上 下
294 / 359
もふもふの都開国編

293話 ヤバい予感

しおりを挟む
 数日後。
 風花さんたちも回復し、紅桜組もある程度立て直したのを見届けてから――僕たちはサンサンを旅立つ。今回の騒動、辻斬の一件により紅桜組は致命的な打撃を受けたが、局長曰く白雪と連携して取り戻していくと話していた。
 普段の巡回に――ドラゴンも参加するようだ。
 これほど心強いことはないだろう。あの戦闘以来、アラシは――本人が国を撤退するといった言葉通り、その姿は確認できなかった。
 それに応じて、辻斬の騒ぎも――綺麗さっぱり消え去った。

「問題は解決したようで――全くしていないか」

 エアーの上、僕は独りごちる。
 サンサンに降りかかる脅威は一時的に落ち着いたものの、次また同じことが起きないという保証は――どこにもないのだ。
 やはり、"Freedom"の残党を――完全に潰し切るしかない。
 新たなギルドの存在も気になる。
 アラシですら狂いに狂っていると口にする限り、どんな人物か――現段階では想像もつかない。
 いずれ、わかると――アラシは言っていた。

「後手に回り続けるのは、不愉快な気分だな」

 また、独りごちる。
 こちらから打って出るという強硬手段もあるが――今は情報が少なすぎる。癪ではあるが下手に動くよりは待機する他ない。
 色々なことを思案している間に、僕たちの慣れ親しんだ大陸が見えてくる。
 エアーによる高速移動、王都は――間もなくだった。
 留守を任せていた二人はどうしているだろう。すぐに帰るつもりが一週間以上過ぎてしまった。もとの世界であった連絡ツールがない今、せめてフレンドリストで安否確認と言いたいところではあるが、それも魔力の粒子になった後遺症により、機能が完全に停止してしまっている状況だ。
 うん、これは――絶対に不味い。

「……ゴザルとホムラ、怒ってないかな」
「怒っていると思います」
「だよね」
「ホムラお姉ちゃんに注意してください。クーラになにを仕掛けてくるかわかりません」
「今ならゴザルも加勢しそうだよね」

 か、帰るのが――怖くなってきた。
 僕たちは"Nightmares"のホーム、その庭に降り立つ――エアーの音を聞きつけてか、早速とばかりにゴザルとホムラが歩み寄って来る。
 そのゆっくりとした足取りが、また僕の恐怖心を上乗せしてくる。
 ゴザルとホムラは満面の笑顔――もうヤバい、これは絶対にヤバい。僕は慌ててナコに再度飛び立つようお願いする。
 だが、超越者たる二人に――安易な逃亡など通用するわけがなかった。

「ソラ、連絡も残さず大胆に遅いお帰りね」
「ソラちゃん、大人が子供を連れ回すにしては――ちょっと、ちょーっと、非常識すぎる期間かなぁ?」

 一瞬にして、前後に立ち塞がれる。
 僕は抵抗する間もなく――拘束されるのであった。
しおりを挟む
感想 25

あなたにおすすめの小説

ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い

平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。 ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。 かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。

王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します

有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。 妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。 さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。 そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。 そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。 現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!

俺だけレベルアップできる件~ゴミスキル【上昇】のせいで実家を追放されたが、レベルアップできる俺は世界最強に。今更土下座したところでもう遅い〜

平山和人
ファンタジー
賢者の一族に産まれたカイトは幼いころから神童と呼ばれ、周囲の期待を一心に集めていたが、15歳の成人の儀で【上昇】というスキルを授けられた。 『物質を少しだけ浮かせる』だけのゴミスキルだと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。 途方にくれるカイトは偶然、【上昇】の真の力に気づく。それは産まれた時から決まり、不変であるレベルを上げることができるスキルであったのだ。 この世界で唯一、レベルアップできるようになったカイトは、モンスターを倒し、ステータスを上げていく。 その結果、カイトは世界中に名を轟かす世界最強の冒険者となった。 一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトを追放したことを後悔するのであった。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

悪役貴族の四男に転生した俺は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めたかった。

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
俺は何もしてないのに兄達のせいで悪役貴族扱いされているんだが…… アーノルドは名門貴族クローリー家の四男に転生した。家の掲げる独立独行の家訓のため、剣技に魔術果ては鍛冶師の技術を身に着けた。 そして15歳となった現在。アーノルドは、魔剣士を育成する教育機関に入学するのだが、親戚や上の兄達のせいで悪役扱いをされ、付いた渾名は【悪役公子】。  実家ではやりたくもない【付与魔術】をやらされ、学園に通っていても心の無い言葉を投げかけられる日々に嫌気がさした俺は、自由を求めて冒険者になる事にした。  剣術ではなく刀を打ち刀を使う彼は、憧れの自由と、美味いメシとスローライフを求めて、時に戦い。時にメシを食らい、時に剣を打つ。  アーノルドの第二の人生が幕を開ける。しかし、同級生で仲の悪いメイザース家の娘ミナに学園での態度が演技だと知られてしまい。アーノルドの理想の生活は、ハチャメチャなものになって行く。

チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい

616號
ファンタジー
 不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。

俺は善人にはなれない

気衒い
ファンタジー
とある過去を持つ青年が異世界へ。しかし、神様が転生させてくれた訳でも誰かが王城に召喚した訳でもない。気が付いたら、森の中にいたという状況だった。その後、青年は優秀なステータスと珍しい固有スキルを武器に異世界を渡り歩いていく。そして、道中で沢山の者と出会い、様々な経験をした青年の周りにはいつしか多くの仲間達が集っていた。これはそんな青年が異世界で誰も成し得なかった偉業を達成する物語。

大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる

遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」 「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」 S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。 村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。 しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。 とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。

処理中です...