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火の都サラマン激突編

220話 ウィンディア・ウィンド奪還戦 その2

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 二手にわかれる。
 ヒオウはその行動を制止せず、余裕のある態度を崩さない。白雪の言う通り、底知れないなにかを――感じる。
 ゲーム時、ヒオウとのボス戦は地上だった。
 現在は空中戦、状況が一変しているということは間違いない。ヒオウのジョブは魔槍騎士、その名の通り――槍に魔力を込めて攻撃する火力重視の戦闘スタイルだ。
 大陸龍にて対峙した白龍の騎士と同様、距離感が掴みづらい難敵である。
 本来ならば、兵士と共に殲滅するつもりだった。しかし、ヒオウは僕の殺意を察知してか――触手がギリギリ届かない位置に立っていたのだ。
 偶然? なんて浅はかな考えは持たない。

「くふふ。一人で私に勝てると思ったのかしら? 頭まで汚い触手で埋め尽くされているの? 全員でかかって来ればまだ勝算はあったかもしれないのに」

 ヒオウが槍を前方に構えながら言う。
 右手が――前? 瞬間的に気付く、ゲーム時と利き腕が異なることに。
 警戒するんだ、この行動には必ずなにかしらの意味がある。
 僕は両手に触手を展開、一直線に駆け走る。

「行くぞ、ヒオウっ!」
「来なさい、一刻も早く来なさいっ! 臓物を引きずり出してあげるわっ!!」

 ヒオウの急所、一撃死を狙う。
 脳、心臓、どこでもいいが――重厚な鎧を掻い潜る必要性がある。
 白雪と修行した今の僕ならば、針の穴ほどの隙間でも侵入させるのは容易い。
 触手と槍の攻防戦、弾き弾かれて――一進一退の状況が続く。

「くふふ、あははっ! 命のやり取り以上に面白いものってあるっ? あるわけない、あるわけないわよねぇええっ!!」

 侵入の隙がない。
 ヒオウは糸状の触手を感知している? いや、違う――この反応は別の形で認識しているに違いない。
 ヒオウは槍を盾のように旋回させながら、

「フレイムドルフ様が忠告された通りだわ。命に迫る脅威、己の感覚こそが自身の命を守るとね」

 一度は滅んだ火の都サラマン。
 フレイムドルフの異常さだけが際立つが、その配下も戦闘狂に近いからこそ成り立つ国なのである。
 王ほどの野心ではないにしろ、皆が胸に火を灯している。

「あぁあ、気持ちいいわ。もっともっと、私を攻めてちょうだい。今の一瞬で何回私を殺そうとしたの? あぁ、あぁあ、遠慮のない子だわ」

 炎花の女将軍ヒオウ。
 強者は――フレイムドルフだけではないのだ。
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