上 下
246 / 359
火の都サラマン激突編

245話 これからのこと

しおりを挟む
 バラバラになった身体が――もとに戻っていく。
 僕は獲得した因果の掌握を発動、自身の死という結果を捻じ曲げて――なかったことにする。命すらも手の平で転がす、なんて恐ろしいスキルだろうか。
 周囲には、リボルの四肢が散らばっていた。
 凄まじい高度からの落下、最早――原形はとどめていない。僕は万が一の可能性も消去するため、暴食にて全てを喰らい尽くす。
 今のこの瞬間、リボルという男は――世界から姿を消した。
 生き返って万全となった今も尚、僕の身体が無意識に震え始める。死んだ瞬間の痛みを脳が記憶しているのか――ツギハギにされているような感覚がある。
 いやな余韻が――全身に残っていた。

「……リボルは、こんな生と死の狭間を平然と行き来していたのか」

 幸い、セイントラール王宮に人はいなかった。
 おそらく、王都上空に空中戦艦が出現したことにより――どこか安全な場所に避難しているのだろう。
 その考えを裏付けるかのごとく――僕に近付いて来る人物がいた。

「王都の民は戦闘区域にならない場所――安らぎの満天、その他の施設に移動するよう情報を回しておいたにゃあ」
「ニャニャン、君も無事でよかったよ」
「猫ちゃんは多少の高さくらい、無事に着地できるのにゃあ」
「いや、限度はあるよね」

 現状を理解しているのだろう。
 ニャニャンはやれやれといった風に大きくため息をつきながら、

「全く、ソラにゃんは無茶しすぎなのね」
「似たようなものじゃないかな。ニャニャンだって――どれだけ綱渡りをしているか、それくらい僕にもわかるよ」
「時間がないから端的に話をしようにゃあ。ソラにゃんに堂々と接触できるのは、リボルにゃん亡き今しかないのね」
「……ニャニャン?」

 その言い回しに、不穏な影が垣間見える。

「にゃっちはまだ"Freedom"の潜伏を続ける。リーダー不在となった今、リボルにゃんを心酔仕切っていたやつらが――どうでてくるか、予想もつかないのね」

 ニャニャンは言う。

「リボルにゃんという強大な脅威は確かに消えたにゃあ。だけど、他にもヤバいやつらはいるのね。リーダーを倒したという情報は近いうちにギルド内にも出回る。ソラにゃんが倒したという事実も間違いなく――にゃあ。気を付けて、必ず報復が来るはずなのね」
「肝に銘じておくよ。ありがとう、ニャニャン」
「礼なんて不必要なのね。にゃっちはリーダーを殺した天敵を見に来た――それだけなのにゃあ」

 ニャニャンが踵を返し、握り拳を掲げる。

「ソラにゃん。全てが終わったら――オフ会、絶対にやろうね」

 そう言い残し、ニャニャンは颯爽と姿を消した。
しおりを挟む
感想 25

あなたにおすすめの小説

ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い

平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。 ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。 かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。

王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します

有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。 妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。 さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。 そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。 そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。 現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!

俺だけレベルアップできる件~ゴミスキル【上昇】のせいで実家を追放されたが、レベルアップできる俺は世界最強に。今更土下座したところでもう遅い〜

平山和人
ファンタジー
賢者の一族に産まれたカイトは幼いころから神童と呼ばれ、周囲の期待を一心に集めていたが、15歳の成人の儀で【上昇】というスキルを授けられた。 『物質を少しだけ浮かせる』だけのゴミスキルだと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。 途方にくれるカイトは偶然、【上昇】の真の力に気づく。それは産まれた時から決まり、不変であるレベルを上げることができるスキルであったのだ。 この世界で唯一、レベルアップできるようになったカイトは、モンスターを倒し、ステータスを上げていく。 その結果、カイトは世界中に名を轟かす世界最強の冒険者となった。 一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトを追放したことを後悔するのであった。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

悪役貴族の四男に転生した俺は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めたかった。

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
俺は何もしてないのに兄達のせいで悪役貴族扱いされているんだが…… アーノルドは名門貴族クローリー家の四男に転生した。家の掲げる独立独行の家訓のため、剣技に魔術果ては鍛冶師の技術を身に着けた。 そして15歳となった現在。アーノルドは、魔剣士を育成する教育機関に入学するのだが、親戚や上の兄達のせいで悪役扱いをされ、付いた渾名は【悪役公子】。  実家ではやりたくもない【付与魔術】をやらされ、学園に通っていても心の無い言葉を投げかけられる日々に嫌気がさした俺は、自由を求めて冒険者になる事にした。  剣術ではなく刀を打ち刀を使う彼は、憧れの自由と、美味いメシとスローライフを求めて、時に戦い。時にメシを食らい、時に剣を打つ。  アーノルドの第二の人生が幕を開ける。しかし、同級生で仲の悪いメイザース家の娘ミナに学園での態度が演技だと知られてしまい。アーノルドの理想の生活は、ハチャメチャなものになって行く。

チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい

616號
ファンタジー
 不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。

俺は善人にはなれない

気衒い
ファンタジー
とある過去を持つ青年が異世界へ。しかし、神様が転生させてくれた訳でも誰かが王城に召喚した訳でもない。気が付いたら、森の中にいたという状況だった。その後、青年は優秀なステータスと珍しい固有スキルを武器に異世界を渡り歩いていく。そして、道中で沢山の者と出会い、様々な経験をした青年の周りにはいつしか多くの仲間達が集っていた。これはそんな青年が異世界で誰も成し得なかった偉業を達成する物語。

大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる

遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」 「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」 S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。 村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。 しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。 とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。

処理中です...