179 / 384
火の都サラマン激突編
178話 ライカの過去
しおりを挟む
「……ら、ライカは」
「うん」
「ライカは、ね」
「ゆっくりでいいよ」
ライカが話したいと思えるまで――僕は待つ。
その間、お肉を少しずつ頬張り身体に染み込ませていく。一度粒子となって傷は治ったものの――さすがに空腹までは満たされていなかった。
僕はお肉を手に勢いよく立ち上がり、
「なんだこの重厚な肉質っ! だからといって固すぎるわけでもなく、比率的には7対3くらいの絶妙な塩梅っ!! 野草をハーブ代わりにしているのかまた匂いが食欲をそそるのなんのってっ! 全ての配分がパーフェクトといっても過言ではないっ!! まとめると――シェフを呼んでくれ、いや目の前にいましたっ! ありがとうございます、本気で絶品ですっ!!」
「……クーラお姉さん?」
「ゆっくりでいいよ」
「もうゆっくりどころじゃないよっ?!」
「ライカの焼いたお肉が美味しすぎて興奮しちゃった」
「……ぷっ、ふふ」
ライカが笑い出す。
「なんか逆に落ち着いちゃったぁ。ライカはね、お祖母ちゃんお祖父ちゃんっ子だったから、料理とか狩りとかいっぱい教えてもらってたんだ。美味しいって言われると、ライカも嬉しいっ!」
「……料理に、狩り?」
「お祖父ちゃんが猟師でね、一緒によく付いていってたの。山中での過ごし方とか解体の仕方とか――その時に習ったんだよ」
そ、想像以上にたくましい。
野営、サバイバルに関しては――動画の知識しかない僕とは違い、現地で経験を培ったライカの方が遥かに優れているだろう。
そして、少し会話しただけでも純粋な子なんだとわかる。
だからこそ、善悪の判断より先に――感情の赴くままに動いてしまうのだろう。それは幼いという点だけではなく、ライカ自身の性格の部分も大きいに違いない。
ライカはぽつりぽつりと話し始める。
「ライカはね、転生した時――アクアニアスの噴水広場に立っていたの。ライカもオンリー・テイルはすっごいプレイしていたゲームだから、すぐに景色を見てアクアニアスってことはわかったんだぁ」
「ライカが超越者だったのは驚いたよ」
「超越者になったのは転生してからなんだよ。それまで、ずっとレベル99でとまってたんだぁ。マスターもライカと一緒って言ってた」
リボルも一緒だったのか。
転生前、攻略掲示板に呪術師の超越者は載っていなかった。
転生してから超越者になるパターン、今後はこの線も強く視野に入れていかねばならない。
「ライカはね、転生した日――NPCに騙されて売られかけたんだ」
ライカの言うNPC。
もとからオンリー・テイルに生きる現地人のことだろう。
「一人で心細くて泣いてるところを、NPCが話しかけてくれたの。でも、それもミミモケ族を奴隷商に売り飛ばすため、それだけが目的だったんだぁ。ライカはバカだから、優しい言葉だけで信じちゃって、言われるがままに――付いて行っちゃった」
ライカが自身の身体を抱き締め――震え始める。
顔付きは真っ青に、幼い少女はどれだけひどい目にあったのか、どれほど心に傷を残されたのか、その様子から想像するに――容易かった。
「怖、かった、怖かったぁ。ライカの、身体をベタベタ、ベタベタ、裸に、されて、色々なところを触られて、気持ち悪くって、吐いたら、殴られた」
「……ライカ」
「殺す力くらい、ライカにはあったよ。だけど、そんな度胸も勇気も――あの時のライカは持ち合わせていなかったんだぁ」
「ごめん。いやなことを思い出させちゃったね」
「ううん。クーラお姉さんには聞いてほしいなぁ」
僕はライカの頭をなでる。
ライカは少し安心したのか、目を細めながらピコピコと尻尾を揺らす。
「……もう本当に、心が壊れちゃいそうな時にね、マスターが、助けてくれたの」
ライカが続きを話し始める。
「うん」
「ライカは、ね」
「ゆっくりでいいよ」
ライカが話したいと思えるまで――僕は待つ。
その間、お肉を少しずつ頬張り身体に染み込ませていく。一度粒子となって傷は治ったものの――さすがに空腹までは満たされていなかった。
僕はお肉を手に勢いよく立ち上がり、
「なんだこの重厚な肉質っ! だからといって固すぎるわけでもなく、比率的には7対3くらいの絶妙な塩梅っ!! 野草をハーブ代わりにしているのかまた匂いが食欲をそそるのなんのってっ! 全ての配分がパーフェクトといっても過言ではないっ!! まとめると――シェフを呼んでくれ、いや目の前にいましたっ! ありがとうございます、本気で絶品ですっ!!」
「……クーラお姉さん?」
「ゆっくりでいいよ」
「もうゆっくりどころじゃないよっ?!」
「ライカの焼いたお肉が美味しすぎて興奮しちゃった」
「……ぷっ、ふふ」
ライカが笑い出す。
「なんか逆に落ち着いちゃったぁ。ライカはね、お祖母ちゃんお祖父ちゃんっ子だったから、料理とか狩りとかいっぱい教えてもらってたんだ。美味しいって言われると、ライカも嬉しいっ!」
「……料理に、狩り?」
「お祖父ちゃんが猟師でね、一緒によく付いていってたの。山中での過ごし方とか解体の仕方とか――その時に習ったんだよ」
そ、想像以上にたくましい。
野営、サバイバルに関しては――動画の知識しかない僕とは違い、現地で経験を培ったライカの方が遥かに優れているだろう。
そして、少し会話しただけでも純粋な子なんだとわかる。
だからこそ、善悪の判断より先に――感情の赴くままに動いてしまうのだろう。それは幼いという点だけではなく、ライカ自身の性格の部分も大きいに違いない。
ライカはぽつりぽつりと話し始める。
「ライカはね、転生した時――アクアニアスの噴水広場に立っていたの。ライカもオンリー・テイルはすっごいプレイしていたゲームだから、すぐに景色を見てアクアニアスってことはわかったんだぁ」
「ライカが超越者だったのは驚いたよ」
「超越者になったのは転生してからなんだよ。それまで、ずっとレベル99でとまってたんだぁ。マスターもライカと一緒って言ってた」
リボルも一緒だったのか。
転生前、攻略掲示板に呪術師の超越者は載っていなかった。
転生してから超越者になるパターン、今後はこの線も強く視野に入れていかねばならない。
「ライカはね、転生した日――NPCに騙されて売られかけたんだ」
ライカの言うNPC。
もとからオンリー・テイルに生きる現地人のことだろう。
「一人で心細くて泣いてるところを、NPCが話しかけてくれたの。でも、それもミミモケ族を奴隷商に売り飛ばすため、それだけが目的だったんだぁ。ライカはバカだから、優しい言葉だけで信じちゃって、言われるがままに――付いて行っちゃった」
ライカが自身の身体を抱き締め――震え始める。
顔付きは真っ青に、幼い少女はどれだけひどい目にあったのか、どれほど心に傷を残されたのか、その様子から想像するに――容易かった。
「怖、かった、怖かったぁ。ライカの、身体をベタベタ、ベタベタ、裸に、されて、色々なところを触られて、気持ち悪くって、吐いたら、殴られた」
「……ライカ」
「殺す力くらい、ライカにはあったよ。だけど、そんな度胸も勇気も――あの時のライカは持ち合わせていなかったんだぁ」
「ごめん。いやなことを思い出させちゃったね」
「ううん。クーラお姉さんには聞いてほしいなぁ」
僕はライカの頭をなでる。
ライカは少し安心したのか、目を細めながらピコピコと尻尾を揺らす。
「……もう本当に、心が壊れちゃいそうな時にね、マスターが、助けてくれたの」
ライカが続きを話し始める。
17
お気に入りに追加
414
あなたにおすすめの小説

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
ある中管理職
ファンタジー
勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。
なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。
チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。
探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。
万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。
勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ
25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。
目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。
ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。
しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。
ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。
そんな主人公のゆったり成長期!!

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。

Hしてレベルアップ ~可愛い女の子とHして強くなれるなんて、この世は最高じゃないか~
トモ治太郎
ファンタジー
孤児院で育った少年ユキャール、この孤児院では15歳になると1人立ちしなければいけない。
旅立ちの朝に初めて夢精したユキャール。それが原因なのか『異性性交』と言うスキルを得る。『相手に精子を与えることでより多くの経験値を得る。』女性経験のないユキャールはまだこのスキルのすごさを知らなかった。
この日の為に準備してきたユキャール。しかし旅立つ直前、一緒に育った少女スピカが一緒にいくと言い出す。本来ならおいしい場面だが、スピカは何も準備していないので俺の負担は最初から2倍増だ。
こんな感じで2人で旅立ち、共に戦い、時にはHして強くなっていくお話しです。

黄金蒐覇のグリード 〜力と財貨を欲しても、理性と対価は忘れずに〜
黒城白爵
ファンタジー
とある異世界を救い、元の世界へと帰還した玄鐘理音は、その後の人生を平凡に送った末に病でこの世を去った。
死後、不可思議な空間にいた謎の神性存在から、異世界を救った報酬として全盛期の肉体と変質したかつての力である〈強欲〉を受け取り、以前とは別の異世界にて第二の人生をはじめる。
自由気儘に人を救い、スキルやアイテムを集め、敵を滅する日々は、リオンの空虚だった心を満たしていく。
黄金と力を蒐集し目指すは世界最高ランクの冒険者。
使命も宿命も無き救世の勇者は、今日も欲望と理性を秤にかけて我が道を往く。
※ 更新予定日は【月曜日】と【金曜日】です。
※第301話から更新時間を朝5時からに変更します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる