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火の都サラマン激突編
209話 師弟
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「さあ、遠慮せずに殺す気でかかって来い」
白雪は言う。
ドラゴンには戻らず、人間の状態――白雪は対人戦に適応できるよう、この姿のままでいてくれているのだろう。
短期間、過ごしただけだが、白雪は――優しい。
相手のことを真剣に考え、一緒になって悩んでくれる。ここまでしてくれた白雪の気持ちに応えたい。
この最終調整は――落胆させないよう本気で行く。
「白雪、負けても文句言わないでね」
「にはは。大層なことを言うようになったな」
「白雪の笑い方、初めて会った時にも聞いたな」
「人間に変化した際、牙だけが微妙に残る。笑う時、口もとで邪魔になってこうなってしまうのだ」
「なんだか、可愛らしいね」
「……だ、だから、そういうことを軽々しく言うな。ほめたところで、一切手加減はしないからなっ!」
「わかってる。僕も――今の全てを出し切るよ」
僕は剣を抜く態勢を取る。
無論、実際に剣はない――だが、触手が2本になった時から、この構えを今後メインとなる戦闘スタイルにしようと考えていた。
「なんだ? その異質な構えは――危険な香りがプンプンするぞ」
「僕の前のジョブは魔法剣士だったんだよ」
「ジョブが違った? 本来、ジョブを変わることなどないが――いや、今そんなことはどうでもいいか」
白雪が迎え撃つよう――右手を前に構える。
――「「行くぞっ!」」
魔法剣士は二刀流である。
二本の剣を攻撃に使うもよし、二本の剣を防御に回すもよし、一本ずつ攻撃防御バランスよく扱うもよし――器用貧乏と言われる所以がそこだ。
僕が魔法剣士時の戦闘スタイルは――二本の剣を攻撃に使っていた。
奇しくも、僕はフレイムドルフと同じスタイルなのだ。
むしろ、ゲーム時――やつの圧倒的なまでの戦闘スタイルに魅せられ、自然とそうなったと言っても過言ではなかった。
僕は触手を展開、剣を扱うかのように白雪に攻撃する。
伸縮自在、性質の切り替え、我ながら敵だったら勘弁してくれと思うだろう。僕は即座に触手を糸状に変化させ、白雪の体内に侵入を試みる。
しかし、突き刺さる直前――皮膚が白く変色して阻まれる。
「甘い。妾レベルになると微弱な魔力で感知できる。気取られないよう、一直線に行くのではなく――相手の隙間をかいくぐるのだ」
フレイムドルフに通用したものが白雪には通用しない。
やつがこの即死技を回避できたのは直感だった。さすが、何千年の時を生きる古代のドラゴン――本来ならば、白雪はディスク3枚目以降のボスレベルに違いない。
「見破られた後も油断するなっ! 思い通りにいかなかったという焦り、それは隙となり手痛いカウンターをくらうぞっ!!」
白雪が僕の胸もとに一足飛び――掌底を浴びせる。
「ぐっ、あっ」
「態勢を立て直すのが――遅いっ! 貴様、今の一撃も妾が手刀だったらどうする? 心臓を貫かれて死んでいるぞっ!!」
「……っ! まだまだっ!!」
「その意気やよし、全てを出し切る前に終わるなよ」
優しく語りかけてくるような実戦形式だった。
白雪は僕の悪いところを的確に見抜き、アドバイスを添えて戦ってくれている。僕を想い、僕だけのために――戦ってくれているのだ。
「……ありがとう。師匠」
「師匠? 急にどうした」
「ああ。白雪なんて呼び捨ては――失礼だった。君は僕の師匠だ、今からそう呼ばせてもらう」
「ふっ、悪くはない。妾は萌太郎にしごかれて、今は妾が新たな懸け橋をしごくというわけか――巡り巡った運命みたいだな」
白雪はほくそ笑みながら、
「さあ、その師匠を満足させてみせろ」
白雪は言う。
ドラゴンには戻らず、人間の状態――白雪は対人戦に適応できるよう、この姿のままでいてくれているのだろう。
短期間、過ごしただけだが、白雪は――優しい。
相手のことを真剣に考え、一緒になって悩んでくれる。ここまでしてくれた白雪の気持ちに応えたい。
この最終調整は――落胆させないよう本気で行く。
「白雪、負けても文句言わないでね」
「にはは。大層なことを言うようになったな」
「白雪の笑い方、初めて会った時にも聞いたな」
「人間に変化した際、牙だけが微妙に残る。笑う時、口もとで邪魔になってこうなってしまうのだ」
「なんだか、可愛らしいね」
「……だ、だから、そういうことを軽々しく言うな。ほめたところで、一切手加減はしないからなっ!」
「わかってる。僕も――今の全てを出し切るよ」
僕は剣を抜く態勢を取る。
無論、実際に剣はない――だが、触手が2本になった時から、この構えを今後メインとなる戦闘スタイルにしようと考えていた。
「なんだ? その異質な構えは――危険な香りがプンプンするぞ」
「僕の前のジョブは魔法剣士だったんだよ」
「ジョブが違った? 本来、ジョブを変わることなどないが――いや、今そんなことはどうでもいいか」
白雪が迎え撃つよう――右手を前に構える。
――「「行くぞっ!」」
魔法剣士は二刀流である。
二本の剣を攻撃に使うもよし、二本の剣を防御に回すもよし、一本ずつ攻撃防御バランスよく扱うもよし――器用貧乏と言われる所以がそこだ。
僕が魔法剣士時の戦闘スタイルは――二本の剣を攻撃に使っていた。
奇しくも、僕はフレイムドルフと同じスタイルなのだ。
むしろ、ゲーム時――やつの圧倒的なまでの戦闘スタイルに魅せられ、自然とそうなったと言っても過言ではなかった。
僕は触手を展開、剣を扱うかのように白雪に攻撃する。
伸縮自在、性質の切り替え、我ながら敵だったら勘弁してくれと思うだろう。僕は即座に触手を糸状に変化させ、白雪の体内に侵入を試みる。
しかし、突き刺さる直前――皮膚が白く変色して阻まれる。
「甘い。妾レベルになると微弱な魔力で感知できる。気取られないよう、一直線に行くのではなく――相手の隙間をかいくぐるのだ」
フレイムドルフに通用したものが白雪には通用しない。
やつがこの即死技を回避できたのは直感だった。さすが、何千年の時を生きる古代のドラゴン――本来ならば、白雪はディスク3枚目以降のボスレベルに違いない。
「見破られた後も油断するなっ! 思い通りにいかなかったという焦り、それは隙となり手痛いカウンターをくらうぞっ!!」
白雪が僕の胸もとに一足飛び――掌底を浴びせる。
「ぐっ、あっ」
「態勢を立て直すのが――遅いっ! 貴様、今の一撃も妾が手刀だったらどうする? 心臓を貫かれて死んでいるぞっ!!」
「……っ! まだまだっ!!」
「その意気やよし、全てを出し切る前に終わるなよ」
優しく語りかけてくるような実戦形式だった。
白雪は僕の悪いところを的確に見抜き、アドバイスを添えて戦ってくれている。僕を想い、僕だけのために――戦ってくれているのだ。
「……ありがとう。師匠」
「師匠? 急にどうした」
「ああ。白雪なんて呼び捨ては――失礼だった。君は僕の師匠だ、今からそう呼ばせてもらう」
「ふっ、悪くはない。妾は萌太郎にしごかれて、今は妾が新たな懸け橋をしごくというわけか――巡り巡った運命みたいだな」
白雪はほくそ笑みながら、
「さあ、その師匠を満足させてみせろ」
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