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火の都サラマン激突編
235話 闇の魔石
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「フレイムドルフは人の魔力を強制的に搾り取り、命を燃料に空中戦艦を動かしているのではないか――というのが自分の推測なのです」
キャロルさんが黒い石を取り出す。
ケースの中に厳重に保管しており、石の内部を注意深く見ると――不気味に蠢いた虫のようなものが潜んでいる。
本能が触れてはいけないと危険信号を放っていた。
「特殊な闇の魔石、同じく大都市で発見したのです。直接触れた対象の魔力を一方的に吸い取り、蓄積する性質を持っていまして――自分をエサと思ったのでしょう。全魔力を吸い取られてミイラになるところでした。枯渇寸前、容赦のない攻めに絶頂してしまったのです」
キャロルさん――試したんだね。
なんかもう隠す気もないのか絶頂とか言ってるし、痛みのある行為に対して躊躇がないというかなんというか――いや、今は気にしている場合ではない。
ライカが僕の側にて小声で「マジ者の変態だぁ」と、僕の気持ちを代弁してくれているのでよしとする。
僕は今の話を全て踏まえて――結論を出す。
「僕の作戦はフレイムドルフが本命の王都を狙う瞬間、一気に仕掛けにいくことだ。その時だけは――この広い世界の中、確実に相まみえることができる。やつが不在なんてことは絶対にない」
そのためには、エアーを機動させねばならない。
白雪はモーエン大陸に帰還済み。フレイムドルフと雌雄を決するにも――対抗手段がないのだ。
以前キャロルさんと交わした言葉、秘策を求めてコンタクトを取ったが、この燃料問題を解決しない限り動くことはできない。
モタモタしている間に、フレイムドルフの侵略はさらに進むだろう。
二国が謎のプレイヤーによって守られている今こそが――好機なのだ。
漆黒者からの情報によると、三国を完全に沈黙させてから王都に侵攻してくる作戦だという。
だが、フレイムドルフと直接対峙した僕にはわかる。燃え盛る炎が、そんな悠長な広がり方をするとは考えていなかった。
やつは――近いうち、必ず王都に攻め入る。
火の都サラマンの戦力が、アクアニアスとストーンヴァイスに分散されている間に、僕は――決着をつけたいのだ。この機を逃してしまえば、世界は一瞬にしてフレイムドルフの手に落ちるだろう。
今すぐにでも、発てる状況が――必須なのだ。
「自分が闇の魔石にギリギリのラインを保ちつつ、魔力を蓄積し続けて――いえ、それだと時間がいくらあっても足りないのです」
「……大量の魔力が必要、か。王宮内の倉庫にいくつか魔石が眠っていたはずだが、それで代用は不可能なのか?」
「魔石にはE~Sまでランクがある。低ランクの魔石なら難しい、保有してる魔力量が少なすぎるんだ。基本的に低ランクの魔石は家庭の料理とかで使うことが多い。今回、最低でもAランク以上が――100個以上は必要だと思う」
「んんー、ライカも低ランクの魔石しか持ってないなぁ。高ランクの魔石って調合とか合成用がメインだもんねぇ」
良案は――でてこない。
カレアスの気持ちはありがたいが、王宮内の倉庫は確認するまでもない。ここはゲーム時でいう序盤の国、どう高く見積もってもBランク数個が精一杯だろう。
解決策を求めて、悩む声が響き渡る中、
「クーラ、試してみたいことがあります」
颯爽と、ナコがエアーに乗り込む。
一体、なにをするつもりなのか? 皆が見守る中、エアーの中心に歩み寄り――とんでもないことを言い出す。
「私が、この子の核になります」
ナコが風の魔石に――そっと、手を触れた。
キャロルさんが黒い石を取り出す。
ケースの中に厳重に保管しており、石の内部を注意深く見ると――不気味に蠢いた虫のようなものが潜んでいる。
本能が触れてはいけないと危険信号を放っていた。
「特殊な闇の魔石、同じく大都市で発見したのです。直接触れた対象の魔力を一方的に吸い取り、蓄積する性質を持っていまして――自分をエサと思ったのでしょう。全魔力を吸い取られてミイラになるところでした。枯渇寸前、容赦のない攻めに絶頂してしまったのです」
キャロルさん――試したんだね。
なんかもう隠す気もないのか絶頂とか言ってるし、痛みのある行為に対して躊躇がないというかなんというか――いや、今は気にしている場合ではない。
ライカが僕の側にて小声で「マジ者の変態だぁ」と、僕の気持ちを代弁してくれているのでよしとする。
僕は今の話を全て踏まえて――結論を出す。
「僕の作戦はフレイムドルフが本命の王都を狙う瞬間、一気に仕掛けにいくことだ。その時だけは――この広い世界の中、確実に相まみえることができる。やつが不在なんてことは絶対にない」
そのためには、エアーを機動させねばならない。
白雪はモーエン大陸に帰還済み。フレイムドルフと雌雄を決するにも――対抗手段がないのだ。
以前キャロルさんと交わした言葉、秘策を求めてコンタクトを取ったが、この燃料問題を解決しない限り動くことはできない。
モタモタしている間に、フレイムドルフの侵略はさらに進むだろう。
二国が謎のプレイヤーによって守られている今こそが――好機なのだ。
漆黒者からの情報によると、三国を完全に沈黙させてから王都に侵攻してくる作戦だという。
だが、フレイムドルフと直接対峙した僕にはわかる。燃え盛る炎が、そんな悠長な広がり方をするとは考えていなかった。
やつは――近いうち、必ず王都に攻め入る。
火の都サラマンの戦力が、アクアニアスとストーンヴァイスに分散されている間に、僕は――決着をつけたいのだ。この機を逃してしまえば、世界は一瞬にしてフレイムドルフの手に落ちるだろう。
今すぐにでも、発てる状況が――必須なのだ。
「自分が闇の魔石にギリギリのラインを保ちつつ、魔力を蓄積し続けて――いえ、それだと時間がいくらあっても足りないのです」
「……大量の魔力が必要、か。王宮内の倉庫にいくつか魔石が眠っていたはずだが、それで代用は不可能なのか?」
「魔石にはE~Sまでランクがある。低ランクの魔石なら難しい、保有してる魔力量が少なすぎるんだ。基本的に低ランクの魔石は家庭の料理とかで使うことが多い。今回、最低でもAランク以上が――100個以上は必要だと思う」
「んんー、ライカも低ランクの魔石しか持ってないなぁ。高ランクの魔石って調合とか合成用がメインだもんねぇ」
良案は――でてこない。
カレアスの気持ちはありがたいが、王宮内の倉庫は確認するまでもない。ここはゲーム時でいう序盤の国、どう高く見積もってもBランク数個が精一杯だろう。
解決策を求めて、悩む声が響き渡る中、
「クーラ、試してみたいことがあります」
颯爽と、ナコがエアーに乗り込む。
一体、なにをするつもりなのか? 皆が見守る中、エアーの中心に歩み寄り――とんでもないことを言い出す。
「私が、この子の核になります」
ナコが風の魔石に――そっと、手を触れた。
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