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火の都サラマン激突編
161話 要塞ごと真っ二つ
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――――――――――――――――――――――――――――
《 海藻チーム、無事に侵入できたよ 》
《 プリティー猫さんチームもなのね。どちらかにフレイムドルフがいるはず、見つけたチームは――交戦してにゃあ 》
《 了解 》
《 ソラにゃん、無理だと思ったら退くことも視野に入れてね。命を最優先に、各々の健闘を祈るにゃあ 》
――――――――――――――――――――――――――――
通信が途切れる。
僕たちの現在地は――大きな鍋、食材、調理道具一式、周囲の状況から察するに食堂だろう。
兵たちが飲み食いする場、士気を高める場所に違いない。
ゴザルの持つ"神眼"――狭範囲ながらも魔力の気配を事細かに識別できるスキル、今のところ他者の気配はないようで、ここ食堂をスタート地点として定めた。
僕はなんとなく、キッチン周辺を調べてみる。
「大鍋、食材、大量の食器類、兵たちが飲食する場所かな。それにしては、直近で使われた形跡が見当たらないな」
食材も古くなりかけている。
だが、完全に腐っているというわけでもなく――つい最近まで人がいたということだけは確かだった。
「たまたま、出払っているとかじゃないのかしら?」
「三国を攻める前段階、その可能性も高いだろうね」
しかし、引っかかる。
侵攻するに当たって兵を空腹にさせるわけはない。食事というものは全体の士気に関わるものだ。
健康で強い身体を維持する、それはとても大切なことなのである。
「クーラ、なにか気になるのですか?」
「……ナコ、ゴザル、まずは脱出経路の確保から入らないか」
「全てが終わってから堂々と出たらいいんじゃないの? それにまたこの通気口を戻るっていう手もあるわ」
「いや、通気口からじゃ移動が遅すぎる。なにがあっても確実に脱出できるという安全が欲しいんだ」
「ふーん。まあ、ソラがそういうならそうしましょう」
「私も賛成です」
僕はマップを開く。
白の宝物庫イレシノンテにて、転移トラップに巻き込まれた時も思ったことだが、未開の地でもこのマップ機能は自身のいるフロアが全て表示されていた。
あくまで、ダンジョンという括りになっているのだろう。
マップの構造から判断するに、正式な出入り口は要塞のど真ん中――なにか特殊な手段で出入りが可能なのかもしれない。
だが、こんな大っぴらなところからの脱出は危険すぎる。
侵入者に対して、なにか罠が仕掛けられているとも限らない。脱出経路を確保するならば別の視点から考える方がいいだろう。
「ゴザル、仮になんだけど――天井をぶっ壊したりとかできる?」
「ソラ、あなたね、私がなんでもできると勘違いしてない?」
「だって空を飛んだり、銃弾を弾いたり、もう僕の中ではゴザルが完全に無敵感溢れている人だよね」
「お侍さん、すごいですっ!」
「ナコちゃん、そんなキラキラした目で見ないでちょうだい」
ゴザルがナコの瞳に圧倒されるよう後退する。
「できる、できなさそう?」
「さすがに試したことがないから、自信を持ってイエスとは言えないわね。要塞の材質を見た限り――できないことはなさそうな気もするけれど。今は大都市で手に入れた古代武器もあるし」
ゴザルが抜刀、火花がほとばしり、
「火の刃――緋炎」
要塞の壁がスパッと斬れ落ちる。
明らかに鉄くらいの硬さの素材を――まるで豆腐かのように、瓦礫の山が瞬時に出来上がった。
「どうかしら? この古代武器、明らかに魔力の通り方が違うのよね。スキル"絶刀命閃《ぜっとうめいせん》"を組み合わせたら要塞も真っ二つにできるかもしれないわ」
「ナコ、要塞ごといけるそうだよ」
「お侍さん、すごい、すごいですっ!」
「待って、冗談よ? 冗談だからね?」
ゴザルの冗談は――とても冗談に聞こえないのであった。
《 海藻チーム、無事に侵入できたよ 》
《 プリティー猫さんチームもなのね。どちらかにフレイムドルフがいるはず、見つけたチームは――交戦してにゃあ 》
《 了解 》
《 ソラにゃん、無理だと思ったら退くことも視野に入れてね。命を最優先に、各々の健闘を祈るにゃあ 》
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通信が途切れる。
僕たちの現在地は――大きな鍋、食材、調理道具一式、周囲の状況から察するに食堂だろう。
兵たちが飲み食いする場、士気を高める場所に違いない。
ゴザルの持つ"神眼"――狭範囲ながらも魔力の気配を事細かに識別できるスキル、今のところ他者の気配はないようで、ここ食堂をスタート地点として定めた。
僕はなんとなく、キッチン周辺を調べてみる。
「大鍋、食材、大量の食器類、兵たちが飲食する場所かな。それにしては、直近で使われた形跡が見当たらないな」
食材も古くなりかけている。
だが、完全に腐っているというわけでもなく――つい最近まで人がいたということだけは確かだった。
「たまたま、出払っているとかじゃないのかしら?」
「三国を攻める前段階、その可能性も高いだろうね」
しかし、引っかかる。
侵攻するに当たって兵を空腹にさせるわけはない。食事というものは全体の士気に関わるものだ。
健康で強い身体を維持する、それはとても大切なことなのである。
「クーラ、なにか気になるのですか?」
「……ナコ、ゴザル、まずは脱出経路の確保から入らないか」
「全てが終わってから堂々と出たらいいんじゃないの? それにまたこの通気口を戻るっていう手もあるわ」
「いや、通気口からじゃ移動が遅すぎる。なにがあっても確実に脱出できるという安全が欲しいんだ」
「ふーん。まあ、ソラがそういうならそうしましょう」
「私も賛成です」
僕はマップを開く。
白の宝物庫イレシノンテにて、転移トラップに巻き込まれた時も思ったことだが、未開の地でもこのマップ機能は自身のいるフロアが全て表示されていた。
あくまで、ダンジョンという括りになっているのだろう。
マップの構造から判断するに、正式な出入り口は要塞のど真ん中――なにか特殊な手段で出入りが可能なのかもしれない。
だが、こんな大っぴらなところからの脱出は危険すぎる。
侵入者に対して、なにか罠が仕掛けられているとも限らない。脱出経路を確保するならば別の視点から考える方がいいだろう。
「ゴザル、仮になんだけど――天井をぶっ壊したりとかできる?」
「ソラ、あなたね、私がなんでもできると勘違いしてない?」
「だって空を飛んだり、銃弾を弾いたり、もう僕の中ではゴザルが完全に無敵感溢れている人だよね」
「お侍さん、すごいですっ!」
「ナコちゃん、そんなキラキラした目で見ないでちょうだい」
ゴザルがナコの瞳に圧倒されるよう後退する。
「できる、できなさそう?」
「さすがに試したことがないから、自信を持ってイエスとは言えないわね。要塞の材質を見た限り――できないことはなさそうな気もするけれど。今は大都市で手に入れた古代武器もあるし」
ゴザルが抜刀、火花がほとばしり、
「火の刃――緋炎」
要塞の壁がスパッと斬れ落ちる。
明らかに鉄くらいの硬さの素材を――まるで豆腐かのように、瓦礫の山が瞬時に出来上がった。
「どうかしら? この古代武器、明らかに魔力の通り方が違うのよね。スキル"絶刀命閃《ぜっとうめいせん》"を組み合わせたら要塞も真っ二つにできるかもしれないわ」
「ナコ、要塞ごといけるそうだよ」
「お侍さん、すごい、すごいですっ!」
「待って、冗談よ? 冗談だからね?」
ゴザルの冗談は――とても冗談に聞こえないのであった。
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