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火の都サラマン激突編
212話 記憶の残滓
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「クーラ、ライカ、おっかえりー」
修行の場から紅桜組の屋敷に戻ると、白雪が出迎えてくれた。
先ほど見たばかりの満面の笑顔、白雪は普通に生きていた――生きていたのは嬉しいが僕の感情が追い付かない。
「え、ちょい待っ、師匠? ただ、いま?」
「にはは、どっきりびっくり大成功っ!」
「いやもう、どっきりびっくりのレベル超えてるからね」
「ライカもドン引きだぁ。クーにぃ、帰り道の間――ずっと泣いてたよ? 白雪、あんまりイジメるのやめてねぇ」
「妾は最初に言っていただろう、分身体と2人に分かれているとな。どちらも本体には変わりない、貴様が喰らったのは間違いなく妾だが――残った方も妾だ」
「僕の悲しみを返して」
「まあまあ、半身を失ったのは事実だから許してくれ。今の妾は文字通り――全盛期の半分の力しか残っていない」
「復活することはないの?」
「ないと断言できる。魔力の核の半分を喰らわせたからな」
「……ありがとう、師匠」
「礼など不要だ。妾の力――大事に使えよ」
その時、客間から局長と風花さんがでてくる。
僕とライカの姿を見て、二人が嬉しそうに駆け寄って来る後ろ――見覚えのある顔があった。
サンサンと協議をする上で必要な存在だろう。
「ライカっ?! お主、鈴華の屋敷に遊びに来いと言うたのに――全然来やんではないかっ!!」
「あ、忘れてたぁ」
「うわーん、あんまりじゃあっ! いつ来るのかな、いつ来るのかなって――ずっと待っておったのじゃぞっ!?」
「ごめんねぇ。今から行こっか」
「軽すぎぬかっ! でも嬉しいから歓迎じゃっ!」
「クーにぃ、ライカ遊びに行って来てもいい?」
「気にせず行っておいで」
「えへへ、行って来ますっ!」
ライカは鈴華姫にしたり顔で振り向き、
「鈴華がどうしても来てほしいっていうから仕方ないなぁ。ジュースとお菓子くらいはだしてねぇ」
「どこが仕方なしじゃっ! 今嬉しそうに返事しておったじゃろうっ!」
「し、してないもんっ!」
「しておったっ!」
ライカと鈴華姫、気が合いそうな二人である。
場の様子から察するに、協議は無事に終了したのだろう。思いがけないところから、サンサンの明るい未来に繋がったことは――心からよかったと思う。
残すは――海を渡るのみとなった。
「師匠、僕も旅立つ準備をしようと思う」
「約束通り、妾の背中に乗せてやる。だが、まずは――ゆっくりと出発の準備を整える方がいいだろう」
「助言通りに動くよ」
「にはは、えらく素直になったじゃないか」
「君の半身を喰らったこと、僕の命が尽きるまで噛み締めて生きるよ」
「重荷にするんじゃないぞ。それはそうと、新たな懸け橋の件は忘れるな。フレイムドルフの件が片付いたら――一度モーエン大陸には戻って来い」
「約束――いや、誓うよ。絶対に戻って来る」
僕は握手を求め、白雪に右手を差し出す。
白雪は少し照れくさそうにしながらも、僕に応じてくれて――繋いだ瞬間、目の前の景色が白一面に染まった。
時間がとまったかのような空間――僕と白雪だけになる。
「……師匠、なにこれ?」
「『共鳴』したようだな」
白雪は言う。
「貴様が死にかけた時、妾の血を与えたのは覚えているか。それに加えて、半身すらもその身に取り込んだ。今の貴様は――ドラゴンの力が全身に流れている。その影響により妾とリンクする形になったのだろう」
「なんか強そうだね」
「言うに事欠いて――強そうか。普通、他種族の血や力が流れるなど嫌悪感を持ってもよさそうなのだがな」
「嫌悪感なんてありえない。正直、僕は君を尊敬している――その人の血や力が流れているなんて光栄だよ」
僕の言葉に白雪が目を見開く。
「……クーラ、共鳴したついでだ。妾の記憶を少し見せてやろう」
白い空間に――薄っすらと映像が流れ始めた。
修行の場から紅桜組の屋敷に戻ると、白雪が出迎えてくれた。
先ほど見たばかりの満面の笑顔、白雪は普通に生きていた――生きていたのは嬉しいが僕の感情が追い付かない。
「え、ちょい待っ、師匠? ただ、いま?」
「にはは、どっきりびっくり大成功っ!」
「いやもう、どっきりびっくりのレベル超えてるからね」
「ライカもドン引きだぁ。クーにぃ、帰り道の間――ずっと泣いてたよ? 白雪、あんまりイジメるのやめてねぇ」
「妾は最初に言っていただろう、分身体と2人に分かれているとな。どちらも本体には変わりない、貴様が喰らったのは間違いなく妾だが――残った方も妾だ」
「僕の悲しみを返して」
「まあまあ、半身を失ったのは事実だから許してくれ。今の妾は文字通り――全盛期の半分の力しか残っていない」
「復活することはないの?」
「ないと断言できる。魔力の核の半分を喰らわせたからな」
「……ありがとう、師匠」
「礼など不要だ。妾の力――大事に使えよ」
その時、客間から局長と風花さんがでてくる。
僕とライカの姿を見て、二人が嬉しそうに駆け寄って来る後ろ――見覚えのある顔があった。
サンサンと協議をする上で必要な存在だろう。
「ライカっ?! お主、鈴華の屋敷に遊びに来いと言うたのに――全然来やんではないかっ!!」
「あ、忘れてたぁ」
「うわーん、あんまりじゃあっ! いつ来るのかな、いつ来るのかなって――ずっと待っておったのじゃぞっ!?」
「ごめんねぇ。今から行こっか」
「軽すぎぬかっ! でも嬉しいから歓迎じゃっ!」
「クーにぃ、ライカ遊びに行って来てもいい?」
「気にせず行っておいで」
「えへへ、行って来ますっ!」
ライカは鈴華姫にしたり顔で振り向き、
「鈴華がどうしても来てほしいっていうから仕方ないなぁ。ジュースとお菓子くらいはだしてねぇ」
「どこが仕方なしじゃっ! 今嬉しそうに返事しておったじゃろうっ!」
「し、してないもんっ!」
「しておったっ!」
ライカと鈴華姫、気が合いそうな二人である。
場の様子から察するに、協議は無事に終了したのだろう。思いがけないところから、サンサンの明るい未来に繋がったことは――心からよかったと思う。
残すは――海を渡るのみとなった。
「師匠、僕も旅立つ準備をしようと思う」
「約束通り、妾の背中に乗せてやる。だが、まずは――ゆっくりと出発の準備を整える方がいいだろう」
「助言通りに動くよ」
「にはは、えらく素直になったじゃないか」
「君の半身を喰らったこと、僕の命が尽きるまで噛み締めて生きるよ」
「重荷にするんじゃないぞ。それはそうと、新たな懸け橋の件は忘れるな。フレイムドルフの件が片付いたら――一度モーエン大陸には戻って来い」
「約束――いや、誓うよ。絶対に戻って来る」
僕は握手を求め、白雪に右手を差し出す。
白雪は少し照れくさそうにしながらも、僕に応じてくれて――繋いだ瞬間、目の前の景色が白一面に染まった。
時間がとまったかのような空間――僕と白雪だけになる。
「……師匠、なにこれ?」
「『共鳴』したようだな」
白雪は言う。
「貴様が死にかけた時、妾の血を与えたのは覚えているか。それに加えて、半身すらもその身に取り込んだ。今の貴様は――ドラゴンの力が全身に流れている。その影響により妾とリンクする形になったのだろう」
「なんか強そうだね」
「言うに事欠いて――強そうか。普通、他種族の血や力が流れるなど嫌悪感を持ってもよさそうなのだがな」
「嫌悪感なんてありえない。正直、僕は君を尊敬している――その人の血や力が流れているなんて光栄だよ」
僕の言葉に白雪が目を見開く。
「……クーラ、共鳴したついでだ。妾の記憶を少し見せてやろう」
白い空間に――薄っすらと映像が流れ始めた。
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