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王都突入編
126話 大陸龍に乗って
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王都に旅立つ当日。
僕たちは乗龍パスポートを使い、大陸龍の乗り場に向かう。
大陸龍とは王都が管理しているドラゴンのことであり、ウィンディア・ウィンド、アクアニアス、ストーンヴァイスの三国を定期的に巡っている。
そして、王都に戻るという順路を繰り返しているのだ。
「この大きい子が、クーラが前に話していた大陸龍なんですね」
「僕も実物を見るのは初めてだよ。実際にドラゴンの背中に乗れるなんてなんだか感慨深いなぁ」
黒い巨大なドラゴン。
大人しそうな顔付きにつぶらな瞳、マスコット的な雰囲気をまとっている。その背中には人が乗れる籠のようなものが設置されており、百人くらいは収容可能なスペースが設けられていた。
ユーリさんからは今回王都に向かう冒険者は僕たちだけ、その他は商人や貴族たち、大陸龍に常時滞在している衛兵だと聞いている。あくまで冒険者として王都に行く場合はBランク以上という明確なラインが引かれているが、商いや外交などの仕事等はまた別のラインがあるのだろう。
順番に乗り込み、僕たちも適当な場所を確保する。
乗客は僕たちを入れて約30人ほど、アクアニアスかストーンヴァイスか、別の国からの利用者もいるようだ。
大陸龍が翼を広げ――空へと羽ばたく。
大きな息遣いが緩やかな振動となり身体に伝わる。今僕たちはドラゴンの背中に乗って空を飛んでいるのだ。
心地よい風が頬をなで、どんどん地上が離れていく。
「うわぁ」
思わず、声が漏れた。
もとの世界では考えられない体験、絶対にできることのなかった経験、僕たちは今ファンタジーの世界を生きているのだと実感した。
「綺麗です」
ナコも眼前に広がる優美な光景に声を漏らす。
スクリーンショットの機能があれば絶対に撮影していることだろう。ゴザルも僕とナコと同じく目を奪われて――、
「あうぅ。落ちないわよね、落ちないわよね?」
――端っこで身を縮めながら震えていた。
「ゴザル、高いところ苦手なんだ」
「……い、今苦手になった。こんな設備で飛んで大丈夫? 私たちが乗ってる部分の素材って完全に木製よね?」
ゴザルは戦闘に関しては無敵だが、それ以外は弱点が多い印象である。
「木製にも理由があるんじゃないかな? 鉄製だとしたらドラゴンとはいえど、長距離を飛ぶには重くて厳しいのかもしれないね」
「吹き飛んじゃう、吹き飛んじゃうわ」
「お侍さん、何回も飛んでいる龍さんなら安全だと思いますよ」
「ナコの言う通りだよ。ゲーム時も落ちたことなんてなかったじゃないか」
そう、落ちたことはなかった。
その言葉を口にした瞬間、記憶の中にモヤッとした部分が湧き出てくる。
しかし、不明確なそれは形になることはなく――霧散した。
なんだろう、この胸に引っかかる感じ。
「うわーん、ナコちゃん」
「はい。私が手をにぎにぎします」
「ゴザル、怖かったら真ん中の方に移動しよう。あそこだったら少しは安心できるんじゃないかな」
王都までの飛行時間は半日ほどと聞いている。
休憩スペースも設けられており、そこでゆっくり仮眠するもよし雑談するもよし、各々自由な時間を過ごすのがベストだろう。
「……うっ、今度は乗り物酔いだわ。ドラゴン酔いって言う方が正しいのかしら」
とりあえず、僕はゴザルの背中を優しく擦るのであった。
僕たちは乗龍パスポートを使い、大陸龍の乗り場に向かう。
大陸龍とは王都が管理しているドラゴンのことであり、ウィンディア・ウィンド、アクアニアス、ストーンヴァイスの三国を定期的に巡っている。
そして、王都に戻るという順路を繰り返しているのだ。
「この大きい子が、クーラが前に話していた大陸龍なんですね」
「僕も実物を見るのは初めてだよ。実際にドラゴンの背中に乗れるなんてなんだか感慨深いなぁ」
黒い巨大なドラゴン。
大人しそうな顔付きにつぶらな瞳、マスコット的な雰囲気をまとっている。その背中には人が乗れる籠のようなものが設置されており、百人くらいは収容可能なスペースが設けられていた。
ユーリさんからは今回王都に向かう冒険者は僕たちだけ、その他は商人や貴族たち、大陸龍に常時滞在している衛兵だと聞いている。あくまで冒険者として王都に行く場合はBランク以上という明確なラインが引かれているが、商いや外交などの仕事等はまた別のラインがあるのだろう。
順番に乗り込み、僕たちも適当な場所を確保する。
乗客は僕たちを入れて約30人ほど、アクアニアスかストーンヴァイスか、別の国からの利用者もいるようだ。
大陸龍が翼を広げ――空へと羽ばたく。
大きな息遣いが緩やかな振動となり身体に伝わる。今僕たちはドラゴンの背中に乗って空を飛んでいるのだ。
心地よい風が頬をなで、どんどん地上が離れていく。
「うわぁ」
思わず、声が漏れた。
もとの世界では考えられない体験、絶対にできることのなかった経験、僕たちは今ファンタジーの世界を生きているのだと実感した。
「綺麗です」
ナコも眼前に広がる優美な光景に声を漏らす。
スクリーンショットの機能があれば絶対に撮影していることだろう。ゴザルも僕とナコと同じく目を奪われて――、
「あうぅ。落ちないわよね、落ちないわよね?」
――端っこで身を縮めながら震えていた。
「ゴザル、高いところ苦手なんだ」
「……い、今苦手になった。こんな設備で飛んで大丈夫? 私たちが乗ってる部分の素材って完全に木製よね?」
ゴザルは戦闘に関しては無敵だが、それ以外は弱点が多い印象である。
「木製にも理由があるんじゃないかな? 鉄製だとしたらドラゴンとはいえど、長距離を飛ぶには重くて厳しいのかもしれないね」
「吹き飛んじゃう、吹き飛んじゃうわ」
「お侍さん、何回も飛んでいる龍さんなら安全だと思いますよ」
「ナコの言う通りだよ。ゲーム時も落ちたことなんてなかったじゃないか」
そう、落ちたことはなかった。
その言葉を口にした瞬間、記憶の中にモヤッとした部分が湧き出てくる。
しかし、不明確なそれは形になることはなく――霧散した。
なんだろう、この胸に引っかかる感じ。
「うわーん、ナコちゃん」
「はい。私が手をにぎにぎします」
「ゴザル、怖かったら真ん中の方に移動しよう。あそこだったら少しは安心できるんじゃないかな」
王都までの飛行時間は半日ほどと聞いている。
休憩スペースも設けられており、そこでゆっくり仮眠するもよし雑談するもよし、各々自由な時間を過ごすのがベストだろう。
「……うっ、今度は乗り物酔いだわ。ドラゴン酔いって言う方が正しいのかしら」
とりあえず、僕はゴザルの背中を優しく擦るのであった。
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