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もふもふの都開国編

304話 強制フラグ

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 マイマイは湯呑みに粉末茶を大量に入れながら、

「マイマイは濃いのが大好きネ。皆も適当に味は調整してヨ」

 時短も兼ねた職人的な自由さを感じる。

「それで、本題に入る前に――マイマイからもお願いがあるネ」

 マイマイが――お願い? 
 普段、依頼を受けてお願いを聞く立場だろう。そんなマイマイの一言に僕は首を傾げて返す。

「今、生産職プレイヤーが――根こそぎ消息不明になっているヨ」

 マイマイは言う。

「マイマイのフレンド、腕の立つ職人たちも皆いなくなったネ。よからぬことが起きているのは間違いないヨ」
「穏便じゃない話だね。マイマイのお願いは、それに関係したものなのかな」
「端的に言うと、マイマイを保護してほしいネ。マイマイは生産職、ジョブは――『錬金術師』ヨ。戦闘力は皆無、もし消息不明の理由が悪者による拉致だった場合、抗う術が全くないネ」

 マイマイはヨヨヨと崩れ落ちながら、

「この身体、弄ばれてしまうヨ」
「弄ばれるかは置いといて、幸い――僕たちは前衛職だ。守り切ると断言はできないけれど、国作りを手伝ってくれる協力者を見捨てたりはしない」
「"Nightmares"のホームにいたら、早々に手は出してこないと思うネ」
「そうだね。一番手っ取り早いと思うよ」

 この工房に一人でいるより、安全性は飛躍的に上昇するだろう。

「ちなみに、ソラたんたちの今の構成はどうなってる?」

 僕は現状を説明する。

「え、ヒーラーいないとか脳筋すぎるヨ」

 返す言葉もない。
 王都待機組も含め、今組めるパーティー構成は触術師、魔法少女、武者、忍者、精霊術師である。

「一応、僕とナコが簡易的なヒーラの役割もできるよ」
「いや、普通に本職のヒーラーいる方がいいヨ」
「正論すぎる」

 しかし、身近には存在しない。
 いずれ、仲間に加えたという気持ちはあるが――可能であれば、僕たちの事情を知る立場のプレイヤーが望ましい。
 マイマイと同じく、思い当たる節はあった。

「まっ、それを差し引いても"Nightmares"なら安心っていう。生産職プレイヤーの一件が収まるまで厄介になるヨ」

 今後については――まとまった。
 善は急げと、一度王都に帰還することにする。マイマイの話が本当ならば、すぐにこの場を離れるのが得策だろう。
 だが、この世界の理不尽からは――簡単には逃れられない。
 ゲーム時のイベントのように、強制フラグでも立っているのか――いやなタイミングで訪れるのが常であった。

「ソラ、警戒して」

 ゴザルが抜刀する。
 その表情は――先ほどのゴザルとは打って変わって、完全な戦闘状態に入った眼差しをしていた。
 忍び寄る悪意、魔力を感知したのだろう。

「数は3人、こっちに向かって駆け走って来る――強いわよ」

 ハッキリと、そう口にした。
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