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もふもふの都開国編
269話 王であった存在
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「触術師クーラ、お前はここになにをしにきた?」
その問いかけに、僕は即答する。
「火の都サラマンの跡地に――国を建てようと考えている」
「我はもう敗者となった身だ。この世界では全て奪われるのが道理、お前の望む通りに動くといいであろう」
「奪い返そうと思わないのか?」
「先刻も言った通り、今の我には――野心がない。この身体に移り変わった後遺症、スキルの副作用がそうさせているのかもしれぬがな」
フレイムドルフが自身の手を見つめる。
己を客観的に見直すような行為、不安定な状態に置かれていることがわかった。今の言葉から察するに、特殊な方法で生き延びたということが想像できる。
僕はフレイムドルフに問い返す。
「まさか、魂を――移動させたのか?」
「正解だ。我がスキルの後付を開発していたのは知っているだろう。お前たちの転生をアイディアに――新たな道を作り出したのだ」
炎花の女将軍ヒオウを思い出す。
彼女もまた自身を改造し、ゲーム時には存在しなかったスキル――"自縄《じじょう》の解放"を習得していたからだ。
力に対する執着――恐ろしい男である。
「スキルは――"生変"と名付けた。お前もすでに気付いているであろうが、自由に器を選択して魂が移動できるわけではない」
「選択できるのなら、ゴザルを選んでいただろう」
「その通りだ。我が死んだ際、周囲にいるもの――魂の質が脆弱なもののみ、上書きすることが可能となる。お前たちは魂が類まれないくらいに強い、あの瞬間は操舵者以外に選択の余地はなかった」
フレイムドルフは次いで、
「そして、この生変には――致命的な欠陥があった。上書きをする都度、本体の魂が多少なりとも残存するのだろう。我という存在が薄れていく感覚がある。数度、生変を繰り返せばもう我ではなくなるかもしれない」
「野心の欠如は、そういうことだったのか」
「信じる信じないは――触術師クーラ、お前の勝手だ。我はこの身体でまた鍛錬を積もうと考えている。今までの自身でない分、全盛期からはほど遠い戦闘力だからな」
フレイムドルフは両手を広げ、
「我を殺すならば――今がチャンスということだ。今ならば、赤子の手を捻るかのごとく容易いことだぞ」
ライカが武器を構え直す。
「クーにぃ、殺そう――ライカは絶対に消滅させる方がいいと思う」
「ピンク頭、お前の判断は世界に置いて最高の選択だろう」
「ライカ、嫌いな人には消えてほしいからねぇ」
「絶体絶命という状況も悪くはない。我もただでは死なぬぞ――足掻けるだけ足掻いて見せる」
二人が戦闘態勢に入る。
ナコが慌てながら、僕とライカの間を右往左往する。
ライカの言っていることは正しい。
「く、クーラ、どうしますか?」
「ライカ、やめておこう」
「クーにぃ、本当に見逃していいの?」
「僕の気持ちはさっきと同じだよ。無理に殺し合いはしたくない」
世界の侵略を企むフレイムドルフはもういない。
未来を考えるならば、ここで倒すことが正解なのだろう。悪と判断したものは――問答無用で殺す。
そう心に誓ったはずだが、敵意が全くないものを手にかけていいのか。
僕の勝手な言い分も加わるが――国を建てる領地、土台となる地下で血を流すような行為をしたくはなかった。
戦闘解除を促す僕に対し、フレイムドルフは嘲笑気味に、
「触術師クーラ、お前ならば――知っているだろう。危険分子を残した結果、三国は窮地に陥ったのだぞ」
「その時はまた、君を――僕の命を懸けてとめてみせる」
「後悔するなよ」
去り際、フレイムドルフが不意に立ち止まり――呟く。
「自爆機能の解除は簡単だ。サラマンというコード、アルファベットを逆から入力してみろ。それで、二度とプログラムが起動することはない」
その問いかけに、僕は即答する。
「火の都サラマンの跡地に――国を建てようと考えている」
「我はもう敗者となった身だ。この世界では全て奪われるのが道理、お前の望む通りに動くといいであろう」
「奪い返そうと思わないのか?」
「先刻も言った通り、今の我には――野心がない。この身体に移り変わった後遺症、スキルの副作用がそうさせているのかもしれぬがな」
フレイムドルフが自身の手を見つめる。
己を客観的に見直すような行為、不安定な状態に置かれていることがわかった。今の言葉から察するに、特殊な方法で生き延びたということが想像できる。
僕はフレイムドルフに問い返す。
「まさか、魂を――移動させたのか?」
「正解だ。我がスキルの後付を開発していたのは知っているだろう。お前たちの転生をアイディアに――新たな道を作り出したのだ」
炎花の女将軍ヒオウを思い出す。
彼女もまた自身を改造し、ゲーム時には存在しなかったスキル――"自縄《じじょう》の解放"を習得していたからだ。
力に対する執着――恐ろしい男である。
「スキルは――"生変"と名付けた。お前もすでに気付いているであろうが、自由に器を選択して魂が移動できるわけではない」
「選択できるのなら、ゴザルを選んでいただろう」
「その通りだ。我が死んだ際、周囲にいるもの――魂の質が脆弱なもののみ、上書きすることが可能となる。お前たちは魂が類まれないくらいに強い、あの瞬間は操舵者以外に選択の余地はなかった」
フレイムドルフは次いで、
「そして、この生変には――致命的な欠陥があった。上書きをする都度、本体の魂が多少なりとも残存するのだろう。我という存在が薄れていく感覚がある。数度、生変を繰り返せばもう我ではなくなるかもしれない」
「野心の欠如は、そういうことだったのか」
「信じる信じないは――触術師クーラ、お前の勝手だ。我はこの身体でまた鍛錬を積もうと考えている。今までの自身でない分、全盛期からはほど遠い戦闘力だからな」
フレイムドルフは両手を広げ、
「我を殺すならば――今がチャンスということだ。今ならば、赤子の手を捻るかのごとく容易いことだぞ」
ライカが武器を構え直す。
「クーにぃ、殺そう――ライカは絶対に消滅させる方がいいと思う」
「ピンク頭、お前の判断は世界に置いて最高の選択だろう」
「ライカ、嫌いな人には消えてほしいからねぇ」
「絶体絶命という状況も悪くはない。我もただでは死なぬぞ――足掻けるだけ足掻いて見せる」
二人が戦闘態勢に入る。
ナコが慌てながら、僕とライカの間を右往左往する。
ライカの言っていることは正しい。
「く、クーラ、どうしますか?」
「ライカ、やめておこう」
「クーにぃ、本当に見逃していいの?」
「僕の気持ちはさっきと同じだよ。無理に殺し合いはしたくない」
世界の侵略を企むフレイムドルフはもういない。
未来を考えるならば、ここで倒すことが正解なのだろう。悪と判断したものは――問答無用で殺す。
そう心に誓ったはずだが、敵意が全くないものを手にかけていいのか。
僕の勝手な言い分も加わるが――国を建てる領地、土台となる地下で血を流すような行為をしたくはなかった。
戦闘解除を促す僕に対し、フレイムドルフは嘲笑気味に、
「触術師クーラ、お前ならば――知っているだろう。危険分子を残した結果、三国は窮地に陥ったのだぞ」
「その時はまた、君を――僕の命を懸けてとめてみせる」
「後悔するなよ」
去り際、フレイムドルフが不意に立ち止まり――呟く。
「自爆機能の解除は簡単だ。サラマンというコード、アルファベットを逆から入力してみろ。それで、二度とプログラムが起動することはない」
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