261 / 387
もふもふの都開国編
260話 大人の場 その1
しおりを挟む
「クーラ、おめでとう」
会合の終わった晩、カレアスが大量の酒を手に――ホームを訪れた。
開国が認められたことのお祝いに駆け付けて来たようで、今日はゆっくり一杯やろうとのことだった。
僕は喜んでカレアスを迎え入れる。
この王様、気軽に遊びに来ているが――格好から推測するにお忍びに違いない。護衛の騎士の方は毎度大慌てしているのではなかろうか。
カレアスは僕の心配を他所に、気持ちよさ気に酒をあおる。
「くはーっ! 友と飲む酒は最高だなっ!」
「また度数の高いお酒ばっかりだね」
「あっはっは。ウィンウィンは酒豪が多いのは知っているだろう」
カレアスは愉快に笑い、新しい酒瓶を開きながら、
「ライカ、ナコはもう寝ているのか?」
「寝ているよ。やっぱり、まだまだ夜の睡魔には勝てないお年ごろだ」
「成長期の時分、よく寝ることは素晴らしい。あの二人は――大人になったら驚くくらいに美人になるだろうな」
その時、ホームのリビングに足音が響く。
「あら、カレアス――また来ているのね。王様が夜にブラブラ遊び歩いて怒られたりしないの?」
「あっはっは、固いことを言うな。ゴザル、お前も一杯どうだ?」
「そうね。気分的に――いただこうかしら」
「気分的? どうかしたのか?」
「どうかしたもなにも、あなたも最前線で見ていたでしょう? 散々殴られて鼻血垂れ流して――乙女としては見せたくない光景だったわ」
ゴザルが注がれたお酒を一気に飲み干しながら、
「次こそは――絶対に、絶対にリベンジしてやるっ!」
グラスが割れるかの勢いで机に叩き付ける。
まずい話題を振ってしまったと、カレアスが3歩ほど後退しながら――恐る恐る、ゴザルに問い掛ける。
「け、剣聖は――クーラの妹もここにいるんじゃないのか?」
「もういないわよ。あの子、お兄ちゃんが見つかった事実がわかると――次はママとパパを探すって飛び出していったわ」
「……僕の妹、行動力がすごくてね」
ウォータスの騎士は即辞職と話していた。
琴葉は超絶ブラコンではあるが、家族愛も異常なくらいに強い。僕の生存が確認できた手前――順番的には両親なのだろう。
ゴザルはカレアスにおかわりを注がせながら、
「正直、私もまだ立っていたから――勝敗はわからなかったと思う。でも、あの余裕な態度を見たら勝ち逃げをされた気分よ」
「まあまあ、ゴザルも十分に強かったぞ」
「……ゴザルもってなによ、ゴザルもって」
「いや、そういう意味じゃなくてだな」
「どういう意味よ」
「えぇっとぉ」
カレアスがさらに後退する。
最早、壁際――逃げ場がなくなっている。ゴザルに圧倒されて、今にも泣き出しそうな顔付きである。
「ゴザル、一応――王様だから手加減してあげてね」
「クーラ、一応ってなんだっ! フォローになってないだろっ?!」
「あー、お酒飲んでるのっ? 混ぜて混ぜてよーっ!」
空気を一転するよう、ホムラが場に参加する。
「おーっと、飲んでくれっ! ほらほら、酒は大量に持ってきたからなっ!」
チャンスとばかりに、カレアスがホムラに駆け寄る。
「えー、お酒飲むの久しぶりだなぁ。いつもニャンちゃんにとめられてたから、あんまり飲む機会なくってね」
その言葉に――過去の記憶が蘇る。
以前、安らぎの満天でも――ニャニャンは全力でホムラの飲酒を阻止していた。いやもうこれ、完全にフラグ立ってるよね。
「ホムラ、ちょっと待っ」
「ぐびぐびぐび」
制止間に合わず、ホムラが豪快に――酒を流し込むのであった。
会合の終わった晩、カレアスが大量の酒を手に――ホームを訪れた。
開国が認められたことのお祝いに駆け付けて来たようで、今日はゆっくり一杯やろうとのことだった。
僕は喜んでカレアスを迎え入れる。
この王様、気軽に遊びに来ているが――格好から推測するにお忍びに違いない。護衛の騎士の方は毎度大慌てしているのではなかろうか。
カレアスは僕の心配を他所に、気持ちよさ気に酒をあおる。
「くはーっ! 友と飲む酒は最高だなっ!」
「また度数の高いお酒ばっかりだね」
「あっはっは。ウィンウィンは酒豪が多いのは知っているだろう」
カレアスは愉快に笑い、新しい酒瓶を開きながら、
「ライカ、ナコはもう寝ているのか?」
「寝ているよ。やっぱり、まだまだ夜の睡魔には勝てないお年ごろだ」
「成長期の時分、よく寝ることは素晴らしい。あの二人は――大人になったら驚くくらいに美人になるだろうな」
その時、ホームのリビングに足音が響く。
「あら、カレアス――また来ているのね。王様が夜にブラブラ遊び歩いて怒られたりしないの?」
「あっはっは、固いことを言うな。ゴザル、お前も一杯どうだ?」
「そうね。気分的に――いただこうかしら」
「気分的? どうかしたのか?」
「どうかしたもなにも、あなたも最前線で見ていたでしょう? 散々殴られて鼻血垂れ流して――乙女としては見せたくない光景だったわ」
ゴザルが注がれたお酒を一気に飲み干しながら、
「次こそは――絶対に、絶対にリベンジしてやるっ!」
グラスが割れるかの勢いで机に叩き付ける。
まずい話題を振ってしまったと、カレアスが3歩ほど後退しながら――恐る恐る、ゴザルに問い掛ける。
「け、剣聖は――クーラの妹もここにいるんじゃないのか?」
「もういないわよ。あの子、お兄ちゃんが見つかった事実がわかると――次はママとパパを探すって飛び出していったわ」
「……僕の妹、行動力がすごくてね」
ウォータスの騎士は即辞職と話していた。
琴葉は超絶ブラコンではあるが、家族愛も異常なくらいに強い。僕の生存が確認できた手前――順番的には両親なのだろう。
ゴザルはカレアスにおかわりを注がせながら、
「正直、私もまだ立っていたから――勝敗はわからなかったと思う。でも、あの余裕な態度を見たら勝ち逃げをされた気分よ」
「まあまあ、ゴザルも十分に強かったぞ」
「……ゴザルもってなによ、ゴザルもって」
「いや、そういう意味じゃなくてだな」
「どういう意味よ」
「えぇっとぉ」
カレアスがさらに後退する。
最早、壁際――逃げ場がなくなっている。ゴザルに圧倒されて、今にも泣き出しそうな顔付きである。
「ゴザル、一応――王様だから手加減してあげてね」
「クーラ、一応ってなんだっ! フォローになってないだろっ?!」
「あー、お酒飲んでるのっ? 混ぜて混ぜてよーっ!」
空気を一転するよう、ホムラが場に参加する。
「おーっと、飲んでくれっ! ほらほら、酒は大量に持ってきたからなっ!」
チャンスとばかりに、カレアスがホムラに駆け寄る。
「えー、お酒飲むの久しぶりだなぁ。いつもニャンちゃんにとめられてたから、あんまり飲む機会なくってね」
その言葉に――過去の記憶が蘇る。
以前、安らぎの満天でも――ニャニャンは全力でホムラの飲酒を阻止していた。いやもうこれ、完全にフラグ立ってるよね。
「ホムラ、ちょっと待っ」
「ぐびぐびぐび」
制止間に合わず、ホムラが豪快に――酒を流し込むのであった。
13
お気に入りに追加
413
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
断罪済み悪役令嬢に憑依したけど、ネトゲの自キャラ能力が使えたので逃げ出しました
八華
ファンタジー
断罪済みの牢の中で悪役令嬢と意識が融合してしまった主人公。
乙女ゲームストーリー上、待っているのは破滅のみ。
でも、なぜか地球でやっていたオンラインゲームキャラの能力が使えるみたいで……。
ゲームキャラチートを利用して、あっさり脱獄成功。
王都の街で色んな人と出会いながら、現実世界への帰還を目指します!

【書籍化】パーティー追放から始まる収納無双!~姪っ子パーティといく最強ハーレム成り上がり~
くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
【24年11月5日発売】
その攻撃、収納する――――ッ!
【収納】のギフトを賜り、冒険者として活躍していたアベルは、ある日、一方的にパーティから追放されてしまう。
理由は、マジックバッグを手に入れたから。
マジックバッグの性能は、全てにおいてアベルの【収納】のギフトを上回っていたのだ。
これは、3度にも及ぶパーティ追放で、すっかり自信を見失った男の再生譚である。

異世界から帰ってきた勇者は既に擦り切れている。
暁月ライト
ファンタジー
魔王を倒し、邪神を滅ぼし、五年の冒険の果てに役割を終えた勇者は地球へと帰還する。 しかし、遂に帰還した地球では何故か三十年が過ぎており……しかも、何故か普通に魔術が使われており……とはいえ最強な勇者がちょっとおかしな現代日本で無双するお話です。

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
ある中管理職
ファンタジー
勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。
なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。
チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。
探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。
万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。
1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!
マツヤマユタカ
ファンタジー
23年5月22日にアルファポリス様より、拙著が出版されました!そのため改題しました。
今後ともよろしくお願いいたします!
トラックに轢かれ、気づくと異世界の自然豊かな場所に一人いた少年、カズマ・ナカミチ。彼は事情がわからないまま、仕方なくそこでサバイバル生活を開始する。だが、未経験だった釣りや狩りは妙に上手くいった。その秘密は、レベル上げに必要な経験値にあった。実はカズマは、あらゆるスキルが経験値1でレベルアップするのだ。おかげで、何をやっても簡単にこなせて――。異世界爆速成長系ファンタジー、堂々開幕!
タイトルの『1×∞』は『ワンバイエイト』と読みます。
男性向けHOTランキング1位!ファンタジー1位を獲得しました!【22/7/22】
そして『第15回ファンタジー小説大賞』において、奨励賞を受賞いたしました!【22/10/31】
アルファポリス様より出版されました!現在第四巻まで発売中です!
コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】
*****************************
***毎日更新しています。よろしくお願いいたします。***
*****************************
マツヤマユタカ名義でTwitterやってます。
見てください。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。

俺は善人にはなれない
気衒い
ファンタジー
とある過去を持つ青年が異世界へ。しかし、神様が転生させてくれた訳でも誰かが王城に召喚した訳でもない。気が付いたら、森の中にいたという状況だった。その後、青年は優秀なステータスと珍しい固有スキルを武器に異世界を渡り歩いていく。そして、道中で沢山の者と出会い、様々な経験をした青年の周りにはいつしか多くの仲間達が集っていた。これはそんな青年が異世界で誰も成し得なかった偉業を達成する物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる