上 下
202 / 223
火の都サラマン激突編

201話 想いを言葉に

しおりを挟む
「クーにぃっ! クーにぃっ!!」
「落ち着け、大丈夫と言っているだろう」
「嘘だったら許さないっ! ぶっ殺してやるっ!!」
「ああ、もう落ち着けっ!」

 騒々しさに目が覚める。
 薄っすらとまぶたを開くと――ライカと白髪のドラゴンが言い争いをしていた。逆鱗に触れた辺りから記憶が途切れ途切れである。
 状況から察するに、答えは一つだろう。

「僕、気を失っていたんだね」
「クーにぃっ?! よかったぁああっ!!」

 身体を起こした僕に、ライカが飛び付いて来る。

「ピンク娘、妾の言った通りだろう。なんせ、ドラゴンの血――妾の血を与えてやったのだぞ。どれだけ希少か理解しているのか? 怪我や病気くらいすぐに回復する」
「ごめん、ありがとう。迷惑をかけたね」
「ふんっ、もっと敬うように礼を言え。貴様、失血死しかけていたのだぞ? 捨て身で特攻するにもほどがある」
「そんな希少な血を僕に――本当に感謝感激です」
「うきーっ! 素直に言われると、妾が悪者みたいになるだろうがっ!!」

 む、難しいな。

「僕が気を失っている間に、とどめを刺そうとは思わなかったの?」
「はっ、貴様に引っ付いているピンク娘が入れ違いで目を覚ましてな。仲間を守るという強い意志を持つやつは――同じく捨て身で来る可能性がある。こいつもなにをしでかすかわからないからな」

 白髪のドラゴンがやれやれと頭を抱えながら、

「妾は連なりの巨塔に住むドラゴン――名は白雪だ。クーラといったな、妾も貴様に一つ問わせてもらう。どうして最後に手を抜いた?」
「白雪っていうんだ。髪の色に相まって凛とした名前だね」
「んなっ! そ、そこじゃないっ! 先に妾の質問に答えろっ!!」
「君が悲しそうだったからだよ」
「妾が、悲しそう?」
「悲しみを戦いで解決しても――意味はないと思ったんだ。君が僕に想いをぶつけてきたように、僕は自分の想いをぶつけた」
「……貴様、言葉まで似たようなことを言うか」
「よかったら、その触術師の話を聞かせてくれないかな」
「聞いたところでどうなる?」
「君の気持ちを理解することはできるかもしれない。言葉にしない限り、想いが伝わることは絶対にないから」
「クーにぃの言う通りだよ。今日の晩ご飯、なにが食べたいかなんて――口にしないとわかるわけないよねぇ」
「ピンク娘、話が混同するから少し黙っていろ」
「ピンク娘じゃありませんー。ライカはライカって名前があるもん」
「ああ、ライカだな。わかったわかった」
「よろしくね、白雪っ!」
「偉大なドラゴンを呼び捨てか――まあ、いいだろう。貴様たちにとやかく言う気はもう失せた」

 降参したように白雪が両手を上げる。
 そして、なにかを振り返るように、なにかを深く思い出すように――白雪がゆっくりと瞳を閉じた。

「……二千年ほど前だ、貴様と同じ触術師が妾に会いに来たのはな」
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

貴方の想いなど知りませんー外伝ー

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:5,239pt お気に入り:1,780

リセットしてもヤンデレに犯される俺の話

BL / 連載中 24h.ポイント:667pt お気に入り:4,379

【メンテ中】昨今の聖女は魔法なんか使わないと言うけれど

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:1,676pt お気に入り:385

転生鍛冶師は異世界で幸せを掴みます! 〜物作りチートで楽々異世界生活〜

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:6,371pt お気に入り:2,135

アラフォー料理人が始める異世界スローライフ

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:1,938pt お気に入り:3,059

試される愛の果て

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:47,990pt お気に入り:2,145

リオ・プレンダーガストはラスボスである

BL / 連載中 24h.ポイント:25,362pt お気に入り:1,392

逆転!? 大奥喪女びっち

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:313pt お気に入り:82

処理中です...