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もふもふの都開国編
337話 ポンズ
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傀儡糸を発動する。
本日、二度目となるため――身体への負担は大きいが、今は四の五の言っている場合ではない。触診を視神経にまで張り巡らせ、崩落の隙間を縫っていく。一分一秒が命運を分ける状況、全力で突き進みその果てに掴み取るのだ。
「……いた」
脱出地点、ポンズが横たわっていた。
すでに生き埋めになっていたら、どこかに移動していたらという――最悪の未来は待ち受けていなかった。
まずは、その奇跡に――感謝する。
「ポンズ、お待たせ」
「……クーラ、さん? どうして来たの? もう間もなくこの巣穴は崩壊する。このままだと、最後にうちが頑張った意味がない」
僕はポンズを抱き起こす。
脱力した状態、完全に――魔力の欠乏症だろう。言葉だけを鵜呑みにせず、ポンズの身体を労るべきだった。
ポンズは僕を拒むよう首を振りながら、
「……クーラさん、うちのことは置いて」
「僕はまだ君と一緒にいたいんだ」
ポンズの言葉に被せるよう、先ほどの疑問に即答する。
「だから、迎えに来た」
「……なにを、言って」
「ペルファリア大山脈の滞在期間、短い時間ではあったけれど――君と過ごした日々は心地よかった。僕たちを脱出させるために、全力を尽くしてくれた君はとても綺麗で見惚れてしまったよ」
「……」
「何度でも言う。ポンズ、僕はまだ君と一緒にいたい」
崩落が続く中、僕たちは見つめ合う。
今ここで、この場所で――ポンズの気持ちを聞くべきだと思った。出会いは敵と味方だった僕たち、今は雇い主と雇い人、今後どんな関係性になっていくのか。
新しい道を示さない限り、ポンズは来ないと思った。
「……なんだか、愛の告白みたい」
ポンズがクスッと笑う。
「僕も口にしてからそう思った」
「……契約期間、残ってるもんね」
「永遠に更新するつもりだよ」
「……それじゃあ、一生逃げられないよ」
「ポンズ、一つ賭けをしないかな」
「……賭け?」
僕は地上を見上げる。
崩落は激化中、あと一分もしないうちに僕たちは生き埋めとなる。
この隙間を掻い潜っていくとなると――運の要素が大きい。
「もし、無事にここから脱出できたら――もう一度、考え直してくれないかな」
「いいよ」
「え、いいのっ?!」
呆気なく承諾される。
「驚かないでよ。クーラさんの賭けは成功すると見越して、うちも今この瞬間から生まれ変わってみせるから」
「……ポンズ」
「ふふ。連れて帰ってね」
その言葉に――僕は力強く頷き返すのであった。
本日、二度目となるため――身体への負担は大きいが、今は四の五の言っている場合ではない。触診を視神経にまで張り巡らせ、崩落の隙間を縫っていく。一分一秒が命運を分ける状況、全力で突き進みその果てに掴み取るのだ。
「……いた」
脱出地点、ポンズが横たわっていた。
すでに生き埋めになっていたら、どこかに移動していたらという――最悪の未来は待ち受けていなかった。
まずは、その奇跡に――感謝する。
「ポンズ、お待たせ」
「……クーラ、さん? どうして来たの? もう間もなくこの巣穴は崩壊する。このままだと、最後にうちが頑張った意味がない」
僕はポンズを抱き起こす。
脱力した状態、完全に――魔力の欠乏症だろう。言葉だけを鵜呑みにせず、ポンズの身体を労るべきだった。
ポンズは僕を拒むよう首を振りながら、
「……クーラさん、うちのことは置いて」
「僕はまだ君と一緒にいたいんだ」
ポンズの言葉に被せるよう、先ほどの疑問に即答する。
「だから、迎えに来た」
「……なにを、言って」
「ペルファリア大山脈の滞在期間、短い時間ではあったけれど――君と過ごした日々は心地よかった。僕たちを脱出させるために、全力を尽くしてくれた君はとても綺麗で見惚れてしまったよ」
「……」
「何度でも言う。ポンズ、僕はまだ君と一緒にいたい」
崩落が続く中、僕たちは見つめ合う。
今ここで、この場所で――ポンズの気持ちを聞くべきだと思った。出会いは敵と味方だった僕たち、今は雇い主と雇い人、今後どんな関係性になっていくのか。
新しい道を示さない限り、ポンズは来ないと思った。
「……なんだか、愛の告白みたい」
ポンズがクスッと笑う。
「僕も口にしてからそう思った」
「……契約期間、残ってるもんね」
「永遠に更新するつもりだよ」
「……それじゃあ、一生逃げられないよ」
「ポンズ、一つ賭けをしないかな」
「……賭け?」
僕は地上を見上げる。
崩落は激化中、あと一分もしないうちに僕たちは生き埋めとなる。
この隙間を掻い潜っていくとなると――運の要素が大きい。
「もし、無事にここから脱出できたら――もう一度、考え直してくれないかな」
「いいよ」
「え、いいのっ?!」
呆気なく承諾される。
「驚かないでよ。クーラさんの賭けは成功すると見越して、うちも今この瞬間から生まれ変わってみせるから」
「……ポンズ」
「ふふ。連れて帰ってね」
その言葉に――僕は力強く頷き返すのであった。
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