手には言えないが、用のある人くらいは入れるようにしよう」
「そんなこと勝手に言っていいのか?」
「──いいって言ってんだろ!? 頼りになりそうなのは見た目だけか。これまでがどうだったかは知らない。だが、これからは違う! 難癖つけるヤツがいたら、お姫様にチクってシメてもらう! だから大丈夫だ!」
「……分かった。いつから始めればいい?」
おーーっ、やってくれるらしい。これで1つ目はクリアだ! 流石は俺!
戻ったら難癖付けられないように、お姫様に言っておこう。あれなら王様にも言っておこう。
「いつから、──今日だ!」
「今日!? これからってことか?」
全員が大変驚かれているが今日からだ。もう、一刻も早く取り掛かってほしい。
何故なら、『──やる事などいくらでもある!』からだ。
「そういうわけなんでゴンドラのところに集合ね。今日中に下見だけでもしてほしい。そんで、パパッと直してほしい」
「いや、そんな急には……。人手が足りねぇよ」
そうなんだろう。ニックさん率いる大工集団ゴリラ組は10人しかいない。この人数でパパッとは無理かもしれない。
だが、俺はそのくらいのことは知っていた。んでもって考えもある。
「任せろ。俺に考えがある。ニックさんも弟子が欲しいだろ? 大工はこれから儲かるからな。俺はもう少し時間がかかる。そうだな……1時間後くらいにゴンドラのところに集合な」
「あぁ……」
「じゃあ、よろしくお願いしますね」
さて、次は探すところからか。ヤツらはどこにいるのか?
現状、ヤツらの生息地も生態も不明。
あんなのを探し回るのは避けたいから、まずは情報のありそうなところに行こう!
※
「──というわけなんだけど。ミルクちゃん、彼らがどこにいるか知ってる?」
情報通。お姫様のお友達。ネコミミ。ある部分が、お姫様の数倍の破壊力。天使よりもスゴい破壊力。
そんな彼女、ミルクちゃんに話を聞きにきた。
「定職にもつかずフラフラしてる人たちのことなんてわかりません。あっ、プロデューサーさん。そっち持ってください」
「ああ、このくらいなら構わないけど……。けどね。俺は忙しいんだよ?」
「私だって忙しいです。いよいよ開店が近いですから」
先週よりだいぶコンビニはできているし、忙しいのは本当だな。開店まであと少しというところか。
ミルクちゃん1人でやってるのが進みが遅い理由なわけだが、人手不足はコンビニに限った話じゃないしな。
んっ? 異世界にコンビニがあるのかって?
あるだろう。コンビニくらい。というのはもちろん嘘だ。
これは悪魔の仕事だ。フランチャイズがどうにかなっているわけではないから安心しろ。
その異世界コンビニ1号店がミルクちゃんのお店だ。彼女もまた、俺やお姫様のようにつまらないと思っていた人……ネコ? であり、彼女は玩具に可能性を見出したのだろう。
主に玩具とお菓子をメインに扱うのが異世界コンビニだ。後の品物はコンビニと変わらない。
「次はそれをこっちに運んでください。それで棚に並べてください」
「あぁ……」
で、俺はコンビニを手伝うということになってはいる。だがね。こういう手伝うは今じゃなくてもいいと思うんだ。もっと時間がある時とかにしてはくれないだろうか?
「終わったよ」
「じゃあ、次は──」
これ以上は時間的にも無理だ。断らなくては。永遠と雑用させられてしまう。
見損なわれている身としては、少しでも好感度を上げていきたいのだが、今は無理だ。
「いや、次はじゃなくて! 人と待ち合わせしてるし、アンチを探さないといけないからさ。また来るよ」
「そうですか、わかりました。またお願いします。アンチさんたちなら、酒場で飲んだくれてるはずです」
「……知ってんじゃん。どこにいるのか知ってんじゃん!」
この娘はー、いつぞやのようにネコミミとシッポをこれでもかというくらい触ってやるぞ! なんて、お姫様が怖いから実際にはやらないけどね。
「プロデューサーさん。タダというのはいけないと思います。何事も持ちつ持たれつです」
「そうだねー、ミルクちゃんまたね」
「はい、またお願いします」
俺は彼女を舐めていた。
巨乳でネコミミなだけではなかった。
やっぱり商売人だね。タダでは済まないとは。
俺が手伝ってる間は教えず。下手すると、手伝わなかったら教えてくれなかったかもしれない。
ま、まあ、居場所はわかったし。良しとしよう。
※
酒というのは異世界だろうと存在するらしい。酔っ払いもか。これだけは世界共通なのか。
問題のアンチたちは、酒代だけを日々稼ぎながら、その日暮らしな生活をしているようだ……。ダメなヤツらだ。
そんな彼らには真っ当な仕事が必要だろう。だから、これは許されるはずだ。
正義は俺にある。誰も損しない。つまり俺は悪くない!
「現在、お姫様がそれはそれは大変。どうしようもないくらいお困りなんだ。はしゃいでうっかり城門に庭。オマケに城まで破壊してしまってな……。このままでは、お姫様は────!」
「ど、どうなっちまうんだ!? オレたちの女神様は! おい、にいちゃん。教えてくれよ!」
えっ、お姫様はアンチの中で女神様にまでなってんのか……。
もう、かつてのアンチはおらず、アンチは熱狂的なお姫様の信者になってしまった。狂信的なか。
「まず王様にこっぴどく叱られ。次にイケメンにこっぴどく叱られ。次は執事の悪魔からこっぴどく叱られ。そうして回り回って俺の番が来てしまった……。だけど、俺はもう彼女を叱れない! もう散々叱られているんだから!」
「……ひでぇ話だ」
「そうなんだ。だから俺はお姫様を助けたい!」
「ど、どうにかなるのか?」
「──なる! 壊したところを直しさえすれば、俺は叱らずに済むし、お姫様はもう誰にも怒られない。理由がなくなって叱るヤツはいない。だが、それには人手が足りないんだ……」
酔いがさめるくらいの衝撃がヤツらにはあったらしい。最初は楽しげな雰囲気だったのが、今はお通夜かよっていうくらいに冷え込んでいる。
これは俺の話を信じているからであり、どうにかできるならしてやりたいということだろう。女神様らしいし。
つまり、この雰囲気ならいける!
「だから……──お前たちの力を貸してくれ! 直せるところは全部直して、お姫様の名誉を回復したいんだ!」
「こんなオレたちでも役に立つのか?」
「安心しろ。ニックさんという大工さんに話はしてある。お前たちにお姫様を助けたいという気持ちだけあればいいんだ。後はニックさんが教えてくれる」
「わかった! オレたちは、お姫様にはチョコレートをもらっちまった。聞いた話だとホワイトデーに恩を返さなけりゃならないらしい。恩返しをするぜ!」
そうか。ホワイトデーがあったな。
忘れていたわけではないが、ギリギリになって用意するより、前もって用意しておかなければな。
「じゃあ、集められるだけアンチを集めて、城へのゴンドラに集合だ! 今日は顔合わせになる」
「おう! オレたちに任せてくれ。ところで、にいちゃんよ。オレらが城に上がれんのか?」
「お前たちもか……。上がれる! 無理だと言われたら、お姫様が何とかしてくれる! だから大丈夫だ!」
「流石だぜ」
アンチがチョロくて助かった。
これにて労働力の確保も完了っと。
しかし、ホワイトデーか……。
買うというのが確実かつ無難。
作るというのは無理かつ無謀。
だから、大人しく何を買うのかを検討しよう。
しかし、悪魔に頼むというのは正直よろしくない。
何故なら、ビックリするくらいの修繕費を請求されるだろう。そして払えなければ、寿命とかをバリバリ取られるだろう。悪魔というのはそんなヤツらだと思う。
あっ──、これは俺の個人的な想像です。実際とは異なる場合があります。
よし! これで万が一の時も誤魔化せる。
まあ、あまり関わりたくない悪魔には頼らず、普通に大工さんを頼ろうという話だ。
そういえばバレンタインの時に、大工さんと知り合ったのを思い出したんだ。
ゴリラだと思ったら城下の人であり、ゴリラだと思ったら大工さんだった。
そんな彼に、城門を直してはくれないかと直接頼みにきました。早い方がいいからね。
「こないだはすまなかったね。急に異世界感が強くなって。こう、気持ちが盛り上がってしまってね」
「はぁ……今日は何かご用で?」
「ニックさん。あんた大工さんだったよね。急で悪いんだが、これで仕事を頼みたいんだ。どうだろうか?」
突然だし信用もない。なので金はいると予想し、予め用意してきた。ニクスが寄こした額なので問題もないと思う。
それに、どうせ請求書の大半は天使にいくんだ。財政にも響くまい。
「こ、こんなに……。その仕事っていうのは、ヤバい仕事で?」
「そうなんだ。実は──」
「──やめだやめ! そんなヤバい話はお断りだ!」
「冗談だよ。女子たちがぶっ壊した城門と城の一部。あと、できるなら庭もか。その修理を頼みたいんだ」
真面目なゴリラだな。冗談も通じやしない。
このくらいのジョークにも乗っかれないようではダメだと思う。
ヤバい仕事なんて、こんな突然来て頼まないだろ。
「「…………」」
って、ニックさん始め大工衆が、みんな無言になったんだが。微妙な感じだ。ゴリラな顔も雰囲気も。
なんだろう。俺、変なこと言ったか? ジョークは必要なかった。それとも金が足りなかったのか?
「それは、オレたちが城に行ってもいいってことですかい?」
「おかしなことを言うね。現場が城なんだから、城に行くに決まってるだろ? あっ、送迎はゴンドラを使うんだ。知ってるだろうけど」
「見てはいる。けど、城に上がれるのは許可のあるヤツだけだ。そして現在。そんなヤツはいねぇ」
「……んっ?」
このゴリラは何を言ってんだと一瞬思ったが、言われてみるとそうかもしれない。
兵士やメイドさんはいるが、彼らは上がってきているわけではない。城に住んでいるんだから。
城が、空にあるからってのが一番考えられる理由だけど。
「なら、許可は権力者である俺が出そう。『──いいよ!』これでいいか? きちんとした書面で必要だというなら用意してもらうけど」
「いや、大丈夫だ。それよりだ。バレンタインだったか? あれもだが、にいちゃんは何なんだ?」
「あれーーっ!? そこから説明しないとダメなのか。この格好が全てを語ってないかい!?」
「使いだってのは分かる。人間だってのもだ。だが、それだけだ」
城という場所は、普通は市民は入らない場所なのか? 日本にそんなところはないし。分からないな。
異世界には異世界のルールがあるのかもしれない。けど。
「俺はプロデューサーという役職だ。イベントの企画と運営が仕事だな。それで俺はこの世界を変える。これまでダメだったというのなら、今日から変える! 自由に出入りしていいよと勝手には言えないが、用のある人くらいは入れるようにしよう」
「そんなこと勝手に言っていいのか?」
「──いいって言ってんだろ!? 頼りになりそうなのは見た目だけか。これまでがどうだったかは知らない。だが、これからは違う! 難癖つけるヤツがいたら、お姫様にチクってシメてもらう! だから大丈夫だ!」
「……分かった。いつから始めればいい?」
おーーっ、やってくれるらしい。これで1つ目はクリアだ! 流石は俺!
戻ったら難癖付けられないように、お姫様に言っておこう。あれなら王様にも言っておこう。
「いつから、──今日だ!」
「今日!? これからってことか?」
全員が大変驚かれているが今日からだ。もう、一刻も早く取り掛かってほしい。
何故なら、『──やる事などいくらでもある!』からだ。
「そういうわけなんでゴンドラのところに集合ね。今日中に下見だけでもしてほしい。そんで、パパッと直してほしい」
「いや、そんな急には……。人手が足りねぇよ」
そうなんだろう。ニックさん率いる大工集団ゴリラ組は10人しかいない。この人数でパパッとは無理かもしれない。
だが、俺はそのくらいのことは知っていた。んでもって考えもある。
「任せろ。俺に考えがある。ニックさんも弟子が欲しいだろ? 大工はこれから儲かるからな。俺はもう少し時間がかかる。そうだな……1時間後くらいにゴンドラのところに集合な」
「あぁ……」
「じゃあ、よろしくお願いしますね」
さて、次は探すところからか。ヤツらはどこにいるのか?
現状、ヤツらの生息地も生態も不明。
あんなのを探し回るのは避けたいから、まずは情報のありそうなところに行こう!
※
「──というわけなんだけど。ミルクちゃん、彼らがどこにいるか知ってる?」
情報通。お姫様のお友達。ネコミミ。ある部分が、お姫様の数倍の破壊力。天使よりもスゴい破壊力。
そんな彼女、ミルクちゃんに話を聞きにきた。
「定職にもつかずフラフラしてる人たちのことなんてわかりません。あっ、プロデューサーさん。そっち持ってください」
「ああ、このくらいなら構わないけど……。けどね。俺は忙しいんだよ?」
「私だって忙しいです。いよいよ開店が近いですから」
先週よりだいぶコンビニはできているし、忙しいのは本当だな。開店まであと少しというところか。
ミルクちゃん1人でやってるのが進みが遅い理由なわけだが、人手不足はコンビニに限った話じゃないしな。
んっ? 異世界にコンビニがあるのかって?
あるだろう。コンビニくらい。というのはもちろん嘘だ。
これは悪魔の仕事だ。フランチャイズがどうにかなっているわけではないから安心しろ。
その異世界コンビニ1号店がミルクちゃんのお店だ。彼女もまた、俺やお姫様のようにつまらないと思っていた人……ネコ? であり、彼女は玩具に可能性を見出したのだろう。
主に玩具とお菓子をメインに扱うのが異世界コンビニだ。後の品物はコンビニと変わらない。
「次はそれをこっちに運んでください。それで棚に並べてください」
「あぁ……」
で、俺はコンビニを手伝うということになってはいる。だがね。こういう手伝うは今じゃなくてもいいと思うんだ。もっと時間がある時とかにしてはくれないだろうか?
「終わったよ」
「じゃあ、次は──」
これ以上は時間的にも無理だ。断らなくては。永遠と雑用させられてしまう。
見損なわれている身としては、少しでも好感度を上げていきたいのだが、今は無理だ。
「いや、次はじゃなくて! 人と待ち合わせしてるし、アンチを探さないといけないからさ。また来るよ」
「そうですか、わかりました。またお願いします。アンチさんたちなら、酒場で飲んだくれてるはずです」
「……知ってんじゃん。どこにいるのか知ってんじゃん!」
この娘はー、いつぞやのようにネコミミとシッポをこれでもかというくらい触ってやるぞ! なんて、お姫様が怖いから実際にはやらないけどね。
「プロデューサーさん。タダというのはいけないと思います。何事も持ちつ持たれつです」
「そうだねー、ミルクちゃんまたね」
「はい、またお願いします」
俺は彼女を舐めていた。
巨乳でネコミミなだけではなかった。
やっぱり商売人だね。タダでは済まないとは。
俺が手伝ってる間は教えず。下手すると、手伝わなかったら教えてくれなかったかもしれない。
ま、まあ、居場所はわかったし。良しとしよう。
※
酒というのは異世界だろうと存在するらしい。酔っ払いもか。これだけは世界共通なのか。
問題のアンチたちは、酒代だけを日々稼ぎながら、その日暮らしな生活をしているようだ……。ダメなヤツらだ。
そんな彼らには真っ当な仕事が必要だろう。だから、これは許されるはずだ。
正義は俺にある。誰も損しない。つまり俺は悪くない!
「現在、お姫様がそれはそれは大変。どうしようもないくらいお困りなんだ。はしゃいでうっかり城門に庭。オマケに城まで破壊してしまってな……。このままでは、お姫様は────!」
「ど、どうなっちまうんだ!? オレたちの女神様は! おい、にいちゃん。教えてくれよ!」
えっ、お姫様はアンチの中で女神様にまでなってんのか……。
もう、かつてのアンチはおらず、アンチは熱狂的なお姫様の信者になってしまった。狂信的なか。
「まず王様にこっぴどく叱られ。次にイケメンにこっぴどく叱られ。次は執事の悪魔からこっぴどく叱られ。そうして回り回って俺の番が来てしまった……。だけど、俺はもう彼女を叱れない! もう散々叱られているんだから!」
「……ひでぇ話だ」
「そうなんだ。だから俺はお姫様を助けたい!」
「ど、どうにかなるのか?」
「──なる! 壊したところを直しさえすれば、俺は叱らずに済むし、お姫様はもう誰にも怒られない。理由がなくなって叱るヤツはいない。だが、それには人手が足りないんだ……」
酔いがさめるくらいの衝撃がヤツらにはあったらしい。最初は楽しげな雰囲気だったのが、今はお通夜かよっていうくらいに冷え込んでいる。
これは俺の話を信じているからであり、どうにかできるならしてやりたいということだろう。女神様らしいし。
つまり、この雰囲気ならいける!
「だから……──お前たちの力を貸してくれ! 直せるところは全部直して、お姫様の名誉を回復したいんだ!」
「こんなオレたちでも役に立つのか?」
「安心しろ。ニックさんという大工さんに話はしてある。お前たちにお姫様を助けたいという気持ちだけあればいいんだ。後はニックさんが教えてくれる」
「わかった! オレたちは、お姫様にはチョコレートをもらっちまった。聞いた話だとホワイトデーに恩を返さなけりゃならないらしい。恩返しをするぜ!」
そうか。ホワイトデーがあったな。
忘れていたわけではないが、ギリギリになって用意するより、前もって用意しておかなければな。
「じゃあ、集められるだけアンチを集めて、城へのゴンドラに集合だ! 今日は顔合わせになる」
「おう! オレたちに任せてくれ。ところで、にいちゃんよ。オレらが城に上がれんのか?」
「お前たちもか……。上がれる! 無理だと言われたら、お姫様が何とかしてくれる! だから大丈夫だ!」
「流石だぜ」
アンチがチョロくて助かった。
これにて労働力の確保も完了っと。
しかし、ホワイトデーか……。
買うというのが確実かつ無難。
作るというのは無理かつ無謀。
だから、大人しく何を買うのかを検討しよう。
0
お気に入りに追加
21
あなたにおすすめの小説
好色一代勇者 〜ナンパ師勇者は、ハッタリと機転で窮地を切り抜ける!〜(アルファポリス版)
朽縄咲良
ファンタジー
【HJ小説大賞2020後期1次選考通過作品(ノベルアッププラスにて)】
バルサ王国首都チュプリの夜の街を闊歩する、自称「天下無敵の色事師」ジャスミンが、自分の下半身の不始末から招いたピンチ。その危地を救ってくれたラバッテリア教の大教主に誘われ、神殿の下働きとして身を隠す。
それと同じ頃、バルサ王国東端のダリア山では、最近メキメキと発展し、王国の平和を脅かすダリア傭兵団と、王国最強のワイマーレ騎士団が激突する。
ワイマーレ騎士団の圧勝かと思われたその時、ダリア傭兵団団長シュダと、謎の老女が戦場に現れ――。
ジャスミンは、口先とハッタリと機転で、一筋縄ではいかない状況を飄々と渡り歩いていく――!
天下無敵の色事師ジャスミン。
新米神官パーム。
傭兵ヒース。
ダリア傭兵団団長シュダ。
銀の死神ゼラ。
復讐者アザレア。
…………
様々な人物が、徐々に絡まり、収束する……
壮大(?)なハイファンタジー!
*表紙イラストは、澄石アラン様から頂きました! ありがとうございます!
・小説家になろう、ノベルアッププラスにも掲載しております(一部加筆・補筆あり)。
ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる
街風
ファンタジー
「お前を追放する!」
ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。
しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
【取り下げ予定】愛されない妃ですので。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃になんて、望んでなったわけではない。
国王夫妻のリュシアンとミレーゼの関係は冷えきっていた。
「僕はきみを愛していない」
はっきりそう告げた彼は、ミレーゼ以外の女性を抱き、愛を囁いた。
『お飾り王妃』の名を戴くミレーゼだが、ある日彼女は側妃たちの諍いに巻き込まれ、命を落としてしまう。
(ああ、私の人生ってなんだったんだろう──?)
そう思って人生に終止符を打ったミレーゼだったが、気がつくと結婚前に戻っていた。
しかも、別の人間になっている?
なぜか見知らぬ伯爵令嬢になってしまったミレーゼだが、彼女は決意する。新たな人生、今度はリュシアンに関わることなく、平凡で優しい幸せを掴もう、と。
*年齢制限を18→15に変更しました。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
テンプレな異世界を楽しんでね♪~元おっさんの異世界生活~【加筆修正版】
永倉伊織
ファンタジー
神の力によって異世界に転生した長倉真八(39歳)、転生した世界は彼のよく知る「異世界小説」のような世界だった。
転生した彼の身体は20歳の若者になったが、精神は何故か39歳のおっさんのままだった。
こうして元おっさんとして第2の人生を歩む事になった彼は異世界小説でよくある展開、いわゆるテンプレな出来事に巻き込まれながらも、出逢いや別れ、時には仲間とゆる~い冒険の旅に出たり
授かった能力を使いつつも普通に生きていこうとする、おっさんの物語である。
◇ ◇ ◇
本作は主人公が異世界で「生活」していく事がメインのお話しなので、派手な出来事は起こりません。
序盤は1話あたりの文字数が少なめですが
全体的には1話2000文字前後でサクッと読める内容を目指してます。
【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?
歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。
それから数十年が経ち、気づけば38歳。
のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。
しかしーー
「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」
突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。
これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。
※書籍化のため更新をストップします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる