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もふもふの都開国編
275話 勉強は嫌い
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鈴華姫の屋敷に――風花さん含む、僕たちで向かう。
隣接されてある病院に行ったことはあるが、鈴華姫の屋敷自体に足を踏み入れるのは初めてだったりする。
風花さんの顔パスにより、僕たちも無条件で中に入ることができた。
外観通りの和風な内装、どこか懐かしい雰囲気――一歩進むたび、木の床の軋む音がして風情を感じさせる。
「姫様は奥の座学室にいるはずだ」
「クーにぃ、座学ってなに?」
「勉強するって意味だよ」
「うげげっ」
ライカが露骨にいやそうな顔をする。
ライカの性格的に、めちゃくちゃ勉強嫌いそうだもんなぁ。風花さんもそれを察したのか、声を大にして笑い始める。
「あはは。ライカ殿は勉強が嫌いか? 斯く言う私も、吐き気がするくらいに嫌いで剣ばかり振っていたがな」
「んんー、好きな人っているのぉっ?」
「私は好きですよ。知らないことを知ることは――自分の成長を実感できる一番シンプルな方法だと思います」
ナコの言葉に――皆が目を丸くする。
「し、信じられん。ナコ殿、本気で言っているのか?」
「な、ナコちんってさぁ、本当に私と同じ小学生なの?」
「僕も同じことを思った。ナコって実は人生何周目かだったりしないよね? もうナコさんだよ、ナコさん」
「み、皆さん、からかわないでくださいっ」
そうこうしている間に――座学室にたどり着く。
風花さんが扉を開くと、黒板の前に見知った顔の人物が立っていた。どうやら、授業に関してもレイナさんが請け負っているようである。
レイナさんは僕たちの姿を見て嬉しそうに、
「クーラちゃんっ! 猫ちゃんじゃないっ!!」
「レイナさん、お久しぶり――授業中だったかな? 忙しい時にごめんね、終わるまで外で待っているよ」
「大丈夫よ。丁度、今終わったところだわ」
その前には――ぐったりとした鈴華姫がいた。
こってり絞られていたのか、目を回しながら天井を仰いでいる。黒板に記された内容を見る限り――かなり難易度が高いように思えた。イラスト付きで丁寧に書かれており、回復魔法に関しての効率的な使い方というのがわかる。
想像以上に――本格的であった。
「ふぇええ。レイナの授業は難しすぎるのじゃ」
「鈴華ちゃん、明日までにこの宿題だけはやっておいてね。ちゃんと覚えているかどうかの小テストもするから――点数が低い時は補習ね」
レイナさんがプリントの束を手渡す。
「ぎょわぁあああっ! もういやじゃあああああっ!!」
「ぶふっ、鈴華泣いてやんの」
「ああんっ?! どこのどいつの誰々じゃっ! 鈴華のことを鼻で笑っておる不埒なものは――ってライカではないかっ!?」
「情けないなぁ。ライカだったらこれくらいわかるよ」
「本当か? ならば、このプリントの問一の答えはなんじゃ?」
「んんー、これはねぇ」
「ライカ、頼りにしておるぞっ!」
「こ、これはねぇ」
ライカがプリントを眺めながら――黙り込む。
完全にお手上げ状態といわんばかりに、そそくさと後方に退避――ナコを前面に押し出しながら狼狽えたように言う。
「な、ナコちんが答えようかなぁ」
「この前後の回復値から計算するに、前衛との魔法距離✕障害物÷空気抵抗諸々、魔力消費量を考慮すると――レイナさん、こんな感じではないでしょうか?」
「ね、猫ちゃん。完璧な解答だわ」
身近に――天才がいた。
隣接されてある病院に行ったことはあるが、鈴華姫の屋敷自体に足を踏み入れるのは初めてだったりする。
風花さんの顔パスにより、僕たちも無条件で中に入ることができた。
外観通りの和風な内装、どこか懐かしい雰囲気――一歩進むたび、木の床の軋む音がして風情を感じさせる。
「姫様は奥の座学室にいるはずだ」
「クーにぃ、座学ってなに?」
「勉強するって意味だよ」
「うげげっ」
ライカが露骨にいやそうな顔をする。
ライカの性格的に、めちゃくちゃ勉強嫌いそうだもんなぁ。風花さんもそれを察したのか、声を大にして笑い始める。
「あはは。ライカ殿は勉強が嫌いか? 斯く言う私も、吐き気がするくらいに嫌いで剣ばかり振っていたがな」
「んんー、好きな人っているのぉっ?」
「私は好きですよ。知らないことを知ることは――自分の成長を実感できる一番シンプルな方法だと思います」
ナコの言葉に――皆が目を丸くする。
「し、信じられん。ナコ殿、本気で言っているのか?」
「な、ナコちんってさぁ、本当に私と同じ小学生なの?」
「僕も同じことを思った。ナコって実は人生何周目かだったりしないよね? もうナコさんだよ、ナコさん」
「み、皆さん、からかわないでくださいっ」
そうこうしている間に――座学室にたどり着く。
風花さんが扉を開くと、黒板の前に見知った顔の人物が立っていた。どうやら、授業に関してもレイナさんが請け負っているようである。
レイナさんは僕たちの姿を見て嬉しそうに、
「クーラちゃんっ! 猫ちゃんじゃないっ!!」
「レイナさん、お久しぶり――授業中だったかな? 忙しい時にごめんね、終わるまで外で待っているよ」
「大丈夫よ。丁度、今終わったところだわ」
その前には――ぐったりとした鈴華姫がいた。
こってり絞られていたのか、目を回しながら天井を仰いでいる。黒板に記された内容を見る限り――かなり難易度が高いように思えた。イラスト付きで丁寧に書かれており、回復魔法に関しての効率的な使い方というのがわかる。
想像以上に――本格的であった。
「ふぇええ。レイナの授業は難しすぎるのじゃ」
「鈴華ちゃん、明日までにこの宿題だけはやっておいてね。ちゃんと覚えているかどうかの小テストもするから――点数が低い時は補習ね」
レイナさんがプリントの束を手渡す。
「ぎょわぁあああっ! もういやじゃあああああっ!!」
「ぶふっ、鈴華泣いてやんの」
「ああんっ?! どこのどいつの誰々じゃっ! 鈴華のことを鼻で笑っておる不埒なものは――ってライカではないかっ!?」
「情けないなぁ。ライカだったらこれくらいわかるよ」
「本当か? ならば、このプリントの問一の答えはなんじゃ?」
「んんー、これはねぇ」
「ライカ、頼りにしておるぞっ!」
「こ、これはねぇ」
ライカがプリントを眺めながら――黙り込む。
完全にお手上げ状態といわんばかりに、そそくさと後方に退避――ナコを前面に押し出しながら狼狽えたように言う。
「な、ナコちんが答えようかなぁ」
「この前後の回復値から計算するに、前衛との魔法距離✕障害物÷空気抵抗諸々、魔力消費量を考慮すると――レイナさん、こんな感じではないでしょうか?」
「ね、猫ちゃん。完璧な解答だわ」
身近に――天才がいた。
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