たっくん

KZ

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たっくん

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 校長先生から聞いた事と自分が見たものの整理がつかなくてそのまま家に帰る気にはなれず、帰り道にある神社のところで私たちはたっくんとすれ違った時のことを話し合いました。

「……私も気になったことがあるんだよね。たっくんとはすれ違った、、、、、んでしょ?」

 その中で環奈かんなに言われて気づいたのですが、私たちはたっくんとすれ違った、、、、、のです。
 たっくんは事故にあったトンネルから遠ざかっていっていたのにトンネルの中で電車に撥ねられているのです……。
 たっくんは私たちとすれ違った後でまた線路下のあの場所に戻って、今度は二メートル以上は上にある線路に上がってトンネルの中に入ってしまったのでしょうか?

「朝、海のとこのコンビニでいなくなったらしい。警察も呼んでみんなで探したんだけど見つからなくてな……」

 校長先生が教えてくれたあの日のたっくんの行動は、お母さんと訪れた近所の海沿いのコンビニから一人でいなくなったというもの。
 その後で土地勘があったのかどうかわからない一キロ以上は離れた場所に行き、その辺りにずっと一人でいて最終的に事故にあった。
 どうしてたっくんはこの時に限って勝手に一人で行動したのでしょう? たっくんはいったい何を思って、何をするためにそうしたのでしょう……。

 もし仮に一人で行動してしまい道に迷ったんだとしても、夏休み中でみんなが遊び歩く中、誰一人としてたっくんに気が付かなかったのでしょうか?
 例えばマンションの前は公園になっていて、マンションの子たちはもちろんそれ以外の子たちも毎日遊ぶ場所だったのに。私たちのように陸橋下のこの道をみんなが使っていたはずなのに。

「事故の正確な時間はわからないそうだ。おそらく午前中だろうと聞いた。だから午後になってたっくんに会ったなんて誰にも言うなよ」

 私は午前中の部活が終わって、家に帰って着替えてお昼を食べ。それからコンビニに集まって、環奈の住むマンションに向かう途中でたっくんとすれ違いました。
 間違いなく時間は十三時を過ぎていました。
 なら、私が見たたっくんは事故にあう前と後どちらだったのでしょう?

「うん、たっくんだった。でも笑ってはなかったよ。私は目も合わなかった。 ……美嘉みかちゃんはさ。あのたっくんは本当に、、、たっくんだったと思う?」

 俊子としこが言ったようにあのたっくんは本当に生きた人間だったのでしょうか?
 そしてどうして私にだけ笑ったでしょうか?
 今さら何も知ることはできないのですが、私は今でもあの時のたっくんの笑顔を覚えています……。
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