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王都突入編

130話 生と死の攻防戦

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 ニャニャンとの共闘、僕は一つの策を提案する。

「ニャニャン、僕がいつも通りやつをなんとか足止めする。その間に仕留めることはできないかな?」
「……ふむん? それが可能なら華麗な必殺技をお見せしてやるにゃあよ」
「僕はPvPのいやがらせで後れを取ったことはないからね」
「にゃあ。お前、いや、まさかね」
「始めるよ、傀儡糸っ!」

 僕は体内に触診を張り巡らせる。
 僕という一人の人間が俯瞰的に、ゲーム画面を見ているかのように客観的に映し出される。前回のガラスティナ戦のよう一対一とは違う状況、共闘している相手のことも考えねばならない。会話の機能は必須、魔力配分を細かく見極めていく。
 足止め、白龍の騎士の拘束に徹する。
 成功すればニャニャンがとどめを刺すだろう。僕はずっとそう信じてきた、二人ならば確実に落とせる。

 傀儡糸による全身強化、加えて――僕は黒い触手を展開する。
 触診による白い触手、攻撃に使う黒い触手、僕は最近まで同時に展開することができないと勝手に思い込んでいたのだ。

 白と黒は別々の触手扱いとなっていた。
 つまり、傀儡糸の状態で僕は触術師として戦うことができる。もっと早くに気付いていればガラスティナ戦であんな無茶振りはしないで済んだに違いない。
 あの日から、僕も僕で成長しているのだ。
 ナコやゴザル、二人に任せているだけでは駄目だ。これから先、僕自身も皆を引っ張っていけるだけの強さがこの世界にはいる。

「さあ、改造人間。現状にいたるまでの境遇がどうなのかは僕にはわからない。ただ一つ言えることは命を賭け合うもの同士――同情はできない」

 僕は触手の先端を向ける。

「やり合おう。後悔が残らないよう全てを出し合って」
「……」

 一瞬、白龍の騎士が反応した気がした。
 それは僕の言葉に対してか、僕の敵意を感じてか――どちらかはわからない。それでも互い視線が交わったことは確かだった。
 
 ――開戦する。
 
 大陸龍が落下するか否か、今このイベント戦にチャレンジするプレイヤーは僕たちなのだ。
 白龍の騎士、やつの身体に――触手を突き刺して中から爆散させる。
 相手は改造されていたとしても元々は人間、触術師にとって一番有利に物事を運ぶことができる対象だ。
 僕は大陸龍の尻尾を蹴り飛ばし、一気に白龍の騎士へと距離を詰める。
 傀儡糸による強化、僕は触診を視神経にまで張り巡らせる。魔壁を集中して見ろ、必ず糸を通すくらいの穴があるはずだ。

 ニャニャンが殴り付けた時、幾重にも重なるバリアのような塊が見えた。
 一枚岩ではない――通してみせろ、それくらいできなくてどうする? 触手の最大射程距離五メートル、僕は糸状の触手を展開させる。白龍の騎士も防戦一方ではない、槍を構え僕を迎え撃とうとした。
 槍の長さは目視済み――だが、投げられたら終わる。
 しかしながら、その可能性は著しく低い。自らのメイン武器を早々に手放す確率、どちらに賭ければ期待値が高いかは言うまでもない。

 射程圏内、接近すると見せかけて――僕は寸前で急ブレーキをかける。
 槍の先端が目と鼻の先に、生と死の境界線、その狭間で針に糸を通すかのごとく触手を魔壁の穴に侵入させる。
 狙うは僕から一番近い距離、槍を経路に触手を伝わせていく。

「一手目は僕の勝ちだ――爆ぜろ、裂っ!」

 飛び散る鮮血、白龍の騎士の左腕が木っ端微塵に消し飛んだ。
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